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妖精の住処  作者: 速水零
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合コン終了

深い読み合いのバトル展開にはなりませんでしたね。まあこういうゲームは如何様にもあとから変化させられちゃうので……

「結論が出たな。投票の結果、四人が翼を指名、二人が真を指名。犯人は多数決の結果翼となった」


 淡々と涼が投票結果を発表する。


「翼、君は犯人かい?」


「違う……違うよ。僕は犯人じゃない」


 犯人と決めつけられた翼は静かに否定し、


「残念だな、俺が犯人だ」


 そう、真は自分が犯人だと名乗り出た。


「ええっ榊さんが犯人だったんですか!?」


「私、てっきり鳥海さんが犯人かと……すみません」


「あー、そっちだったかぁ。涼と榊くん二人とも怪しいなぁって思ってたけど、安牌突こうと翼にしたのがいけなかったね」


 真以外に翼を指名した三人はそれぞれ驚きの声を上げる。翼だと確信していた者ほどリアクションが大きい。


 ここで誤って犯人扱いしてしまったと謝れる冴は流石だと思う。他の女子二人にももう少し人に優しくなってもらいたい涼であった。


「2人俺を指名したってことは翼と涼が俺が犯人だとわかったってことだよな」


「そうなるね。まさか涼まで入れているとは思わなかったよ。こういうのも変だけど、どうして僕にしなかったの?」


「んー、翼も確かに怪しいとは思ったけど、それ以上に僕が真に誘導され過ぎているなぁって思ってさ。それだけじゃあ違和感を感じる程度だけど、最後に時間が終わったと仕切ったこと。あれはやり過ぎたな。あそこから更に議論を深めるとまた違う結論になるかもしれないと見て、ごく自然な流れで終わらせようとしたんだろうけど、普段の真と比較すると異常だな。勝ちを急いだだろ?」


「全くもってその通り。翼が良いタイミングで閃いてくれたおかげで楽に勝てるかと思ったけど、ちょっと慌てたな。ゲームの流れからして絞り込め無さすぎて勝つ確率が上がったと思ったらあの泥沼状態。芸能人の名前を列挙している間は正直口を出したくて仕方なかったな」


「悪かったな、初歩的なことにも気が付かなくて……でも、何を言おうと今回は真の一人勝ちだ」


 皆口を揃えておめでとうと褒め称える。真も満更では無いのか照れくさそうに「ありがとう」と答えた。


「それじゃあ後何回かやってみようか。んー、今回のゲームマスターは勝者にお願いしよう」


「了解」


「じゃあお題を決めたらタブレットを回してくれ」


 こうして、第二戦、第三戦、第四戦とゲームは続いた。


 第二戦のテーマは『横浜』。犯人は葵で、皆ひとまず目に見えるかどうかから進めたが、場所の名前まで行き着くのにはかなりの時間を要した。


 適当に今までの質問から類推した答えを列挙している間葵がうっかり「それは日本ですか?」と質問の傾向をぶった斬る質問をしてしまい、流れは急変。横浜市民が過半数を占めるこの会合なら十五秒で正解まで辿り着く。


 質問タイムでは流れを振り返らず怪しい者を列挙してみた。葵以外全員が葵を犯人だと断定し、質問タイムが終わるよりも早く結論が出た。


 第三戦のゲームマスターは葵が行い、テーマは『クリスマス』。犯人は白で、ここでもまた目に見えるかどうかから始まった。いきなりのNOで方針を変えなければならず、目に見えないものだと何があるか、絞り込むのに時間がかかる。


「子どもでも知っている言葉ですか?」


「世界中に伝わるお題ですか?」


「英語が使われていますか?」


 子どもが知っている英単語、外来語など数がしれていると良い流れになったと思いきや、案外候補の数が多く、先程葵が攻めすぎたのを受けた白は消極的になり、結局正解にまで辿り着けなかった。


 全員負けで質問タイムは行われず、ただただ犯人と答えを発表して終わった。


 最後の第四戦はきちんと正解して終わろうと取り決めをする。白はゲームマスターを一度やったので白の指名により一番初めに犯人扱いされた翼がゲームマスターとなった。


 お題は『雪』。定番の目に見えるかどうかでは当然YES。生物、場所ときたがまだ他にも見える候補はたくさんあると先程のクリスマスに使われた流れで「子どもが知っているか」「普段よく目にするものか」など多角的に絞って見ることにした。


 こうなると犯人も大きく踏み出す必要が出てくる。最後に犯人となった涼は中々気象に話が持っていかれないことにドギマギしていたが、じっと堪え、遠回しに「1メートル未満か」と大きさを指針に上げてみた。


 すると話の流れは大体どのくらいの大きさかの質問に変わり、肉眼では見えにくいという情報まで得られる。その後、先程クリスマスという話題をどう誘導してやろうか悩んでいた白がいきなり正解を引き当てた。


 犯人探しは涼の推測通り難航する。一度は涼も疑われたが、涼ならそれを閃いても不思議ではない、むしろ今までなぜその方針がなかったのかという話になり、結論が出ることなく時間切れ。


 このまま延長しても意味はないと各々が思う相手を指名することになり、葵二票、涼一票、白三票で白が犯人だと決めつけられた。


 一票入れていた真がやはりお前だったかとなった時には、お互い犯人になったら騙せないものだと笑いあう。


 丁度よくゲームを楽しむことができ、様々な議論を交わすことで親交も深まった。ゲームの後もしばらくあれがこうだった、あそこはこうすべきだったと話し合いが続き、今度はあのゲームをみんなでしてみたいという話に変化した。


 合コンとして十分高得点を得られたのではないだろか。その後仲がどう深まっていくか、あるいは疎遠になるかは各自の行動しだいである。


「では、縁もたけなわではございますが、そろそろお開きとさせていただきます」


 ちょうど良い頃合いを見て涼が合コンの締めを行い、最寄り駅にて解散することになった。

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