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妖精の住処  作者: 速水零
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犯人探し

「何とか正解したな」


「目に見えるから言葉はないとは言ったが、関係性という選択はなかったな」


「確かに生物だし、人間だし、目に見えるもんね」


「いやぁ、私は早くみんなが違う方向に言ってくれないかとずっと思ってましたよ。芸能人をあげだした時には違う違う!って思いながらわかってくれぇとばかりに強くNOって言ってましたし」


「僕はなんかもっとわかりやすい有名人いるでしょって意味だと思ったよ」


「その割には中々的を射た質問をしていたと思うが?……まあいい。とりあえず、この後討論の時間を設けて、誰が犯人か絞り込む」


 涼は白からタブレットを受け取り、アプリに表示されている「討論に入る」をタップ。


 時間は先程と同じ五分間。これは足りなければ延ばしたり、結論が早くつけばその場で終わらせられるので適当だ。


「じゃあ順番にどう質問していったか振り返りながら検討しようか」


「そうだな、確実に絞るなら一人一人怪しい人物をあげるよりも効率が良いだろう」


「それならまず私が物かどうか聞いたよ。これって自然な事だよね?」


「はい、これは普通な事だと思います」


「それで答えはNO」


「関係ないけどさ、あの時確か白は答えるの渋ってなかった? どうして?」


 翼がふと疑問に思っていたことを話し出した。それは皆も気になっていたので白に視線が集中する。


「いやぁ、あの時は、あれ? 恋人を物扱いしているところもあるよね? うーん……いや、ないかぁって思ったから答えるまで時間かかったんだよ」


「あー、なるほどね。確かにその気持ちわかる! 私のクラスにも彼氏を手玉にとって遊んでる子いるから考えたくなるよ」


 ウンウンと葵が頷いて納得しているが、他のメンバーはみんな凍りついていた。名門の坊ちゃん嬢ちゃん学校に通う四人と心優しい翼には重たい話だ。


「まあいい。次は俺が目に見えるものか、と聞いた。意図は物で答えまで時間がかかっていたからちゃんと存在するものか確かめたかったからだ」


「それも当然な流れですね。その後に私が有機物かどうか聞きました。目に見えるならそれは無機物か有機物に分かれると思ったので……」


「僕でもそう聞くな。時間は五分もあるわけだし、手堅くいくと思う」


「じゃあこの質問もスルーですね」


「そして僕が生物か聞いたんだよ。有機物の集まって生き物ができている訳だし、化学は苦手だからこっちかなぁって聞いてみたんだ。アミノ酸とかビタミンとかそういうの名前はみんな知ってても僕じゃ絞りこめないからね」


 翼の話にも皆肯定的だ。


 手堅く行き過ぎて情報が無さすぎる気がする。本来はもっと適当に質問をしていった中で不自然な点を見つけるものだ。


 今のところ犯人が誰とは定められない。


「続くヒトかどうかって質問も自然ですよね?」


「そうだな、今までの流れからしたらハイペースに見えるが、ここで動物ですか、なんて聞き出すのは……な」


「私そんな回りくどいのやだ」


「絞り方としては確実だが面白みはないな。それに誰でも知っていることがテーマな以上、良い攻め方だと思う」


 真も不自然だとは思わず、その後の日本人かどうかという質問も当たり前だと流れた。


「そして、ハーフかどうかってことになったんだよね。でもさ、あそこで「お題はハーフですか? クウォーターですか? 二種類以上の国籍の血が混じっていますか?」とか聞けば良かったんじゃないの?」


 初めて疑問の余地が生まれる話が出てきた。


「あの時は確か榊さんがハーフやクウォーターかもしれないと話して、涼さんが私にその路線で人を当ててくれとお願いしたんですよね」


「そうだねぇ。私的にはそっちに行くかぁ!ってなったけど分からないことではなかったよ。でも、涼さんや榊さん程の御方がそれを聞かないって言うのもねぇ」


「それそれ! 私も気になるなぁ。どうして涼はあの時冴ちゃんにそういったのぉ? ねぇねぇ、教えてよ」


「僕は真がその路線で行くべきだと言うから話を繋げただけだって。そりゃ今は自分でもなんで聞かなかったんだって思うけどさ。それに、話をミスリードしたって正解しなきゃ犯人も負けだろ?」


「俺も涼と同じであの時は考えつかなかった。かなり絞り込めたと思って興奮してたからだろうな。それより気になるのは鳥海が時間がなくなったと意識した途端重大な可能性を示唆した点、だろ?」


「うんうん、結局のところそこに落ち着くんだけどねぇ。翼、あんた流石にやり過ぎたんじゃない?」


 面白そうに涼を攻めていた葵が手のひらを返して翼に粘着する。


 流れを振り返るまでもなく、皆の意見は初めから翼に向いていた。


「そ、そんなことないと思うけど……誰だってあんなに手詰まりになってたら他の可能性を考えるでしょ? そしたらたまたま僕が閃いたってだけで……」


 翼は必死に両手をパタパタ降って無実を訴える。推理小説の犯人みたいだと皆が思ったのは仕方の無いこと。


 翼が他の誰かに的を変えようとした瞬間、ジリジリジリジリとタイマーが鳴り響く。


「うん、もう時間だし……なんで佐伯が恋人かわかったのかとか色々追求したいこともあるだろうが、あくまで試しのゲームだからな。ここで結論を出さないか?」


 真は既に犯人は定まったとばかりに締める。翼には納得のいかないところがあるが、ここでじたばたすると余計印象が悪くなると諦めた。


「いいの、僕を犯人にするとみんな後悔するよ」


 最後の悪足掻きのように翼が捨て台詞を口にし、投票が行われた。


 各自誰が犯人か相手に見えないように名前をタップして回す。この間は誰も話すことを許されない。


「結論が出たな。投票の結果、四人が翼を指名、()()が真を指名。犯人は多数決の結果翼となった」


 淡々と涼が投票結果を発表する。


「翼、君は犯人かい?」


「違う……違うよ。僕は犯人じゃない」


 犯人と決めつけられた翼は静かに否定し、


「残念だな、俺が犯人だ」


 そう、真は自分が犯人だと名乗り出た。

叡王戦見ていたら投稿が遅れました。深夜まで対局が続いていたら上がらなかったかもしれませんね(苦笑)。

豊島名人、ここから名人戦と叡王戦四連勝を期待しております! 

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