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妖精の住処  作者: 速水零
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合コンゲーム

 なんだかこのままフリートークを続けてもいいのではと思った涼だが、今回は合コンの体験も目的にしているので、定番?の流れ通りゲームを始めようと思う。


 涼がみんなに声をかけ注目を集める。食事も二巡目を頼んだばかりなので、それがやってくるまでゲームをしようと誘った。


 皆どんなゲームをやるか興味津々で乗り気だ。


「今回は親睦も兼ねて犯人隠匿ゲームをやろう」


「それどんなゲームなの?」


「簡単にルールを説明するとゲームマスター、犯人、一般人の三種類いて、ゲームマスターの定めたお題を他のメンバーが当てるというゲーム。

 ゲームマスターは他のメンバーからの質問にYES、NO、わからないでしか答えられない。それで犯人は予めゲームマスターの持つお題を知っている。

 そして、ゲーム終了時、ゲームマスターを含む全員で誰が予めお題を知っている犯人か当てるんだ。当然犯人は黙っていた方が有利だから、ゲームマスターに質問できる時間は限られていて、その間にお題を当てないと両者敗北になる。

 腹の探り合いが出来て面白そうだろ?」


「いいですね!」


「涼の得意分野じゃん。まあ僕は受けて立つけど!」


「はい、私もやってみたいです」


「中々頭を使う良さそうなゲームだな。俺は結構こういうゲーム強いぞ」


「そりゃ榊くんはそうでしょ。…むしろ1番敵にしたくないねぇ」


 皆初めてやるゲームなのかかなり乗り気だ。


「ルールは単純だからやりながら覚えていこうか。みんな呼んで欲しい名前をここに書いて回していってくれ」


 このゲーム用のアプリを既にインストールしているので、涼はタブレットを回して役を配った。


 真面目なグループなのか、各自名前でふざけることはせず、全員名前を記している。


「あ、私、ゲームマスターです! あー、これで自由にお題を決められるんですね。それで、もう一回回して犯人には私の決めたお題が見られちゃうと」


 初めのゲームマスターは白となった。


「なるべくみんながわかるようなお題にしてくれよ」


「最初ですしね。誰もが知ってるはずのお題にしまーす!」


「マイナーってことはないだろうが答えにくそうだな」


「白はこういうとき強いですからね。時間がかかりそうな分犯人が尻尾を見せやすいかも……」


 冴がうーんと顎に手を当て悩んでいる。まだ質問タイムが始まったわけでもないのに気が早い。


「じゃあもう犯人は自分が犯人だと分かったわけだなっ! 犯人を前に敬語なんて使ってられん! さあ自首するなら今のうちだぞ!」


「変な役に入り込んでるなぁ」


「こんな警察官相手なら捕まらなさそうって犯人も余裕綽綽じゃない?」


「そうだな、犯人にとって脅威は他のメンバーだろう」


「ほらそこの涼、翼! なに私語をしているっ! 犯人にされたいのか! 私の質問にのみ首を振れば良いのだ、いいな!」


「いや、白が質問される立場だから。それに、このゲームのゲームマスターは偉くないし」


「ほら、ゲームを始めようよ。時間は5分でいい?」


「まずそれで試してみよう」


「そうだね。涼と榊君なら2分で十分だと思うけど……まあ初めてだし」


 白はタブレットをいじって五分のタイマーをセットした。カチッカチッとタブレットから秒針を刻む音が聴こえる。


「質問質問! そのお題は物ですか?」


「…………NO」


 葵が一番に切り込んでいったが、白の答えはダンマリの後にNOだ。どういうことだろうと葵が悩んでいると、続いて真が手を挙げる。


「お題は目に見える物か?」


「YES!」


「なら、言葉や概念的なものではないのだろう」


「でもなんで悩んだんだろうね」


「そこに答えのヒントがあるんじゃないか?」


 真と葵は内緒話でもするかのように小声で話し合う。お題を当てることが目的ではないので、その会議の意味はない。


「白、私も質問するね。お題は、有機物ですか?」


「YES!」


「大きなヒントだけど、候補が多いなぁ。お題は生物ですか?」


「YES!」


「あ、これも正解なんだ。すごく順調だけど、ここからが難しいだろうね。うーん……それはヒトですか?」


「YES!」


 これまで大枠を外さずに絞り込んで方が、ここで生物から一気にヒトまで絞り込めた。皆の視線が翼に集中するが、試しに言ってみようと思えばありえない話ではないので、誰も追求しない。それよりも先にお題を当てなければならない。


「人間って言っても世界には70億人以上いるわけだし、偉人も合わせると候補は無数だな」


「それは日本人ですか?」


「んー……わからない」


「んっ? わからない?」


「ヨーロッパやアフリカの何人かわからないならまだわかるが、同じ日本人かどうかわからない、そんなことあるか?」


「涼、もしかしたらハーフとかクウォーターで血が混じっているから、そういった回答になるかもしれないぞ」


 YESでもNOでもない場合、ゲームマスターはわからないと答えるしかない。本来はゲームマスターの知らない質問ようだが、時にこういった使い方もされる。


「なるほどな。そうなると誰もが知ってると白が豪語していた以上、歴史上の人物って可能性は少ないな。冴、白の好きなハーフの芸能人を列挙していってくれないか?」


「はい」


 そうして何人か芸能人の名をあげていったが、答えは全てNO。ここまで順調だっただけにNOの連続は焦りを催す。


 タイマーの音がやけに大きく聞こえる。


 ゲームマスターの白もなんでそんな質問ばかりするの!?と言わんばかりにジェスチャーで急かしてきた。


 残り時間が一分を切り、カチッカチッと鳴っていたタイマーもガチャッガチャッと重い音を響かせる。


「あ、そうだ! 人ではあってもそれが実在する人物とは限らないよね!」


「YES!YES!」


「なるほど、確かに目に見えるってだけで特定の誰かとは限らないからな。例えば……それは先生ですか?」


「NO」


「翼よくわかったわね! えーっと、それは友達ですか?」


「NO」


「それは親族を表しますか?」


「NO」


「あっ!? もしかして……お題は恋人、ですか?」


「YES!!!」


 タイマーが鳴る十秒前、冴の質問がようやく正解となった。


正体隠匿ゲームというアプリがiOS版にあります。むちゃくちゃ面白いです。

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