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妖精の住処  作者: 速水零
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女子最後のメンバー

 運命の土曜日がやってきた。


 準備をしている中一瞬我に返ってとても小っ恥ずかしい思いをした涼だが、約束した以上しっかり準備は整えた。


 合コンの会場におすすめな場所と調べると簡単に良い場所が見つかったので苦労はしていない。お酒も呑めない会合なので学期終わりの打ち上げをしたいと予約をとった。


 ほとんどのメンバーが他の相手の顔も名前も知らないで打ち上げをしたいも何もない。


 女子メンバーの最後の一人が誰かは分からないが、恐らく紫苑女学院の生徒だと想定している涼は、翔央高校と紫苑女学院の最寄り駅から近い大きな駅近くの店にした。


 最寄り駅もかなり大きな駅だが、他の生徒に顔を見られるわけにはいかない。


「さて、あと十五分で集合時間か」


「さすがに早く来ているな、涼」


「お、真が一番早いとは……意外でもないか」


「俺の家はそこそこ遠いしな。遅くなるわけにはいかない。それに、他のメンバーが現れる瞬間を拝む方が面白い」


 真は男子メンバーのもう一人が涼の地元の友達だということ、女子メンバーが塾の講師だということしか知らず、顔も名前も涼は教えていない。


 これこそ合コンの醍醐味かもしれないと二人とも面白がっている。


「その気持ちよくわかる。集まっている中に登場するして全員の顔を知るより、一人一人この人かと確認する方がな」


「だろ? 涼はもうメンバー全員把握しているのか?」


「いいや、僕も最後の女子メンバーだけは名前も聞かされてない」


「そうか。なら、互いに面白いものが見られそうだな」


「面白いって言うと相手に悪いが、楽しみなことに変わりない」


 涼と真は暇な時間課題の達成具合を確認し合う。二人とも長期休みの宿題は手早く終わらせるタイプなので、終業式が終わっていない中でも難題について語り合うのに待ち時間だけでは全く足りない。


 ついつい話に夢中になっていると、冴と白がやってきた。


 白はパープル色のタートルネックに黒のプリーツスカート、黒のショルダーバッグ。電車が暑かったのか手には同じく黒のダッフルコートを抱えている。上半身に目立つカラーを置くことで低身長を目立たせないようにしつつ、子供っぽさを消している。


 冴は白のタートルネックにグレーのキュロットパンツ、黒のケープで大人っぽく現れた。上品な冴らしさが存分に出ており、手に持つ小さな黒いハンドバッグが可愛らしさを演出している。


「こ、こんばんは、涼さん。もしかして、そちらの方が……」


「こんばんはぁ。いやぁ、今日も涼さん決まってますねぇ! 全くオシャレに興味無さそうなのに、自分を着飾るのがすごく上手い! 周りの女の子たちチラチラこちらを見てきてますよ! お隣の彼も中々のもので」


 真は誰が見ても聡明で底の知れないミステリアスな雰囲気を纏っている。顔立ちがとても整っており、涼と並んでいても見劣りしない。


「こんばんは。白、それは褒めていると受け取っていいのか? まあ言いたい気持ちはわかるからいいけどさ……。で、冴の言う通りこれが僕の一番の親友、榊真。どこかで話したかな? 僕の塾の方針に色々アドバイスしてくれている」


「聞きました聞きました。あー、この方があの……涼さんでも敵わないという……」


「なんかわかる気がするっ! 話さなくてもこの人は別格って感じ! 涼さんもしかして、いやもしかしなくても私たちより榊さんに講師になって欲しかったんじゃないです?」


 グイグイと白は涼に詰め寄り、下から見上げてくる。距離を感じさせないフレンドリーさが皆に好かれるのだが、新しい刺激に満ちたことに面白さを見出し、からかいがいがある子には集中して攻める姿勢は涼によく似ている。


 涼自身、初めて会った時からシンパシーを感じていた。


「当然」


「しょーじきですね……」


「なぁ涼。俺にも紹介してくれ」


「ああそうだな。えっと、こっちが……」


「あ、涼。お待たせ」


 涼が冴や白を紹介しようとしたところで、最後の男子メンバー鳥海翼が現れた。深緑色のウール製のセーターにネイビーのチェスターコート、黒スキニーと定番を抑えながらも首元にマフラーをして白同様上に意識を向けさせている。


「まだ五分前だから全然大丈夫だよ」


「あー……皆さん、はじめまして。僕は鳥海翼、ここにいる涼の幼馴染みです」


 異質なほどレベルの高い集団に混じってもなお、翼は自分のペースで自己紹介を始めた。


 翼のおかげで、各々が自己紹介をする流れとなり、集合時間前にある程度互いを知ることができた。


「さて、あと一人だな。冴、もう時間だけど何か連絡来ているか?」


「いえ、特には……」


 集合時間になっても女子メンバーの最後の一人は来ていない。


 少し遅刻するくらいで気を悪くする者はいないが、急に決まった合コンなだけに今いないということはドタキャンされたということも否定できない。


 冴が今どこにいるのか連絡をとっているが、通話が繋がらない。電車の中だろうか。


 もうしばらく待ってみようと話していると涼の耳に聞き慣れた声が入ってきた。


「ごめん冴、一本目の前で通り過ぎちゃってさ。待った……はぁ?」


「えっ……葵? なんでこんなところに……いや、もしかして最後のメンバーって……」

梅雨明けたと思ってバイクで山中湖に向かったら大雨に出会いました。……まだ油断出来ないの?!

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