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妖精の住処  作者: 速水零
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合コン勧誘

「単刀直入に言うと……りょ、涼さんに合コンを開いて貰いたいんです!!」


「………………………はぁあ!?」


 涼は気が動転し、間抜けな声が出てしまった。酩酊しているようにぐるぐると頭の中が揺れ動く。


「えっと……困惑されているようなので、もう一度言います。……涼さんに、合コンを開いて貰いたいんです!」


「…………ああぁぁ、う、うん。言っていることは飲み込んだ。ご、合コンを開いてほしいか……なぜ?」


「至極まっとうな疑問なのでしょうが……私にも今なぜそんなことを言い出したのかよくわかーー痛ッ!」


 白がはぐらかしそうになったので、冴は白の脇腹を抓った。いざお願いしてみると想像の百倍は恥ずかしい思いをした。あんな決意など簡単に覆り、今の白はいかにして平和に話を横流しにできるか考えている。冴に退路を絶たれたので現実逃避もできないが。


「白、私にしてくれた話を涼さんにもしてあげてよ」


「ええっ……なんて話したっけ? 忘れちゃったぁ」


「しーろ……本当に?」


「うっ、わ、わかったわかった。えっとー、その……私、クリスマスにデート行けるような彼氏が欲しくて……」


「すごく単純明快で今言いだす理由もはっきりしているな。まあ、僕も男子校に通っているわけだし、誰かに合コンに行きたいという気持ちは理解できる。友達は共学でもそんなこと言ってたぐらいだし、お嬢様学校に通っていれば色々欲求が生まれるんだろう」


「よ、欲求ってそんなもんじゃないですよ!」


 涼は深く深呼吸をし(驚きパニックに陥ったときには最も効果的だと実体験済み)、心を落ち着かせた。いきなり予想もしていなかった相手から言われたから驚いただけで、例えばこれが騒ぎたがりのクラスメイトだったり、親友の碧光からお願いされれば呆れ顔をするだけだったのだ。


 白とはこの機会にだいぶ距離が縮まったとはいえ、まだ友達認定したくらい。そもそも他の友達にお願いされてもNOと答えてきたのだから、応じる気が全く起きない。


「ま、それはおいておいて、僕は合コンを開くつもりないよ」


「あ、そうですか。そうですよねぇ。じゃあいいでーー痛ッ!」


「別にそんなやらし……じゃなくて、いかがわし……でもなくて、普通に互いの友達を連れてお食事するだけでいいんですよ?」


 冴は再び白の脇腹を抓り、もっと真剣になれと言外に要求する。そしてなぜか冴が白のフォローに入りだした。彼女は彼女で涼とクリスマスを過ごしたいという目的があるのだが、どうせ誘わなければならないことには変わりないので、合コンがあろうとなかろうと状況は変わらないのだ。


「んー、そうは言うけど、他の友達を頼れなかったのか? 白はすごく交友関係が広そうだけど……」


 涼の男子校経験を女子校に当てはめると、白みたいなタイプは様々なツテを使って恋人を作っても不思議ではない。仮に白から「私彼氏いるんですよ」とどこかのタイミングでカミングアウトされてもそこまで驚かないはずだ。


「いえ、たしかに頼れる子が全くいないっていうわけじゃないんですけど、私交友関係は基本浅く広くなのでこういったことはお願いしづらいんですよね。頭数に誘われるってくらいの関係ですよ。結局行ったことありませんが」


「ふうん……冴ももしかして乗り気なのか?」


「えッ……い、いや……そういうわけじゃないですけど…………りょ、涼さんが一緒で周りもその友達なら気分だけ味わえるかなって思って。…………な、なんか合コンって面白そうな響きありません? 何度もやるのは勘弁ですけど、一度経験してみるのは……ね」


「……なるほど、面白そう……か。合コン、合コンねぇ……白や冴、他にもまあこういう信頼できる子だけでやるなら……なんか醍醐味が味わえない気もするが、たしかに面白そうだ。今まで全く興味なかったが、こう言われると怖いもの見たさに首を突っ込んでみたくなる」


 冴に言われたからというわけではないが、涼は少しやる気を出していた。最近塾の運営方針で攻めていこうと指針を変更したときの強気な姿勢が健在だからかもしれない。


 それでも光に誘われたら断るが、相手方や男子メンバーが信頼できるのならこういう催しも悪くないと思う。それに、いずれ講師を募集するにあたって候補は多いほうがいい。白が入れば全く問題ないように思えるが、先のことを考えコネクションを作ることが大切なのだと冴を勧誘したときに思い知った。


「涼さん、もしかして冴も来るからってやる気出してません?」


「いいや、そんなことはないが……なんだその人を小馬鹿にした顔は?」


「いえいえ、なんでもないですよ塾長」


「冴、君からは新人はどう映る?」


「ふぇっ!? え、ええと……人をからかうことに至上の喜びを感じているときのいじめっ子顔です。こうなると鳥もちのようにしつこいです」


「あー、言いたいことは分かるよ。別に白が僕のことをどう思っても構わないけど、僕は本当に合コンを体験してみるのが面白そうだと思ったから前向きに考えているだけだからな。そういうつもりで友達を誘う以上、白の希望は叶わないかもしれないぞ」


「大丈夫です大丈夫です! 正直お願いできれば十分だったので。彼氏はまた別の方法で作りますよ。その気が起きたときに。まあ、向こうからやって来ればそれはそれで吝かではありませんけどね」


「はいはい、わかったわかった」


 涼は生返事をして白をあしらい、冴と今日の授業はどうだったか真面目に話し合った。

この流れでやらないはないですよね。

お試しっていうのに僕も涼も甘く、興味本位で首を突っ込んでしまいます……

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