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妖精の住処  作者: 速水零
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クリスマスプレゼント

「今日も元気いっぱい楽しく授業ができました! 今年の授業もあと2回となりましたが、皆さん、一週間後には何がありますか?」


「「「「クリスマス!!」」」」


「そう、クリスマス! みんなはサンタさんに何をお願いするか決めているかな?」


「おれあたらしいゲーム!!」

「わたしかわいいお人ぎょうさん!!」

「わたしじてんしゃ!!」

「サッカーボール!!」

「わたし! わたしわたし、えーとっ……ピアノ!!」


 子どもたちは一斉に自分の欲しいものを叫び出す。今日一番の元気が見れた。


 中にはサンタさんでも到底叶えられないプレゼントが出てきたが、サンタさんはどう切り抜けるのだろうか。

 

 子どもからは見えない席に座っている保護者たちは苦笑いを浮かべているが、気づかないフリをしておく。


「どれも素敵なプレゼントですね。先生はもう大人なのでプレゼントはもらえません」


「えーかわいそう!」

「先生ゲームかしてあげようか?」

「わたしが先生のサンタさんやる!」

「わたしもわたしも!」


「ありがとうみんな。その言葉が先生にとっては何よりも嬉しいクリスマスプレゼントです。では、お礼に先生もみんなにクリスマスプレゼントを渡しましょう」


 もうクリスマスプレゼントがもらえる、と期待に胸を膨らませた児童たちは目を輝かせて涼を見つめる。


(すごい喜びよう。どうせならクリスマスツリーを用意しておいた方が良かったかもな。これから季節のイベントをやる時はそういった準備もしておこう)


 涼は子どもたちの熱い視線に一瞬たじろいだ。


 少し間を開けて場を鎮め、涼は皆に保護者の座るお菓子の家の前へ誘導する。


「昨日ENGLISHに来ていた子たちはずっとこれが気になっていたよね? 実はこれ、先生からのクリスマスプレゼントだったんだ!」


「あ、そうだったんですね」


「私も実は気になってたんだよねぇ。涼さん粋なことするなぁ」


 涼は講師の二人にもお菓子の家を作ったことは秘密にしていた。驚く姿を早く拝みたい。


「それじゃあ早速クリスマスプレゼントをみんなに贈ろう。いーい? 3・2・1!!」


 パッ。


「わあああぁぁぁっ!!!」

「すっっごぉぉい!!!」

「おかしのいえだぁぁああ!!」

「きれー……」

「#A¥k@jP£U!!」


 言葉にならない発狂も含め子どもたちの反応は様々だが、皆驚き興奮しているのがよく伝わってくる。このリアクションを見れただけでも作った甲斐があった(作った目的は子どものためではないが)。


 保護者や冴たちも子ども程オーバーではないが度肝を抜かれたようだ。


 特に目を点にしている白の姿は一番面白い。


「じゃあぁん!! お菓子の家でぇす! どう? みんな気に入ってくれたかな?」


「うん!!」

「すっごくすき!!」

「きにいった!!」

「わたし、おかしのいえゆめだったの!!」


「そうか、それはよかった。昨日頑張って作った甲斐があるよ。みんな、記念撮影しよ! 今日の班ごとにまとまって3列に並んで」


 記念撮影はたった今考えたことだが、子どもの楽しんでいる姿を保護者に見せるのには丁度いい。これから木下塾を宣伝する素材にもなるし、何より涼が児童たちの喜ぶ姿を写真に収めたかった。


 保護者の一人が撮影役を買って出てくれたので、涼はスマホを渡して最前列の中央に腰を下ろす。端でも良かったが、生徒や保護者たちが絶対ここと言うのだ。


「じゃあいきますよー。ハイ、ポーズ!」


 カシャッ!


 3枚ほどポーズを変えて記念写真を撮り、その後は各自の撮影会が始まった。


 子どもたちは早く食べたくてうずうずしているが、カメラを構える大人に強く出れずにいた。ちゃっかり冴と白もフィルター付きの写真アプリで色んな角度から写真を撮っている。これも柚と涼の予想通りだ。


 待っている間涼は家や家具が何でできているかクイズを出して時間を稼ぐ。たまに会話に保護者が混ざってくるので結構長引いた。


 ひとしきり写真撮影が終わると、涼はジャンケン大会を始め、誰がどこの部分を食べるか決める。授業の時からジャンケンで大部分を決めているので、皆恨みっこなしで決まった。


 こうして結果を受け入れられることは相当凄い。どの子もここまでの教育が良いのが窺える。


 柚が入れて暮らせそうなほど大きいお菓子の家を作ったが、流石に30人以上で分けると一人分はそこまで多くない。夕飯が食べられないって事態にはならないだろう。


「はーい。では皆さん自分の分がきましたね。今年一年皆さんよく学び、よく楽しみました。まだ一回授業が残っておりますが、一旦ここで締め括りましょう。来年も頑張りましょうね。では、せーのッ!」


「「「「「いただきます!!!」」」」」


 怒号のようないただきますが家中、近所にまで反響する。


 皆が一口食べると「美味しい!!」で溢れかえった。形だけでなく味にもだいぶ拘って作ったので、褒められると非常に嬉しい。来週は大きなクリスマスケーキを用意しようかな、なんて考えついたが、それはやり過ぎだと思い留まる。


 今日はもうこれで完全に終了なので、お菓子の家を食べ終えると各々のタイミングで生徒たちは家に帰っていった。


 お菓子の家はやはり人類共通の夢なのかもしれない。あの喜ぶ姿を見ているとそうは思わずにはいられない涼だった。

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