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妖精の住処  作者: 速水零
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合コン作戦

「じゃあ私の今年最高の妙案を発表致します! それは、涼さんに合コンを開いてもらう……です!」


「合コンッ!? えっ、な、なんでいきなりそんな話に飛ぶの?!」


「いやぁ、恥ずかしながら私も最近冴を見ていて彼氏が欲しいなぁって思う時が多くてさ。ここ女子校で私バイトしてないし、友達もあてにならないから出会い方どうしようって思ってたんだよねぇ。でも、涼さんに友達を紹介してもらえば良い相手がゲットできそうじゃん! 冴は涼さんと打ち解けるためのチャンスを得るしウィンウィンじゃない?」


 白は饒舌に合コンをするメリットを語っていく。もちろん白は冴を考えての提案である。


「……なるほど。白の言いたいことはわかった。でも合コンって……私たちまだ高校生だよ!」


「高校生ならやるんじゃない? ほら、うちのクラスのパリピたちはたまにやってるよ。話だけはよく聞くし」


「白は交友関係浅く広くだからね。……なら、その友達に合コンに呼んでもらうよう頼めばいいでしょ! 白すごく可愛いし絶対浮かないよ!」


「えぇ、アレはぜんっぜんそんな仲じゃないんだよねぇ。普通に話すくらいならまあ楽しいけど、遊ぼうとは思わないかな。と、いうわけで私には涼さんの人脈が必須なんだよ!」


 グイッと前のめりになり白は冴に迫る。明らかに自分から頼む気はないようだ。


 一応白も涼の連絡先を持っているが、今までほとんどやり取りしたことがない。


「涼さんに私からお願いしてってことだよね、どうせ。それってクリスマスの予定を聞いたりする十倍ハードル高いんだけど……」


「私涼さんとはすごく気が合う間柄だと思うけど冴を介さずには話せないんだよね。接点もないし、こんなクリスマス近くにいきなり話しかけるのって恥ずかしいじゃん。行き遅れた女が手当たり次第に声掛けてるみたい」


「接点なくたって白のコミュ力ならどうとでもなるって。私も涼さんと白は似た者同士だと思うよ。ちゃんとした()()になってみたら?」


「うーん……冴にとり繋いでもらうのは無理かぁ。こればっかりは私も無理強いできないし……あーあ、いっそのこと涼さんが私に話しかけてくれたら会話持たせてお願いするのに」


「本当に? そんなことありえないからそう言ってるだけじゃないの?」


 冴がいつもの仕返しに白を煽り出す。「白って意外とチキンだもんなぁ」なんて一言も加えておいた。いつもの大和撫子な冴からは聞けないワードだろう。


「んっ!? 言ったなぁ! いーよ、もし涼さんからコンタクトあったら絶対合コンの話持ち掛けるから!」


「持ち掛けなかったらどうするの? 覚悟を見せてよ」


「持ち掛けられなかったら……持ち掛けなかったら…………通学電車でよく見かける翔央生をナンパしてやる! どうっ?! これなら文句ない?!」


 白は教室中に響き渡るほどの大声で叫び、クラスメイトの視線を集めた。


 ナンパという聞き流せない言葉に彼女らは白たちの会話にそっと耳を傾ける。聴取するよりも傍観者でいる方が有意義な会話を聞ける時もあるのだ。獲物を食べたばかりの魚のように彼女たちは少し泳がせてみた。


「うん、それでいいよ。……まあ、万が一涼さんから白にアクションかけられた時の話だけどね」


 つい冴もボルテージを上げて乗ってしまったが、あくまで仮定の話だとヒートダウンする。周りが静まり返っているのに気が付けたおかげで冷静になれた。


「そ、そうだよー。万が一の話なんだから。涼さんから声掛けられるなんて妄想も妄想だって」


「うんうん、私もそう思うよ」


 ははははっと乾いた笑いをした二人はお互い頭を振って話題を変えようとする。


 そして白が再び口を開こうとした瞬間、白のスマホがブルッと振動した。


「あ、誰かからのringだ」


「誰からだった?」


「…………うさん」


「ん? 誰? よく聞こえなかった」


「…………りょ、涼さんから来たの」


「えっ嘘!? なんで、話しかけるような話題ある?!」


 冴や白が話しかけられないと断じていたのは、涼は冴にでさえも話題がなければ一切涼からringをされることがないからだ。


 声をかけられる節は全くない。


 二人は顔を近寄せて白のスマホを凝視する。


「はやくなんて来たか見せて」


「ちょっと待ってロック外すから」


 本体のロックとringのロックを解除し涼から送られてきた文章を読む。


 そこには白に木下塾でアルバイトをしないかという勧誘文がずらりと並んでいた。


「あれ? 冴がアルバイトしているから大丈夫なんじゃなかったの?」


「うん、だいぶ忙しいけど面倒見れているしもう一人必要と思ったことはないよ。……でも、確かに生徒数が増え続けているから人材確保しておきたかったのかも」


「へぇ、さすが涼さんが開いている塾だけあって盛況だねぇ。でも私バカだよ。涼さんの塾の手伝いなんてしていいのかな?」


「大丈夫だよ。白って勉強していないだけで頭悪くないもん。それに、小学1年生向けの授業なんだからそんなに頭を使わないよ?」


「ふぅん、わかった。アルバイト一度してみたかったし、涼さんが社長なら安心できるよ!」


「さっきの覚悟忘れないでよね」


「あー……う、うん。もちろん」


 白は引き立った笑みを浮かべ冴から視線を逸らした。そしてあまり大仰なことは言っちゃいけないと反省しつつ、傍観者をやめたクラスメイトたちの相手に追われるのだった。

どうせ大丈夫だろうは命取りですね。

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