表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精の住処  作者: 速水零
252/312

冬キャン撤収

 一晩明け三日目に入る。今日で様々なイベントの起きたキャンプも終わり。特に寄るところもないのでそのまま帰るだけだ。


 本栖湖では日課のサイクリングの代わりにランニングをしてきたが、この辺りに走って楽しそうなところが見当たらなかったので、雲見を散歩して回ることにした。


 雲見には海岸以外にも小さな島が周りにあったり、雲見想い出岬という岬や展望台もある。


 柚と一緒にのんびり観光するのも面白いと思ったが、たまには一人旅気分を味わうのも良い。


「こういう町に住むのも悪くないなぁ。バイクが塩害にやられないように気をつけなきゃいけないのはダルいけど……漁港まわりってどこも独特な雰囲気を持っていて居心地がいい」


 残念ながら西伊豆からは夕日は見れても朝日は見れない。東側の山から朝日が漏れ出てくる。


 一通りふらふらと面白そうな道を突き進み観光スポットを制覇し、涼はキャンプサイトに戻る。


「おはよう。今日は早起きだな」


「寝袋の寝心地は最高なんだけど、なんだかいつもと違う場所だと枕が変わるからかな、早く目が覚めちゃった」


 涼がテントの中に入ると柚は音楽を流しながらのんびり寝転がっていた。


「よくあるよ。逆に僕はいつもより長く寝てしまうタイプだけどね」


「それにしては早起きじゃない。どこ行ってたの?」


「そこら辺を散歩してた。朝日は見れなかったけど、海がとても綺麗だった。乾いた空気に潮風が混ざってなんとも言えない感覚だよ。程々に空気が冷えていて身が締まる。漁をしている姿も見れたし、結構楽しかった」


「そう。確かに良い朝だわ。さっそくだけど、朝ごはんにしましょ。パスタとかピザってお腹に溜まらないのね。昨日あんなに食べたのにすっごく腹ペコ」


「了解。じゃあ十分ほど待ってて。どうする、起きてこっち来る?」


「そうする。何か動画でも観ながら待ちましょ。そろそろ寝ているのにも飽きてきたし」


「それでもすぐにまた愛おしくなるんだよな」


「むっちゃわかる」


 涼と柚はそれぞれのイスに座り、朝食の準備を始めた。


「あれ? 今朝はパンなの? 珍しいわね」


「この前良さそうなホットサンドメーカーを見つけてさ。ついつい買ってしまったんだよ。こうして海を見ながら朝食にホットサンドってのも乙だろ」


「最高。何入れるの?」


「昨日のあまりのチーズとベーコン、ケチャップかな。多分数分で出来ると思うから先にお湯沸かすね。コーヒー飲みながら食べたいだろ」


「それは外せないわね。じゃあ沸かしている間にこの前観てたドラマの続き観ましょ」


 たくさんの会社がホットサンドメーカーを作っているが、大抵は家で作ることを想定し鉄板と持ち手が繋がっている。


 しかし、涼が買ったのはアウトドアメーカーが出しているもので、挟むとパンに綺麗な焼印が入るばかりか、持ち運びがしやすいスリムな形状をしている。ぶ厚い漫画本位の大きさまで小さく収納出来るのでこれからも重宝していくだろう。


「おおっ! これ絶対美味い!」


「綺麗な焼印が付いたな。それだけでテンション上がる」


「早く食べましょ」


「ああ、ちょっと待ってな、上手く切り分けるから」


 さすがにこのホットサンドメーカーで柚用のホットサンドは作れないので、いつも通り涼の分から取り分ける。


 端っこの繋ぎ目を切り落とし、パンが柔らかそうな部分をカットする。


 しっかり具材の入った美味しい部分を渡そうとすると多く取らなければならないが、余ったら涼が食べるので、はじめから柚にピッタリの分量を上手く分け与えるのは諦めていた。


「「いっただっきまーす!!」」


 涼達は声とは裏腹に恐る恐るホットサンドにかぶりついた。


 熱々のチーズが溶け出てきて火傷しそうなほど熱い。だが、ホットサンドは完璧だった。ただサンドイッチを焼いたりピザトーストを作ったのとはレベルが違う。


「うっま〜!」


「朝にホットサンドってのもいいな! これからたまにうちでもそうするか」


「そうしよそうしよ! 絶対だからね!!」


「でも柚はうちじゃあお寝坊さんだから熱々のホットサンドは食べられないなぁ」


「大丈夫! ホットサンドの日は起きるから!」


「それなら毎朝ホットサンドを食べることにしようか」


「そうなると私飽きてもう二度と早く起きれなくなるわよ」


 はははっと二人は笑い合う。


 キャンプ最終日ということで寂寥の思いが押し寄せてくるが、それもまたキャンプの良さだと思う。


 徹営作業はすぐに終わり、二人は再びコーヒーを傾けキャンプの余韻に浸る。


「楽しかったわね」


「ああ、最高のキャンプだった」


「また来たい?」


「もちろん。なんならクリスマスにやりたいくらいだ」


「えー、そこは普通にデートしようよ……恋人らしくさ」


「そうだな。じゃあ今度は柚がプランニングしてくれよ。そういうのに僕は疎いからさ」


「ええ、わかったわ。最高のデートをしましょ」


 涼たちは雲見を出て伊豆の南端下田を経由し、伊豆をぐるりと回ってから帰路に着いた。



これにて第十章終幕です。

予定では早く終わるはずでしたが、随分長かったですね。1話1話短かったからでしょうか?

また閑話にifストーリーを書いて十一章に入りたいと思います

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ