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妖精の住処  作者: 速水零
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冬キャンアイデアキャンプ飯

   いつもなら柚たちのキャンプ上での過ごし方は、タブレットを利用して映画を見たりアニメを見て過ごしているのだが、今日は以前柚がクッキーを作ってくれたことをきっかけにアイデアキャンプ料理をやってみることにした。


   キャンプ料理といえば一番にバーベキューが挙げられる。冬キャンでは体が温まる料理、特にカレーや様々なスープ類などが人気だろう。


   今回のコンセプトは柚が自分で作れて今までにない美味しさを体感できるキャンプ飯作りだ。伊豆は南の方に位置しているとはいえ寒いことには変わりないので、温まる方向性で考える。


「そういうわけで、何作るんだっけ?」


「ふっふっふ、これから私達が作る料理は〜〜ダンッ!   ピザでーす!!」


   柚はテーブルに両手をパッと向けるが、そこにはなにもない。ネットの動画投稿だったり、テレビならばここで放送を止め、できた後に同じ構図で撮りなおし始めるが、ここはあくまで生放送の世界。編集なんてできるわけがない。そう言わせるような入りをした涼も悪いが。


「まあ、無難だな。スープとかは僕が作るのが一番だし、ホイル焼きとかもいいと思ったが、今日はピザで行こう」


「えっ、ホイル焼きなんてできるの?!   なにそれ最高じゃん!   なんで買い出しのときに言ってくれなかったのよ!」


「柚が自分で考えて自分で作りたいって言ったから話すのは助言するのは無粋かと思ってさ。でも美味しそうだと思うぞ。ホイル焼きは次にするってことで」


「あーい。じゃあ気を取り直して……レッツピザ作り!」


「おーっ!」


   柚に合わせ涼もテンション高く手を挙げる。


「じゃあまず食材の用意」


   ドン。ドン。……トン、トン。タン。


   これまたどこかの動画で見たように並べるが出てくる瞬間を切り合わせなければ面白くはならないだろう。


   用意した食材は、米粉、片栗粉、ベーキングパウダー、塩、オリーブオイル、ケチャップ、ピーマン、チーズ、ベーコン、玉ねぎである。


   ピザは普通小麦粉で作るものだが、米粉で作るピザはパリパリとしていて食感が良く、柚の口の小ささでも楽しみやすい。また、こねて発酵させてという手順がいらないので柚でも比較的作りやすい。


   作り方は簡単。


   コッヘルに米粉、片栗粉、ベーキングパウダー、塩を入れて混ぜ、更にオリーブオイル、水を適量注いでまとまるまで混ぜる。あとは形を整えて具材を乗せて焼くだけ。


「うわっ服に生地が付いたぁ」


「料理とはそんなものだ。慣れれば撥ねなくなる。どうせキャンプに来ておめかししてないんだろうから良かったじゃないか」


「そりゃそうだけど……シミになると思うと気になるのよ」


   柚はブーブー文句を言いながら混ぜていく。涼の使っているコッヘルの中でもマグカップ用の小さいやつなので柚でもなんとか扱える。大きさ比は小学生と給食の寸胴くらい。


   柚にコスプレをさせればまさに妖精が人間のために料理をしているようだ。とても絵になっている。


   流石に涼の分まで柚が作るのは厳しいので涼は涼で自分の分の米粉ピザを作っていた。あとでお互い交換して食べ合うのでできるだけ美味しくしたい。


   自分の耳たぶを触りながら硬さを調整し、涼と柚は生地を作り終えた。


「涼、具材カットしてもらっていい?   私こんなナイフじゃピーマンすら切れそうにないんだけど。というか、玉ねぎなんて切ったら私泣きすぎて死ぬわよ」


「それくらいがんばれと言いたいところだったが、たしかに玉ねぎは脅威だな。いいよ」


   柚には涼の親指ほどの大きさの小さな小さなナイフ(ミニ五徳ナイフ)を渡してみたが、ベーコンは切るのにとても力が必要、玉ねぎは涙問題、ピーマンはできなくないがキレイには無理だった。


   涼は代わりに昨日使っていたシースナイフを華麗に扱い食材をカットしていく。柚用にも小さく小さく切り刻み、生地の上に乗せていった。


「柚にしては結構大きいのを作ったな」


「まあ大きいほうがうまくいきやすいっていうのもあるけど、涼に食べさせることも考えたらこのくらいじゃないとね」


「なるほどね、楽しみにしているよ。それじゃあ焼き始めようか」


「うんっ!   いざ、ピザ窯へ!!」


「窯はないからバーベキューコンロで焼いてくよ」


「あーい」


   キャンプ場の管理人室で購入した薪を井形に組んでいく。中央に新聞紙とあたりに落ちている枯れ草たちをばら撒き、メタルマッチで着火。今回も20回以上こすってようやくついた。


   火の威力が程々になったタイミングを見計らい、涼たちはピザを網の上に乗せる。


   柚が小さいピザを作っていたら不安になっていたが、小皿並に大きいので大丈夫だろう。 


   涼はピザを焼きながら他の夕飯、ピザ作りで余った玉ねぎとベーコンを使ったクリームスープパスタを作っていく。やはりイタリアンで統一しないと気分が悪くなる。麺はそのままだとコッヘルに入らないので半分に折って入れた。


   しばらく涼と柚は談笑しながら火の調整をしていき、焦げる少し前のタイミングで取り出す。香ばしい匂いが鼻孔をくすぐり、腹の虫が大きく咆哮する。本能がこのまま喰らいつけと叫んでいるが、なんとか我慢してスープパスタの完成を待つ。


「ようやく完成!   これ神ってるでしょ!   もう匂いからして大成功じゃん!」


「確実にうまいだろうな。まあ、これから実食して確かめるとするか」


「そうね!    じゃあせーの」


「「いただきます」」

あー、キャンプ行きたい……なんでこっちの世界は梅雨が続いているんだ……

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