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妖精の住処  作者: 速水零
240/312

妖精の告白

ここだけは「冬キャン」とタイトルの頭に入れられませんでした。

区切りが良いのでとても短いです。

「……もうそれは諦めるしかない。柚に悪いが、ここではっきり言っておく。今までなあなあにしてきたが、僕では柚をもとに戻すことは絶対にできないし、今後何か起きない限り探ってやることもできない」


 涼は今まで厳しい、とか可能性が低いと言った僅かに柚に希望を持たせる含みのある言葉しか言ってこなかったが、初めて無理だと断言した。


 自分の力ではどうにもならないと認めた。


 悔しさはあるが、こればかりはどうしようもない。


 この問題はそれこそ人類全てが解決に打ちだしても解決できないと断言できる。


「………………そうよね」


 柚はしばらく押し黙ってから、小さな声で認めた。


 柚もわかりきっていた話だ。今更泣いて叫ぶことではない。


 だが、絶望は深くなった。


 涼という希望の光は救いの手ではなく、ただの幻だった。


 柚は再び闇に囚われる気分に陥る。


「だから……だからこそ、柚には他の道で幸せになってほしいと僕は思う」


 柚がちゃんと話をしてくれると思い、涼は柚を先ほどまでの定位置に戻した。


 柚は大きなぬいぐるみを抱きかかえる子どものように、カイロ入りのハンカチを抱きしめる。


「…………し、幸せ?」  


 上目遣いに柚は涼を覗き込む。やはり可愛らしい。


「ああ、どんな形が望みかはわからないが、柚が曇りのない笑顔で過ごせる日々を僕は作ってやりたいと本気で思ってるんだ」


「…………私の……幸せ……なんだろう?」


 望む形がどんなものか柚は考えてみた。


 少し気が紛れる。夢を描いている時間は案外悪くないのだと知った。


 ぼんやりと焚き火を眺めていると、涼と過ごしてきた楽しい光景が思い浮かぶ。


 初めて涼の学校に行って将来について話したこと。


 寄り道しながら故郷の廃れた展望台に行ったこと。


 涼に新しい家をもらったこと。


 二人で自転車で伊豆までキャンプに出掛けたこと。


 涼に勉強を教えてもらったこと。


 いつものんびり紅茶を飲んで談笑したこと。


 故郷に帰ってお母さんの声を聞けたこと。


 木下塾を開いて子どもの教材について研究したこと。


 涼について行ってサバイバルゲームを一緒にしたこと。


 涼のバイクでいろんなところに遊びに行ったこと。


 二人で憧れだった女子高の文化祭を見て回ったこと。


 涼のためにお菓子を作ったこと。


 期末テストのために頑張ったこと。


 数々の思い出が走馬灯のようにフラッシュバックしていく。


 この半年間、本当にいろいろなことを経験してきた。辛いこともたくさんあったし、それと同じくらい楽しいこともあった。


 柚を包んでいた凍てつく闇が反転し、温かな淡い光の世界に変貌する。


 涼は確かに救いの手ではなかった。


 希望の光でもなかった。


 でも、柚が生きる理由の根幹だった。


(あぁ、そうか……私、こんな日々が、今まで生きてきた中で、一番充実してたんだ。忘れてたけど……涼と一緒にいるだけで私はこんなにも幸せだったのね。はははっ、何回こんなこと堂々巡りすればいいんだろう。……涼はこんなにも私のことを想っててくれたんだ。私の幸せの形。それは……)


「一生、ずっとずっと一生、涼と一緒に生きていきたい」


 思わず口に出してしまった。


 辺りは静寂に包まれているので、涼の耳にもはっきり届いた。


 柚も心の声が肉声に変わっていたのを自覚し、顔から火が出そうなほど赤くなる。絶対に焚き火のせいではない。


「……一生、僕と一緒に生きていく…………それが……それが柚の望みか?」


 涼も恥ずかしさが顔に表れている。異常なほど赤い。でも自分で聞いた以上反応しないわけにもいかず、一応柚に真意かどうか試した。


「……う、うん。そう……そうよ」


 柚はしっかりと涼に顔を向いて頷く。そして、再び口を開き――





「私は……涼のことが好きっ!! だから、ずっと、ずっとずっと一緒にいたい!」

長い!

長かった!

ここまで240話かかるなんて去年の僕は想像もできませんでした。

ここがこの作品の最高潮と言えますが、まだまだ続きます。

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