忍野銀
本日二話目です。昨日予約し忘れていました涙。
「銀と一緒に走るの久しぶりだな」
涼は久しぶりに中学時代の数少ない友達の中でもさらに数少ない中学で知り合った友達、忍野銀と共にツーリングをする約束をしていた。
銀は姫の父親集を除いて唯一のバイク仲間で、涼と同じスポーツバイクに乗っている。車種はKawasakiのNinja250で、カラーは王道のライムグリーン。涼よりいち早く新古車(ほとんど走っていない新車のような中古車)を買っており、涼よりもずっと距離を走っている。
バイクに人生を捧げているようなやつで、涼のバイクに関する知識はほとんど銀から教わったと言っても過言ではない。
校則の緩い学校に通っており、高校生でありながらバイク通学をしている。
「涼はバイトとか勉強があって忙しいもんな」
「そうでもないさ。まあ、最近は文化祭が忙しかったからな」
「あーあーあぁ、文化祭ね。そういえばうちも何ヶ月か前にやったなぁ」
「銀はどうせシフト蹴っただろ?」
「当然」
銀は涼と違い不良気質で、面倒な時は学校をサボる。だが、話していて面白いので涼はそんなことは一切気にしない(授業をサボるという意味では中学時代の涼も似たようなものでウマが合った)。
学校を平然とサボれるぐらいだから文化祭に不参加でもおかしいことは無い。
「今日はどこ走る?」
「そうだな.........赤レンガは近すぎて面白くないし、ターンパイクはもう無理だから.........道志みちでも行こうぜ」
道志みちとは宮ヶ瀬湖と相模湖の間付近から山中湖まで続いている道のことで、関東圏内に住むバイク乗りにとっては聖地のような道だ。ワインディングが心地よく、空気も綺麗で、涼も一度だけ走ったことがある。
「オッケー。あそこロードバイクじゃ勾配がキツくて中々行かないんだよなぁ」
「まあオリンピックの自転車でも使われる程だからな。日中は結構チャリダーが走ってるの見るが、俺は一万貰ってもヤダね」
「だよな。じゃあ決まりってことで行こうぜ」
「おう」
涼と銀はインカムを繋ぎ待ち合わせに使っているコンビニを出る。
国道246号線を少し乗って宮ヶ瀬湖を目指し、道志みちに入るルートで進む予定だ。
現在午後五時でもう日没を過ぎている。
「ほんと246渋滞がうぜー」
「嫌なら高速って言いたいけど、上も上で海老名とか横浜町田の辺りが酷いからな。諦めるしかない」
「原チャとかビクスクのすり抜けもウザイ」
「渋滞嫌なら銀もすり抜けすりゃいいじゃん」
「だから言ったろ。すり抜けしまくってた頃ヤバい目にあったって。もう俺は二度とすり抜けはしねー」
「事故りかけたんだっけか? でも銀なら少ししたらケロッと忘れていそうだな」
「それは否定しねーけどな。とにかく今はムリ」
「了解」
涼もすり抜けは危険だし、待てばいいだけなので普段からやることは無い。渋滞がウザいとは思うが。
国道246は深夜を除いてほとんどの時間は混雑している。涼の言った通り、渋滞が嫌ならば高速に乗るしかない。
「下手に熱海とかにしなくて正解だな。大磯に着くまで何時間かかるかわかったもんじゃねーよ」
「神奈川県に住む以上渋滞は仕方ない」
「まーな。だからって田舎に住みたくはねーな」
「僕は自然の中で暮らすのもアリだけどな」
「涼はキャンプとか得意だからいいけど、俺は都会から離れられん」
バイクの趣味が合うとはいえ、バイクに乗る目的は両者異なる。
涼がキャンプをしつつ旅をすることを目的に買ったのに対し、銀は走ることに憧れてバイクを買った。
「なあ、涼は大学どうするんだ?」
「銀がそんなこと聞くなんて珍しいな」
「いや、俺は将来どうしようとか先のことは考えてねーけど、涼はエリート街道まっしぐらだろ。ダチが有名になってくってなんか嬉しいじゃんか」
「そうだな.........正直どうなるか僕もわからないよ。目先のことで頭がいっぱいでさ。こういうのは自慢っぽいからアレだけど、どっか名門大学に入るんだろうなって感じかな」
「やっぱすげーよ涼は。俺の高校マジで頭沸いてる奴しかいねーから。そのまま就職かFラン行きだな。人のこと言えねーけど」
「勉強する気は?」
「ない!!!」
涼は勉強嫌いの子の気持ちは中々理解できないが、銀や光を通して思考を学ぶことはできる。
そういう意味で広い交友関係というのは大切なんだなと改めて実感した。
ただ、今後こういう子どもが入塾したら、さらに頭を抱えると思う。
ようやく国道246号線を抜け、県道に入る。
宮ヶ瀬湖まで向かう県道は電灯が暗めだが、そこそこ車が走っている。
夜に田舎の道志みち走るのはやっぱり危ないなと思いつつ、涼は先の楽しい道達を思い浮かべて高揚していた。
バイクの話久しぶりですね。