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妖精の住処  作者: 速水零
199/312

男子校での女子会

あらすじ

クレープ屋騒動?が解決

()()「昼ごはんを奢るって言っても文化祭だからゆっくり食事を取ろうってところが少ないわね。何か食べたいものはあるかしら?」


 涼に言われたからではないが、椿達5人は一緒に文化祭を見て回ることになり、椿が全ての支払いをすることとなった。


 涼以外から涼の様子を聞けるいい機会だと椿は思う。SNSを辿って大体の様子は掴めたが、外部から見た涼の情報はとても気になる。


 いつか隣に引っ越してきた小桜家の方々とも話をしたいものだ。


「「私焼きそば食べたいです」」


「私は……お好み焼きを」


「私は美味しければなんでもいいですよ」


 冴はあの時のことを思い出し、少し顔が赤面している。涼と食べたお好み焼きの味は曖昧にしか覚えていないが、また食べたいと思ってしまった。


 白は相変わらずだ。


「んー、焼きそばとお好み焼きね。翔央高校来るの久しぶりでどう行けばいいのかわからないわ。冴ちゃんこういう地図読み取るの得意?」


「あ、はい、一応涼さんのクラス行く前に少し見て回ったのでわかります」


「そう、ありがとう。この歳になるとだんだん思考力が鈍くなってきちゃって。仕事が関係してないことには頭が働きにくいのよ」


「椿さんはうちのお母さんと違って若いんですから、まだまだ大丈夫じゃないですか?」


「そうですよ。うちのお母さんたまに椿さんみたいに聡明で綺麗になりたかったってボヤいてますし」


「まあ、あの凛さんが? 私とそう歳も離れてないし、とても綺麗な方だったと思うのだけど」 


 凛とは光、空、海の母親だ。顔立ちの良いその3人の母親なだけあって凛も相当な美人だが、椿ほどではない。


 凛にとって椿は憧れのマダムで、今でも忘れられない高みの存在だ。


「いえいえ、椿さんに比べれば月とすっぽんです。最近贅肉が贅肉がぁってうるさいですし」


「その点、椿さんはどこを見てを完璧に整ってて、まさに女神のようじゃないですか」


「私もそう思います」


「私もこんな美人のお母さんテレビでしか見たことありませんよ。さすが涼さんのお母さんって思いました。逆なんですけど」


「それはありがと。甘いものもたくさん食べていいからね!」


 褒められ慣れた椿だが、こんな若い子達から美人と言われて悪い気はしない。


 椿達は校庭の出店を回り、好きなものを買い込んで中庭の休憩スペースで一休みする。


 どの高校も店の配置や休憩所の位置は似るものなのだ。


「そういえば、空ちゃんや海ちゃんは涼と同じ隣の中学に進んだのよね。どんな感じだったの?」


「中学の頃の涼さんですか? 私たちは一学年下なので関わりは薄くなってしまいましたので大体しか分からないのですが」


「人気者というよりは変人として有名でしたね。授業態度が悪くて自分の勉強ばかりしていて、それでも定期テストでは常に学年一位。運動神経も抜群で体育ではかなり活躍していたみたいですけど、部活には断固として入らず、興味の出ない競技には必要最低限の参加しかしなかったみたいですし。小学校の頃と違ってあまり友達を作らなかった見たいですよ。まぁうちの兄貴やいつもの男子グループとは良く遊んでいたみたいですが」


「へぇ、そうだったんだ。涼さんっててっきりクラスの人気者!斬り捨てた女は数しれず!とかだと思ってた。ちょっと意外.........だけど、なんだか納得できなくもない」


 白は先ほど空たちから涼の過去を触り程聞いていたが、ここまでだとは思っていなかった。


 椿の目の前でオーバーに反応したって言うところもある。少しでも明るく惚けてみせた方が、原因の一旦である椿の心を和らげられるかと思った。


「やっぱりそうよね。あの人を反面教師に育つとそう風になるのは目に見えていたわ。行き過ぎて逆にあの人っぽくなっているところがあるけど、まあ遺伝だと諦めるべきかしら」


 あの人というのが涼の父親、木下司を指していることはこの場にいる全員が分かっている。


 どんな人物か全く知らない冴や白でも、涼に一番の影響を与えた相手だということは理解した。相当変な性格をしているのだろうと予想できる。


 何せ聖母のような一般女性の椿が家を出るくらいなのだから。自分が椿の夫なら酷い裏がない限り離婚しようとは思わないだろう。


「それで、冴ちゃんは涼のバイト先での様子はどんな感じかしら? 一度見に行きたいとは思っているんだけど、あの子高校生で夜遅くは働けないから時間が取れなくて」


「涼さんはとても凄い人で、バイトの中でも特に信頼されています。大学生やパートの方々、社員さんからも頼りにされていて、まだ一年半くらいなのにバイトリーダーみたいに指示を出したりしています。実は葵さんって涼さんの同級生も一緒のバイトで二人には色々お世話になっております」


 椿たちは各々選んだ昼ごはんを食べ終え、途中で買ったチュロスを頬張る。


 冴からの話では涼を尊敬しているだけのように聞こえるが、顔色や仕草を見ればそれだけの感情ではないとわかった。


「ああ、あの葵ちゃんね! まさか涼とバイトが一緒だなんて思わなかったわ。涼ったら自分のことをほとんど話さないんだから.........また葵ちゃんに会いたいわ。ねえ、葵ちゃんって今どんな感じなの? あんな天真爛漫で男勝りな女の子だった葵ちゃんに彼氏はできたのかしら?」


「どうでしょう。私が聞いた限りでは涼さん以外に彼氏ができたことはないようですが」


「えっ!? 葵ちゃんと涼って一度付き合ってたの!?」


 年甲斐もなく女子高生グループに混ざっている椿は――冴たちは全く気にしておらず、むしろ歓迎している――今日一番の驚きの声を上げた。


 その後男子校で開かれた女子会は長々と続いていき、結局、椿は冴たちに晩ご飯まで奢ることとなった。


 涼の文化祭一日目の大きな出来事はこの一件のみで、あとは恙無くクレープ屋として励み、休憩時間中は十五夜祭で見に行ったような部活を中心に一人で見て回り、充実とした文化祭を過ごすことができた。


 一人でのんびり文化祭を見て回るのも悪くないな、と去年シフト以外不参加だったのを後悔する。


 なお、紫苑女学院の将棋部たちに教わったことを噛み締めて望んだ翔央高校囲碁将棋部との戦いは、中等部員を除き完膚なきまでに叩きのめされた。


 イケメンに鉄槌をという彼らにサービス精神など一欠片もなく、教えを乞いても詰将棋のおすすめ本しか教えて貰えなかった。

案外気の合う人だったり話が弾む相手ならいくつ歳離れていても楽しいものですよね。

自分もバイク乗ってて倍くらい(洒落じゃないですよ笑)歳上の方々と走ることもありますが、とても楽しいですよ。

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