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妖精の住処  作者: 速水零
191/312

手料理?

あらすじ

クレープの試食会やった

「みんな帰ったし、冴さえ良ければこのまま夕飯食べて行かないか? 初出勤の感想と個人的にささやかなお祝いがしたいんだけど」


「は、はい! ご、ご相伴に預からせていただきます!!」


「それちょっと意味違うって。何か緊張することある?」


 ご相伴に預かるとはメインの客の連れとして参加させてもらう時にいうセリフであって、今の冴単体の誘いに対する礼として使うのは誤用だ。


 品行方正才色兼備な冴がこんな間違えて覚えているとは思えない。涼は冴がガチガチに緊張していることは見抜いたが、なぜかはわからない。


「ふ、普通しますよ! ここは新しいバイト先ではありますが、涼さんの家なんですから! ……私、男の人の家に入るの初めてで、実はずっと緊張してたんです!!」


「……それもそうか。まあ、これからは毎週うちに来るわけだし、早めに慣れてくれよ」


 涼は柚と二人暮らしをしているので、今更女の子が家に来たということで緊張したりテンパったりすることはない。


 言われてみればそうかと納得した涼は時間も遅いので夕飯の支度をはじめる。


(柚以外に手料理を振る舞うのは久しぶりだな。冴の家はかなり上品なようだし、いつもは絶対食べられないようなものを出そうか……いや、お祝いでもあるから料理で遊ぶのはやめておくか。それこそ空や海と食べに行ったイタリアンのように貴族が足を運ぶような店に食べにいくべきなんだろうけど、ちょっとやり過ぎだな)


 一昨日に今日の分までの食材をまとめ買いしていたので作れる料理の幅は狭い。


 いっそのこと庭にあるバーベキューセットを引っ張り出してやろうとも思ったが、外はずいぶん寒くなってきたのでそんなテンションにはならないだろう。


 悩んだ末に涼はチーズフォンデュを作ることにした。


 チーズならそもそも家に余っており、ソーセージやブロッコリーのような野菜たちをつけて食べるだけなので冷蔵庫の中のものでいけるだろう。


 お祝いごとにもピッタリだと自分で自分を褒めたい涼だった。


「夕飯はチーズフォンデュにします!」


「いいですね! 私も大好きです! 何か手伝うことはありますか?」


「いや、作るの楽だから大丈夫。ゆっくりして待ってて」


「はい、わかりました。では子どもたちがやってたアプリで遊んでますね」


「マジメだなぁ。別にテレビ見てたりネット動画漁ってていいからね」


 チーズを溶かすのに先ほど出したホットプレートを活用しようと思う。涼は耐熱皿にとろけるチーズ、牛乳、コンスターチを入れ、ホットプレートで温め始めた。


 ついでに具材にも火を通そうとソーセージ、ブロッコリー、人参、弁当に入れる冷凍ハンバーグ、ミニトマト、ジャガイモをホットプレートの端に置き、チーズを真ん中に置いて準備する。


 あとは待つだけで簡単だ。ゆっくり待ってもらうほどでもなかったなと思いながら涼は冴の隣に座る。


「涼さんって本当にすごいですよね」


「何を今さら。普通とは言わないけど、僕なんてそこそこだよ」


「いいえ、すごいです。あの成績を維持しながらファミレスのアルバイトに木下塾の運営までこなして……このアプリも開発したのは涼さんではないですけど、見つけて上手く活用しているだけで素晴らしいです。塾の雰囲気も暖かくて、保護者の皆様からの信頼も厚く、子どもたちみんなから慕われていて、涼さんのすごさを再確認しました」


「みんな良い子達だからね。先生って呼ばれてないで、涼お兄ちゃんとかりょうにーとかって呼ばれている以上親近感はあっても塾感ないんだけど」


「たしかに初めは驚きました。みんな近所のお兄さんみたいに接しているので。でも、子どもたちの気持ちはよくわかりますよ。こんなカッコよくて頭が良くて、運動神経抜群で、おいしいお菓子が作れて優しい人に魅力を感じないわけがありませんもん!」


「ずいぶん……僕のことを褒めてくれるじゃん」

 

 涼はあまり自分のことを手放しに褒められることが好きではないが、冴に認めてもらえるのは誇らしい。


「……もちろんです」


 隣に座る涼にじーっと見つめられた冴は、恥ずかしさのあまり顔を背けポツリと溢した。


 チーズがとろけてきたので、二人は乾杯とジュースを入れたグラスを合わせて好きな具材を竹串で突き刺す。


「やっぱりチーズフォンデュと言ったらソーセージかな」


「フランスパンも美味しいですよね」


「残念ながら用意してなかったんだよ。また今度やるときは絶対に入れようね」


「はい! でも流石に2連続チーズフォンデュってのは……」


「たしかに。じゃあ来週は何が食べたい?」


「えっ、ら、来週もご馳走になって良いんですか!?」


「もちろん。賄いとは違うけど、一緒にご飯食べよう」


 これは涼が恋愛を意識しているとか、冴をからかいたいとかではなく、純粋に冴と遊びたいだけである。


 涼からすればファミレスのバイト後に可愛い後輩と食事するような気分で、誘っている。


 だが、白に問い詰められて最近更に涼のことを意識している冴には魅力的というより少々蠱惑的な提案だ。


「わ、わかりました。来週からもよろしくお願いします! 楽しみにしてます!」


「子どもの元気に当てられた? 喜んでもらえて嬉しいよ。じゃあ今日の感想と、うちの塾に関して何か思うところがあれば教えてくれないかな?」


「は、はい。先ほども言った通り――」


 甘酸っぱい青春の1ページが増える、というよりもお祝いは反省会に趣旨が変化していくのだった。

寒い時のチーズフォンデュ堪らないですね。私は子どもの頃不透明なビニール袋に竹串の刺さった食材を入れ、くじ引きのように引いてそれを食べるっていうのが流行りました。

是非やってみてはいかがですか?


次回

文化祭前日

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