文化祭デート
あらすじ
冴のカフェにやってきた
「こちらストレートティーとショートケーキでございます」
キッチンの幕から出てきた冴は満面の笑みを浮かべ、涼の前に豪勢なケーキと香り豊かな紅茶が置かれた。
お嬢様学校なだけあり、そこら辺の業務用スーパーから買い込むのではなく、ちゃんと洋菓子店にお願いして大量に買い込んでいるのでレベルが高い。
もちろん値段も少なからず利益を出すためにお高くなっている。
「冴、僕はまだ何も頼んでないんだけど」
「私、涼さんのことならなんでもわかりますから、この一番高いケーキを欲しがっていると思い、それに合うケーキもお持ちしました」
「……高いな。2つ合わせて900円もするのか。これ文化祭だろ? まあ、いいけどさ」
メニューを見るとしっかりどこの店のケーキか宣伝が入っているのが面白いが、値段は笑えない。
涼が視察したクレープが3つは買えそうだが、冴をからかって遊んだ手前ノーとは言えず、渋々いただくことにした。
一口食べようとケーキをヒメフォークで刺していると、柚に食べさせてあげられない罪悪感が湧き出てくる。後で同じ店のケーキを買っておこうと思う。
「涼さん涼さん」
「なんだ?」
「私には何かないんですか?」
「自分で注文したらどうだ? それか自分で作って持ってくるとか」
柚や冴にせがまれたならともかく、数分前に出会った相手に奢るほど涼は広い心を持っていない。
「ええぇ、目の前の可愛い女の子には何も与えず、自分だけ豪遊している意地悪な彼氏に見られますよ? 私にも紅茶だけでいいので注文してくださいよぉ」
「いや、白は店員のエプロンは付けているのだから大丈夫だろ。そもそも、いつまでもここにいていいのか? それこそ周りのクラスメイトは働けって視線を送ってきているようだが」
そこまで店が忙しくない時間帯とはいえ、客はそこそこいる。
三角巾をつけている店員たちは涼と白のテーブルをちょくちょく伺ってた。
どこか羨ましそうな視線があちこちから向けられ、あまり良い気分じゃない。
「んー、それは多分私が働いていないからじゃなくて、私がここに座っているからですね。冴が連れてきた男とは言え羨ましいんでしょう。それに私のシフトは午後からなので誰も気にしません。エプロンは先ほどまでシフトだったので付けっぱなしにしているだけです」
「なるほどね。……まあ女子校だもんな。去年うちの文化祭で出店をやった時女連れの男子相手にクラスメイト達が似た視線を送っていた気がする」
「ということは涼さんの学校って男子校ですか?」
「ああ、そうだよ」
「それに冴のバイト先の近くってことは……もしかしてあの翔央高校ですか!?」
「そうだよ。しかもその翔央高校の中でも成績はトップクラス! この前の全国模試で全国15位になったんだから!」
涼が肯定する前に横から冴が何故か自分のことのように誇らしげに現れた。「よいしょ」と隣のテーブルのイスを持ってきて白の横に腰掛ける。
以前涼と冴は同じ予備校主催の模試を受けており、成績を教えあっていた。
「えっ…………全国15位!? すごっ!! 涼さんってもしかして天才!?」
「天才は言い過ぎだが……なんで冴が話すんだよ」
「えへへっ……すみません。つい涼さんの凄さを知ってもらいたくて。他にも運動神経よかったり、ピアノが弾けたりと凄いんだからね!」
「はあぁ、まさに完璧って感じですねぇ」
「それだけじゃないんだよ! 涼さんって実は17歳ですでにきぎょ――」
「そんなにペラペラ語る必要ようはないだろ。それより、シフト中じゃないのか?」
冴は三角巾をまだ着けている。涼はそれを見てまだ仕事が残っていると考えた。
「いいえ、なんかみんながもう上がっていいって言ってくれて……」
「ほら、早くどっか行きなさい!」「これから甘い雰囲気出てきそう!」「冴ならまぁ仕方ないわね」「あぁ、一輪の花が朽ちていく! もうダメ、見たくない!」
キッチンの天幕から冴と涼を遠のかせようと、手をプイプイッと振って追い出す合図を見せてきた。
一部変な思考をしている者がいたが、女子校や男子校には精神の歪んだものが紛れるものだ。特に進学校ともなると様々な人間が集まる。
「あー、私も行きたいけど、そんな野暮はできないもんなぁ。……仕方ない。私も春を探しに学校を歩いて来ようかな。今は秋だけど」
白は涼と冴に別れを告げて一人学院をのらりくらりと歩き回る。
涼は気にせず出口付近の受付で会計を済ませ、冴を連れて文化祭を見て回ることにした。
投稿時間乱れまくりですね。
できるだけ頑張って書き続けたいです。
次回
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