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妖精の住処  作者: 速水零
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高校の友人

あらすじ

新メンバーが活躍?

「うちのクラスの出し物はクレープをやることになりましたが、シフトや担当を決めてません。単純にキッチンとホール、客引きや広報ですね。クラスの内装やチラシなどの担当も決めましょう。とりあえず当日のやりたい仕事の担当に手をあげてください」


 翔央高校の文化祭は今月行われる。二学期の中間テストも終わり、徐々に文化祭に専念するようになるが、涼のクラスはようやく担当決めの段階だった。


 3年生はほとんど皆受験をするので参加することができない。


 今年が高校生最後の文化祭ともなると普段勉強勉強と受験に頭を支配されている翔央生も浮かれる。


 だが、涼はどうでもいいと言った目線でクラス委員の進行を見守っていた。


「なあ涼。お前確かファミレスでアルバイトをしていたよな。ホールをやるつもりか?」


 クラス委員の話が途切れ、やりたい担当に関して考える時間に入ると涼の隣の席に座る友達が話しかけてきた。


 その友達こそ涼の数少ない高校の友人、同年代の友達の中で最も涼が尊敬している本物の天才榊真(さかきしん)だ。


「いや、今回はキッチンをやろうと思う。クレープ作りはなかなか家でもやらないからここで練習したい」


「なるほど、普段やらないことに挑戦する方が面白い……涼らしいな。だが涼がホールをやった方がクラスには色々プラスだと思わないか?」


「冗談だろ。色々ってのはわからないが、僕も真も文化祭で大盛況を狙うたちじゃない。真こそ、そのトーク力を活かして客引きでもやってみたらどうだ? 世界大会で見せたあの論述は見事だった」


 真は模擬国連という生徒が各国の大使になりきり、国連の模擬を行うという部活をやっており、全国大会で最優秀賞、世界大会でも表彰されていた。


 部活単位の活動なので真のみの力ではないが、涼は真がいなければそもそも全国大会で優秀賞を得られるのが関の山だと思う。


「それこそ冗談だろ。涼は俺の討論や弁論を聞いていないだろ。客引きとかは性分じゃない。今年は部活の成果の発表が忙しいからクラスの出し物はパス」


「そうか、部活の出し物もあるんだったな。楽しそうで何よりだ」


「涼も最近塾がうまくいっているんだろ。よかったじゃないか。初めはどうなるか不安だったが、さすが涼だな」


 真は涼を同じように同世代の友人の中で最も尊敬している。世界大会では様々な天才たちを見かけたが、涼ほど容姿に優れ、運動能力抜群で、容量良くなんでも卒なくこなし、冒険心溢れた完璧とも言える人間は見たことがない。


 確かに真は涼よりも成績が良く頭脳単体に関しては優っているが、それ以外は全て劣っていると自覚している。


 例えるなら、真は頭脳という職種で全国トップに立っており涼よりも実力があるが、涼は頭脳で全国トップクラスにいるのに加え、他の多数の職種でもトップクラスに立っており、次元が違う。持って生まれた才能の部分が大きい頭脳で勝っていたところで人間としてのスペックで負けていては意味がない。


 涼は真の類稀な頭脳と発想力を、真は涼の世渡りの巧さと全てにおいてハイスペックな能力を認め、尊敬している。


 お互い対等に話しているが、自分の方が下だと思っている。相手より優れている点が自分にあることを認識していない。


 対等な口調で相手に突っかかり、それに見合う自分になろうと背伸びしているのだ。


「運が良かっただけだよ。それに見通しが甘いから予想外になるわけだし、新たな課題がたくさん出てくる。真みたいに緻密に計画を立られればいいんだけどな。元来無鉄砲に突っ込むのが好きな僕には性に合わない話だから嘆いていても仕方ないんだけど」


「いいや、生徒数が2ヶ月で倍まで増えたのは涼の実力だ。さっき言った通り俺には予測できなかったよ。それで、新たな課題ってのは?」


 涼は真に塾の方針を考えるときに相談に乗ってもらった。よって何かある度真に状況報告をしている。


「人員と広い教室の確保。まだ大丈夫だが、これ以上生徒が増えると見きれないし、入りきらなくなる。なあ真、うちでアルバイトをする気はないか? 真の成績ならバイトも認められるし、一緒に見て回ってくれるだけでいい。毎週水曜日のBASIC2時間だけで1万出そう」


「とても嬉しい話だが、前も言ったように断らせてもらう。破格の条件だってのはバイト経験のない俺でもわかるし、親友の頼みだ。しかし、だからこそ俺が涼の起こした仕事に何か問題を起こしたくはないんだ。俺は人に教えるのが不得手で子どももそんなに好きじゃないからな」


「そうか……なら、仕方ない。他を当たるとしよう」


 真は部活を理由にはしなかった。


 本当に、涼の塾の発展を思って断ったのだ。涼もそれがわかっているからこそお金を釣り上げたり、時間を限定するような()()譲歩をしなかった。


「子どもが得意か分からないが、卓を誘ったらどうだ? あいつは電子機器や基本パソコンツール、プログラミングとなんでもできる。涼がまだ導入していないシステムを構築してくれそうじゃないか」


「……卓か。確かに僕以上のガジェットオタクでパソコン部だもんな。そろそろ新しい授業を始めたいと思っていたところだ。まあ雇うというよりは僕から習いに行く形になるのかな」


 卓とは涼たちのクラスメイトで涼のおしゃべり仲間だ。電子機器メーカーの社長の息子で、アニメゲームオタク。


 涼にオススメのアニメを熱弁する地元の友達とは違い、互いの世界を大切にするやつで押し売りはしない。


 涼は彼の知識量と技術には尊敬しているが、社長の息子という環境のせいか少し高慢で鼻に付くタイプで、不快に思うことも間々ある。


「まあそうなるだろう。あいつを子どもの前に出すと悪い影響を与えかねない」


「変なところあるがそれも見ていて面白い。それにトーク力あるから話していて飽きないんだけどな。……おっと、そろそろ時間だ。お互い希望が叶うといいな」


「そうだな。今後の木下塾の発展を切に願うよ」


「サンキュー」

涼の高校の話ってあまりしてきませんでしたね。これから少しずつ出していきます。

ずっと前からごく稀に真や卓(SNS投稿の頃にちょろっと出ました)がチラ見えしてたのですが、ようやく現れましたね。


次回

十五夜祭

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