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妖精の住処  作者: 速水零
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幼女の楽園

あらすじ

冴と文化祭デートすることになった

 楽園、それは苦しみのない楽しさに満ち溢れた空間のこと。時に癒しの空間とも形容され、天国に類似した世界だと知らされることもある。


 木下塾は開校2ヶ月で16人の生徒を獲得した。


 木下塾の塾長である木下涼のとある事情により、その生徒たちは全て小学一年生であり、偶然か運命かその性別は皆女。


 つまり、木下塾は短期間で幼女のみが授業を受ける空間を構築してみせたのだ。


 塾と名の付いた通りここは学習塾なのだが、授業風景はほとんど幼女達の戯れ。タブレットを使って遊んでいるだけに見えるが、しっかりと勉強できている。


 塾は子ども英会話教室と一般的な学習の2種類あり、それぞれ月に4回開かれる。


 涼の家にエデンが月に8回も姿を見せるというわけだ。


 生徒の幼女達は皆涼のことが大好きで、近所に住むお兄ちゃんのようなノリでキャッキャと接してくる。


 ペドフィリア(小児性愛障害)の持ち主でなくともこの空間はまさに癒し。天国と言って差し支えないほどの楽園である。


 子猫を愛玩した時のように、誰もが純粋無垢な幼女達との触れ合いに頬を緩め、目筋を垂らし、邪気を払われるだろう。


 どんな奇跡が積み重なった結果であったとしても、幼女達を導く保護者たちはこの楽園に納得がいかないはずだ。


 なにせ教師は男でそれも資格を持たない男子高校生なのだから。


 状況だけを淡々と並べてみると街を歩く100人の一般人が皆口を揃えて「犯罪の香りがする」と答えるだろう。


 しかし、保護者たちは涼を糾弾することはなかった。


 それはなぜか。涼がなんでも出来る完璧なイケメンだからだ。


 ただしイケメンに限る、という注意書きが世の中に散布され定着しているように、イケメンとはどんな苦境も、理不尽も、非合理も、不可能でさえも覆す最強のカードであり、世の中を渡るのに便利な通行手形のようなもの。


 木下塾に通う子どもをもつお金持ちのマダムは全て涼の虜である。


 涼のハイスペックにより、皆安心して可愛い可愛い娘を涼に託すのだ。


 ところが、今までの授業全7回、徐々に楽園のメンバーを増やしながら進めたこの木下塾に()()()(NOT男の娘)の体験授業希望者が3人もやってきた。


 可愛い幼女達の戯れが楽園を楽園たらしめていたのに、ここで異分子の乱入が決まる。


 塾を名乗っている以上拒否権はない。


 さて、時代の趨勢はどこへ向かっているのか。


 ……………………………


 ……………………


 ……………


 ……


 このようなペド(ペドフィリアの略)の悲痛な叫びは涼の中にはない。


 確かに女の子だけで固まった方が楽に進めることはできるが、性別の分布など涼にはさして興味のあることではない。


 徐々に木下塾の生徒が増え、男の子まで加入するようになったのなら商売繁盛でむしろ喜ばしいことである。


 だが先述した通り幼女だらけの空間に6歳7歳の小僧を2、3人放り込んだらどうなるか、あまり想像したくない。


 普通なら絶大なアウェー感にやられ、せっかく体験授業を受け入れたのに「つまらなかった」「もっとたのしいところだとおもってた」「先生女子ばっかかまってておれらのことあいてしてくんなかった」などという評価を植え付けられてしまうだろう。


 生徒の性別に興味はなくとも、涼は全力を尽くさなくてはならない。


 楽園と名付けたあの雰囲気にも異性の乱入により変化が生じることも想像できる。


 涼は今まで男友達と遊ぶようなノリで、又は一歩引いた外面を高感度稼ぎで塗りたくった対応でしか異性と接してこなかった。


 年頃の男女の機微に疎く、椿の去った後のクラスの雰囲気を思い出せない。


「んー、姫や茜、楓と接してきた経験を活かしてこれまで明るい雰囲気作り出せたけど、この頃の男子女子が混ざったクラスって先生がどう舵取りをしていたかな」


「何難しく考えているのよ。そんなの普通にやればいいじゃない。確かに今までみたいな王子さま気取りのキャラでやるのは変だけど、爽やかな先生っぽくやれば十分だって」


「そういうものなのか? まあ爽やかな先生ってのがよくわからないんだけどな。とりあえず少年たちを盛り上げつつ少女達にはなるべく普段より少し抑えた程度で接してみるよ。……難しいなぁ。具体的にこう振る舞おうってイメージがないから難航しそうだ。見に来る保護者のことも考えなくちゃいけないし、いつになったらこの仕事は安定するんだ?」


「さーね。多分このまま規模が少しずつ大きくなって涼にとっての面倒ごとが増えると思うわよ。姫の小学校って1学年4クラスあるんでしょ? それに、いずれ他の学年の対応も余儀なくされるんじゃない?」


 今のところ姫のクラスとその隣のクラスの生徒しか木下塾に入っていないが、残り2クラスある以上もっと増えると考える方が自然だ。


 涼の授業を約2ヶ月やってきた成果が最近各家庭で出始めている。


 直接の学力に結びつかない子もいるが、成長を実感しない親はいない。


 なんでも出来る涼は教育に関しても天才的なセンスと感性を持っていた。そして、幼児教育に興味のある柚の努力が身を結んだ。

 

「はぁ、とりあえず明日の子ども英会話を乗り切ってから色々考えようか」


「そうね。体験授業の男の子達は英語は今度って言っていたから普段通りだし、第3回頑張りましょ」


「ああ、がんばろう」


 涼が力なく首を縦にコクンと下ろす。


 涼はそっとため息を吐いて再度柚の作った教材資料をチェックした。

前半ちょっと遊びました。

小学校低学年の男子って女子の中に取り残されることに異常な拒否反応を示しますよね。

昔ピアノを習っていた時僕以外が女の子で嫌になったのを思い出します。


次回

乱入者

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