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妖精の住処  作者: 速水零
170/312

後輩とデート?

あらすじ

柚が不機嫌になった

「涼さん、これさっき言ったチケットです」


 涼と冴のバイトの入りと終わりは全く同じ時間。きっちり4時間半働いて涼たちは深夜帯の大学生にバトンタッチした。


 休憩室でお互いドリンクバーの飲み物を持ち寄って飲んでいると、冴から映画の前売り券ほどの大きさの細長いチケットをもらった。


 時にオークションでこのチケット1枚が五千円札以上の価値に変わる噂の一品を、涼は落としたハンカチを受け取るくらい軽く受け取る。


「ありがとう。紫苑女学院の文化祭に行くの初めてだから楽しみだ」  


「へぇ、そうなんですか。てっきり中学校の同級生に招待されて行ったことがあると思っていました。うちの学校涼さんの中学出身の人多いんですよね」


「まあ地元だから入りたいって気持ちは強くなりやいんだろうね。自転車で通えるし、進学者多いから中学の先生で対策のプリントくれる人もいるから。でも、中学の同級生たちで僕を誘う奴はいないと思うよ。中々変な奴で通ってるから」


 涼は保健室の先生に精神病を患っているのではないかと疑われた(あながち間違いではないが)中学時代、授業に真面目に参加せず、興味のない副教科を除いた全教科でテストで学年一位を掻っ攫っていた。


 部活に入らず、関心のない提出物は完全に手を抜き、交友の幅を広げることを否とした。


 涼の見た目に惚れたり、涼と同じ変人が涼に告白をしてきたが、大抵の女子からの印象は【超ハイスペックな残念イケメン】で固まっていた。


「涼さんが変な人? 確かにいじめっ子っぽいところはありますけど、至って常識人なんじゃないですか? 優秀すぎて普通の人とは言えないですけど」


「評価がブレブレだなぁ。冴と会った時はだいぶ矯正されてたからよくわからないだけだ。葵に僕の中学時代のこと聞いたらいろいろ教えてくれるよ」


「ふーん。……やっぱり葵さんと涼さんって寄りを戻したんじゃないですか? お互いの雰囲気がもう熟年夫婦みたいなんですけど。すっごく怪しいです」


 冴は上品にドリンクバーに備え付けられているティーバッグで淹れた紅茶を傾け、涼をジロリと睨みつける。


「戻してないよ。僕も葵もそんなつもりはないって。前も言った通り今はフリーだよ」


 冴の疑いを隠さない姿勢は見ていて可愛らしいが、妙な誤解をされたままなのは嫌なので誤解だと訴える。


 しかし言った後で「なんか軽い男が二股かける時に吐くセリフみたいだな」と思い恥ずかしさを覚えた。


「へぇー、じゃあ涼さん、私と文化祭見て回りませんか?」


「うん、いいよ。僕もいつか冴と一緒に遊びたいと思ってたからね。紫苑女学院入ったことないから迷っちゃうかもしれないし、道案内も頼むよ」


「涼さんが道に迷うってのは嘘ですよ。涼さんみたいな完璧超人が方向音痴なわけないじゃないですか。どうせ一度歩いた道は全て記憶している、とかそういう感じですよね」


「冴まで僕をそう呼ぶのか……。まあ、大体一度通った道は覚えるけどさ、こういうのは定型文っていうか、常套句だろ」


「おかしなこと言うから突っ込まれるんですよ。フリかと思いました」


 ベーっと冴が舌を出して下手に誤魔化すが、可愛すぎて涼は騙されてやることにした。


「そういえば土曜と日曜の2日制だろ。どっちの曜日に合わせたらいい?」


「んー(葵さんとは土曜日に約束しているし、バッティングしないためにも日曜日の方がいいかな)日曜日はどうですか? 午前中はシフトが決まっているので12時ごろに正門集合ってことでどうでしょう」


 冴は可愛い才媛が集まるとされる紫苑女学院の中でもトップクラスの美貌と学力を備えている。


 見目麗しい乙女目当ての外来客が少ないチケット制の文化祭とはいえ、男性客や可愛い後輩を見に来るOGが多いので、冴は他のクラスメイトよりも多くシフトが入っている。


「いいよ。でも一人で回るのも楽しそうだから先に入って遊んでくるかもしれないから」


「も、もしかして私の店員姿を見に来るつもりですか?!」


 接客業のアルバイトの先輩であり恋慕を抱いている相手の涼に見られながらのカフェ店員は非常に恥ずかしい。


 葵や友達ならばむしろ遊びに来てほしいが、涼だけにはあまり見られたくない。こられたら嬉しさ3割恥ずかしさ7割で接客どころではなくなるだろう。


 そしてそんな冴の姿を見て不審に思うクラスメイトの対処も大変なことになるのが始まる前から想像できる。


「ん? だって今()()()僕に見に来てもらうように午後から会おうって言ったんだろ?」


「ち、違います! 恥ずかしいので見に来ないでくださいね!」


「ああ、わかってるわかってる、僕もフリってものを最近覚えてきたからね。これは見に来いってことだろ?」


 涼は面白がってとぼけ、伏見稲荷の狐が如く目をわざと細く見開き声のトーンを上げる。


「うー、やっぱり涼さんっていじめっ子ですよね!べ、別に来てもいいですけど、相手なんてしませんから! あと、ナンパもNGですからね! ナンパはダメですよ! 大事なことなので二度念を押しました」

  

 冴は人差し指をビシッと涼の前に突き出し、子供に言い聞かせる先生のように念を押す。


 本気で嫌がっているわけではないが、出来るだけ涼が見に来ない方が冴にとって平和だ。


「酷いなぁ。僕がそんなことするように見えるのか? 全く、僕は冴一筋だってのに。他の女の子に目が移れるほど僕は器用じゃないんだ。……なぁ、冴ならわかってくれるだろ?」


 冴相手にふざけるのは面白いので、新鮮な反応に期待し、涼は目の前に突き出された冴の指をそっと両手で包み込み、目を合わせる。


 司の知り合いと会う時のために鍛え、遺伝的にも優れている演技力を存分に活かし、涼は調子に乗って小芝居を続ける。


「なっ!? な、な、な、何を言っているんですか!? か、揶揄うのはやめてください。……ったくもー、涼さんは意地悪なんですから。チケット渡したのは失敗だったかもしれません。…………いいですか、日曜日の12時ですからね!」


「ああ、わかってるよ。文化祭、楽しみにしているから頑張ってね」


「もちろんです! 私も楽しみにしてますから!」


 楽しい時間はあっという間に過ぎ、補導されるギリギリの時間まで控え室に溜まってしまった。


 涼のスマホに映った柚からの「まだ帰って来ないの?」という通知で涼はもうずいぶん遅い時間だと気がつく。


 涼たちはデートの約束を再確認し、各々の家へと帰るのだった。

最近弛んでいるのか、十一時に投稿出来なくとも1日1話投稿できればいいと勘違いしている気がします。

こういうところからどんどん堕落していくんでしょうね。気を引き締めるためにキャンプ行きたい…


次回

女の子の楽園

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