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妖精の住処  作者: 速水零
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小悪魔の誘い

あらすじ

第8章終幕

 二学期中間テストも終わり、涼の通っている高校、翔央高校の雰囲気は夏休みを目前に控えた小学生ほどに浮き足立っていた。


 大学進学実績全国有数、天下の名門翔央高校の生徒であっても定期テスト終わりには一時勉強から離れようという意思が蔓延するものだが、皆が浮き足立っているのはそれだけが原因ではない。


 主な原因、それは一ヶ月後に文化祭が開催されることだ。


 翔央高校は意識高い進学校なので大学受験に忙しい高校三年生は文化祭に参加できず、高校二年生が主導で開催される。


 高校二年生の夏休み明けから大学受験が始まると普段口酸っぱく語る教師たちも、この時期の文化祭で生徒がはっちゃけるのには目を瞑っている。


 一部の運動部や文化部を除いて殆どの部活がこの文化祭あたりで引退し、一気に受験モードに入るので生徒たちもこの文化祭がバラ色の学園生活最後のイベントだと認識している。


 だからこそ皆文化祭ムードに当てられているのだが、涼は冷ややかな目で周りを見ていた。


(文化祭か……部活も入ってなければ、クラスで発言権のあるわけでもないから去年同様少ないシフトに入って終わりかな。新しい教室のこともあって忙しいし)


 涼の開設している木下塾も第7回の授業を終え、英会話教室も2回目の授業を終えた。


 まだ開設2ヶ月しか経っていないが涼自体の人気と涼の学力、そして指導力によって会員の数は16人となり、毎回のように体験希望が来る。


 木下塾でやったことをクラスで話していると、他のクラスメイトは羨ましがって入りたくなる。


 体験授業は無料クラスのみんなが入っている塾ならば受けてみるのもアリだと保護者も思う。そして、いざ体験授業の見学をしてみると涼の魅力に取り憑かれ同志達に引き込まれる。


 授業の質も良く、生徒たち皆ふざけずに集中して授業に向き合っているので、娘を入れる通わせるのがベストなんじゃないかと錯覚し出す。


 すでに姫のクラスの女の子の7割近い生徒が木下塾に入っており、隣のクラスのシンパも増えつつある。


 これから先もっと受講生が増えるとなると涼の家のリビングでは収まり切らなくなってしまう。


 涼が椿と会った頃に行われた【涼くんを見守り隊】の緊急会議のお題でも出てきた。いずれ涼の家ではなくどこかで教室を借りた方が良いのではないかと言う意見が主流となり、目下涼を悩ませている。


 そもそも、涼のリビングで収まらないほどの規模になったら涼一人で満足に教育することはできないので、誰かアルバイトを雇う必要があるのではないかという問題もあるのだ。


(順調に事が運びすぎるってのも問題なんだな。とりあえず煩わしいテストも終わって文化祭期間中は時間に余裕ができるからゆっくり対処しようかな)


 涼はいつも以上に長く延びたホームルームが終わると同時に教室を出て真っ直ぐ帰宅する。帰宅部は余計な行動はせず、自宅に行進するのが仕事。


 今日も真面目に部活しているなぁ、なんて考えながら涼が校門を抜けてスマホの通知チェックしていると一件ringが届いていた。


『涼さん、テストお疲れ様です! お互いこれから文化祭シーズンですね。涼さんは何か出店をやるのですか?』


 宛名を見なくとも誰からのメッセージかわかる。佐伯冴だ。


 涼の学校の近くに冴の通う女子校があり、昔から殆ど同じ時期に文化祭が行われている。


 同時開催すると客の奪い合いになるので、近年は一週間ほど早く冴の高校が文化祭を開催しており、中間テストが終わってから準備を始める翔央高校と違い、冴達の高校は中間テスト前からすでに始まっていると涼は冴から聞いた。


 あまり中間テストに集中できないんじゃないかと思うが、隣の女子校がどうなろうと涼にとっては興味のない話だ。冴は真面目なので心配していない。


『んー、今日のホームルームでクレープをやることになったんだけど、殆ど僕は関わらないよ。冴は何やるんだ?』


『私のクラスではカフェをやることになりました。ベタにメイド喫茶って意見もあったんですけど、衣装の準備が大変そうなので、お手軽にみんな一緒のエプロンで済ませることにしました。私もバイトの経験を活かしてホールをやるんですよ!』


『それは頼もしいな。うちはまだやること決まっただけで役職とかはまだ決まってない』


『涼さんがホールやれば()()()上手く回りそうですね』


『色々ってなんだよ。文化祭の出店って営利目的じゃないのがつまらないよな』


『えーー、クラスのみんな一丸となって店を出すんですから楽しいに決まってます! 涼さんは色々ドライ過ぎます!』


 冴とこうして遠慮なくringできるのがたまらなく嬉しい。どこか満たされる感覚に包まれる。


 涼が思わずニヤけながらスマホを見つめていると、思わぬメッセージが冴から飛んできた。


『ところで涼さん、私チケット余りそうなので文化祭来てくれませんか?』




第9章始動!

この流れだと10章で完結するとキリが良い感じですが、まだ決まってません。

50万文字目指して頑張ります!


次回

チケット

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