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妖精の住処  作者: 速水零
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ロボット

あらすじ

椿が帰った

 涼は環状二号線に乗って横浜の街を駆ける。


 夜十時を超えても車やトラックはそこら中で走っているが渋滞に捕まることなく進むことができた。


 磯子という横浜中心から数駅南下したあたり右折しし、海沿いを走り神奈川県の先端城ヶ島を目指す。


 磯子の近くには八景島シーパラダイスや海の公園(人工海岸)があるが、涼の気分にはそぐわないのでスルーして進む。


「……ロボットか」


 思わず椿に言われたことを口ずさんだ。


「あの人と全く違うベクトルでも同じように行き過ぎている。……たしかにそうなのかもしれない。葵に今まで何回おかしいって言われたか。いや、柚も結構言ってきてたな。ちょっと特殊な性格だと思ってたんだが、認識を改めた方が良いかもしれない」


 国道十六号線を法定速度をわずかにオーバーさせて涼は走る。


 やはり一人でのんびりと考え事をしながら走るのは心地良い。


 嫌なこと、良かったこと、興奮したこと、辛いこと全て一緒くたに過去の思い出として追想できる。


 スマホホルダーに取り付けられたスマホの地図アプリ上では海に沿うように走っているが、横浜や横須賀は海岸線付近に様々な工場が建っているので海が見えない。


 逗子から回った方が面白そうだったとちょっと後悔しつつ、涼はさらにアクセルを捻った。


「そういえば横須賀から千葉の金谷だったか、にフェリーが出ているんだっけ? 千葉を走ったことはないから今度行ってみたいな。ロードバイクだと横須賀まで行くのにかなり時間かかるからまたバイクで行こう。その時は柚も連れて房総半島の先端まで行きたいな」


 信号に捕まりあたりをボーッと見渡すと、近くに結婚相談所の看板が見えた。


「恋愛を意識……か。葵を含めて3人と付き合ってきたけど、そいつを好きになろうとか思ったことないな。初恋の相手になると考えたこともないし、友達って線引きがダメだったのかな。……ロボットねぇ。

 僕は興味ないことは絶対やらないって決めていたけど、それが徹底しすぎなのか。中学を振り返ればそう見えても仕方ないな。なんせ保健室の先生に精神病を患っているんじゃないかって言われたくらいだし。ある意味血は争えないのかな。

 僕が興味ゼロなことでもやらせられるほど影響力を持った女子が、可能性ありって母さんが言っていたけど、今の僕ならその相手は葵、空海、冴、後は柚か」


 せっかくならそのフェリーの港近くを通って行こうと、遠回りになるが横須賀を突っ切って三浦半島を一周するような経路を進む。


 久里浜というフェリーの船着場近くを通り過ぎるとちょくちょく見えていた海が開けて広がって見えるようになった。


 しかし、夜の海はとても暗く、海岸線沿いを走っていても波を見分けることすらできない。


 逆に海岸線沿いの道は電灯で灯されて綺麗な線が浮かび上がっている。オレンジ色の街灯のアーチを駆け抜ける自身の姿を想像するとテンション上がる。


「葵はまぁ幼馴染ってのもあるし、一番仲の良い友達の一人だからわかる。元カノってのも少しあるな。期末テスト明けに遊んだ時は楽しかったし、またどこか遊びに出掛けたいと思う。復縁したいかというと今はそうじゃないな。

 空と海はそもそもSNSの垢抜け投稿を初めに推し進めてきたから対象だな。光の妹たちっていう肩書きがマイナスイメージだけど、昔から可愛がってきた子たちだから僕にとっても妹みたいなものだ。だから恋愛関係とかはないな。 

 冴はなんだろ、まじめで可愛い後輩ってだけなんだけど、初めてできたまともな後輩ってだけでかまいたくなる。多分何かおねだりや頼みごとをされたら断れないだろうな。葵と一緒で二人で遊びに出掛けたいけど、これは恋愛に繋がるものなのか? あー、でも夏休みに柚と一緒に観たアニメには可愛い後輩が出てきて主人公が落とされる話があったし、そういう未来もあるのかもな。

 柚……柚ねぇ。あれはただの居候だけど、体が小さくなったって同情しているだけであいつに付き合っているわけじゃない。柚といると楽しいことが色々あるし、あいつの体自体も面白い。柚の精神疾患を治すために本気を出したことがあったな。そもそも人形のような見た目してて可愛いから案外コロリと惚れるかもな」


 国道134号線を突き進んでいき、ついに三浦市に入った。三浦海岸駅を超えて江ノ島から続いてきている国道134号線とぶつかり、城ヶ島への道は県道26号線となる。


 このあたりまで来ると標識に城ヶ島と書かれるようになり、目的地が近くなっていることを実感する。


 少し前に完全無料化した城ヶ島大橋を渡り、涼は城ヶ島にようやく辿り着いた。


 城ヶ島を走るバスの終着点まで進み、漁港に等間隔で並んでいる釣り師を避けて路駐する。


「はぁ、着いた着いた。ロードバイクで慣れてたからか2時間くらいかかったけど休憩なしで来れたな。あーあ、もう12時回っちゃったか。補導されないよう注意しないといけないが、こんなところ見回りに来たりはしないか」


 涼は自動販売機で缶コーヒーを係船柱(買い船にロープをかける柱)に腰掛けて物思いにふける。


 静かな波音を聞きながら涼の独白は続く。


 答えのない自問自答を繰り返しながら、涼は缶コーヒーを飲み切って城ヶ島を後にした。

 

 


 

城ヶ島付近に砂浜の無料キャンプ場があるのですが、今は使えませんね。

城ヶ島って神奈川県民以外じゃ知名度ほとんどないのを最近知りました。ちょっと辛いです涙。


次回

小悪魔の誘い

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