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妖精の住処  作者: 速水零
162/312

親子関係

あらすじ

椿の勧誘を跳ね除けた

「母さん、夜ご飯食べいく?」


「ええ、そうしようかしら。せっかくだし、母の手料理ってやつを披露しましょう。買い出し行ってくるわね」


 椿は久しぶりにこの街を見て回るのを楽しみにしている。


 いつも買い物をしていたスーパー、昔涼の通っていた小学校、最寄り駅付近の商店街など、懐かしいところが沢山ある。


 涼は付いて行こうか迷ったが、柚に状況を伝えなければならないので、家に残ることにした。


「いってきます」


「いってらっしゃい」


「なんだか今日で一番嬉しいわ。涼に見送られるのがこんなに幸せなんて想像もしてなかった」


「僕も父さんが単身赴任でいなくなってから誰かを見送るのは初めてだよ。悪くないものだね」


 椿は主婦のようにポシェットの中にエコバックを入れて家を出る。


 涼の家の高級セダンはたまにカーシェアリング(他人に日数単位で車を貸し出すシステム)で運転してもらっている。だから司が単身赴任して一年半経つが車に不具合は起きない。オイル交換は涼がやっているし、車検も切れる頃には一度司が涼のことを見るために帰ってくる。


 椿が買い出しのために一日保険に入って乗っていくこともできたが、街並みを感傷に浸りながらゆっくり見て回りたいので、椿は歩いて出かけた。


「久しぶりの母親とのご対面どうだった?」


「んー、思ってたのとは違ったけど概ね良かったよ。まさかモデルの勧誘も兼ねていると聞いた時はプチンとキレたけどね」


「涼がキレるなんて相当ね。まあ、それほど大切な相手なんでしょ? だって大事な人じゃなければ涼は興味を失ってサラッと流すじゃん。やっぱり親子の絆は永遠なのよ」


「知ったように言うなぁ」


「そりゃ私もこの前お母さんと会った時に感じたもん。あんな一度写真で顔を見ただけの相手をあれだけ気にするなんて、これは世界を超えた絆の力でしょ?」


 以前柚の精神疾患を治す最終段階で柚の故郷の思い出の展望台に出掛けた時、偶然柚の母親の菫と出逢った。


「そうかもな」


「涼、あの時私のことをなんてお母さんに言ったか覚えてる?」


「…………さあな。色々といっぱいいっぱいで覚えてないよ。柚は覚えているのか?」


 柚をどうして探しているのか菫から尋ねられた時、涼は柚のことを最愛の恋人だと言って嘘をついた。


 もちろん涼はしっかり覚えているが、口にするのが恥ずかしく、ここでも嘘を吐く。


(最愛の恋人か……ネット記事を書いてる人や母さん、塾に通ってくれている保護者達や冴とみんな僕に彼女はいないか聞いてきた。冴は少し違うか。

 なぜ恋人を作ることにこだわるのだろう。僕も多少憧れや興味があって作ったことがあったけどそんないいものじゃなかった。葵と付き合っていた時は楽しかったし後悔してないけど、最愛の恋人という言葉には合わない気がする)


「えッ!? お、覚えてないわよ! だから聞いたんじゃない!! もう、その話は置いておいて、涼のお母さんがどんな人か聞かせなさいよ」


「自分から振っておいて良く言うよ。……母さんがどんな人かねー。簡単に言うとそこそこ優秀な上級国民。自分の母親に対して批評するのはむちゃくちゃ恥ずかしいけど、顔が良くて、スタイルも抜群。それで中々頭も回れば家事スキルもある。たまに衝動的に動くことがあるけど、基本先を見越して動くことができる」


「お母さんに対してスタイル抜群って……言わせたのは私だけどさ、そういう目で見てるわけ?」


「そんなわけないだろ。母親相手に欲情してたまるか」


「ふぅん……結構評価高いのね。流石涼のお母さんって感じ。でも、そこそこなんだ。上級国民ってどう言う意味?」


「だいぶ前に流行った言葉……って言うのは知ってるか。僕の母さんの実家は結構な金持ちで政治家も何人かいて、子どもの頃から英才教育を受けていたんだ。だから上級国民。まあ、今まで会った父さんや母さんの知り合い、うちの高校のやつからすればそこそこ優秀ってレベルかな」


 涼の高校は県内でも有数の名門私立で進学実績は全国でもトップクラスを誇る。その中には社長の息子や医者の息子、政治家の息子といった将来の日本を背負うサラブレッド達が多数通っているので比べやすい。


「最上位はどれだけ凄いのよ……。それで、これからお母さんとどうしていくの? もしかして一緒に住んだりとかするわけ?」


「それはないと思うけど……どうだろうな」


 椿は会いに来たと言っていただけで今後どうなるかわからない。


「しばらくしたら母さんが帰ってくる。明日も平日だから泊まることはないけど、もしかたら夜遅くまでいるかもしれない。夕飯持って来ようか?」


「ありがと。サンドウィッチがいい」


「了解」


 涼はすぐさまキッチンでポテトサラダとチーズをパンに挟み、トースターで焼く。


 出来合いのポテトサラダにチーズを乗せるだけなので小腹が空いた時に重宝する。


 2、3分焼き目を見ながら焼き上げ、柚の分を小さく切って自室に戻る。


 ついでにリクエストされたゼロカロリーコーラも手渡し、のんびりベッドに寝転がった。


 学校に初めての英会話教室、母親との再会などいつも以上に精神を酷使したため、酷く疲れている。横になって三十秒と経たないうちに涼は夢の世界に旅立った。


 


 コンコン。


「涼、晩ご飯の準備できたよ。……もしかして寝てるの?」


「……ッ!!!」


 鉄柱を頭に叩きつけられたように涼は飛び起きた。


 涼の自室には柚の家族おうちセットが置いてある。見つかれば酷い誤解を受けるに違いない。


「涼の部屋がどんななのか気になるわ。入るわね」


「えッ……ちょっと……まっっっ!!」




 ガチャリ。


 



ゆるキャン△面白いなぁ。

でも現実はあんな風には行かなくて……

またキャンプシーンを書こうと思います。

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