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妖精の住処  作者: 速水零
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元王女の真意

あらすじ

椿の目的が明らかに

「そんなことないわ」


「いや、それ以外考えられないですね。僕がモデル業界に興味ないことはご存知でしょう。そして、興味のないことを強制されることが僕の一番嫌いなことだってことも。……そういえば、勧誘してきた事務所やブランドの中に明らかに僕のことを熟知しているような誘いをしてくるところがありました。母さんですよね。僕のSNSをどれだけ精査しようともあそこまでの勧誘文は書けないはずです」


 涼を勧誘してきた事務所は皆夢を語ったり、突拍子もないことを言ったりしていたが、一つだけ明らかに涼の心理的に入りたいと誘導させる文言を並べたところがあった。


 あの時は柚と共にSNSを隅々までチェックした事務所によるものだと考えたが、今思い返せば涼の情報はたくさんあるようでどれも表面的なものだ。


 よしんば涼の性格を見抜くことができても、涼を誘導する勧誘を仕掛けることは不可能に近い。


「………………そうよ。確かに、ダイレクトメッセージで涼に勧誘をかけたこともあるわ。でも、それが失敗したから直接交渉をかけに来たわけじゃないの! それだけは信じて! 涼、あなたには才能がある。あの人と私の息子なだけあって顔は完璧。スタイルが良くて勉強もできる。風格も十分でキャラも立つ。まさにダイヤの原石よ。ねえ、一回だけでもいいからやってみない?」


「……別に、僕にとって母さんが僕をどう思っているかは関係のないことです。僕は母さんが痺れを切らして直談判しに来たと捉えるだけ。…………僕の性格を知っているのならここで勧誘するのが悪手だということはわかっていたでしょう。父さんがいないから成長した我が子の顔を見に来た。それで終わりにすればよかったんだ」


 涼の声のトーンが次第に凍てついていく。


 お腹を痛めて産んだ実の息子の冷酷な瞳に椿は気圧された。


「どうしても誤解を解いてくれないのね」


「誤解が解消されたところで関係ないでしょ。僕はやりたくないと言っているのだから」


「涼はどうしても、モデルをやりたくないって言うのね」


「はい」


「どうして? 確かに、昔のあなたを考えれば興味がないのはわかるけど、最近のあなたは変わったんじゃないの? あんな投稿するようになったり、起業するようになったりしてるじゃない」


 椿は疑問に思っていた。


 あの頃のまま歪んで成長していったのにしては整合性が取れない。誰かのおかげで良い方向に変わったのだと思っていた。でも、それにしては涼の本質が変わっていない。


 自分を曲げることが大嫌いな涼らしくない。


「全く変わっていないとは言いません。興味を持たされてやることもありましたけど、僕は僕です。やりたくないことはやりません」

 

 椿は涼が柚と出逢ったことを知らない。


 今までの涼ならまず柚のような性格の女と出会っても仲良くなることはないが、妖精のような姿に興味を惹かれたから、柚を見捨てることができなかったから今のような関係を築けているのであって、たとえ柚が元の姿の時に涼と会っても深い関係になることはないのだ。


 この運命の出逢いにより、涼は少し変わった。


 SNSの投稿も海や空が原因とはいえ、踏み切ったのは柚がいたから。起業に関しても柚を温泉に入れるために姫と関わったことが大元だ。


 柚と出逢ったことが、涼の命運を大きく変えている。


「…………そう。なら、しょうがないわね」


 未だ椿は疑問の答えを得られてないが、涼を見ていればわかる。千の言葉を並べても、涼の心は動かない。


「もっと明るい話をしましょうよ。せっかく久しぶりに会ったのですから」


 椿に勧誘の意思がないとわかり、涼の雰囲気が柔らかくなった。


 涼がいくら椿のことを嫌いに思おうとしても、大切な肉親ということには変わりない。


 涼は新しいコーヒーを淹れ、柚のために買っておいたケーキを準備する。


「そうね。私も、もう涼を誘うのは諦めるわ。それよりも今は涼のこれまでを聞きたいわ」


「つまらない話になるよ。母さんも知っていると思うけど、光や葵と今でも仲良く遊んで、好きなことばかりやっている。最近は隣の家に住んでいる小桜集さんとバイクで出かけようと話しているところだ」


 先ほどとは打って変わり、涼と椿は親子らしく仲良く談笑をし続けた。

涼が王子さまなら椿は元王女なのですが、今のところそれっぽさがあまりないですね。愛が感じる椿の雰囲気くらい?

暇といっても忙しくなる時はあるもので、明日明後日も大変そう…


次回

今後の親子関係

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