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妖精の住処  作者: 速水零
158/312

大きな支え

あらすじ

良き隣人の助けアリ

「母さん、僕はまだ仕事が残っているので、客間でゆっくりしていてください」


「ええ。じゃあがんばってね」


「はい。……では愛さん、戻りましょう」


「……涼くん」


 皆を待たせているので早く帰りの挨拶を終わらせたくリビングに戻るよう促したが、愛は涼を引き留めた。


 姫は頭に?を浮かべて涼と愛を交互にジーっと見ている。


「なんでしょう?」


「今後、涼くんに何があろうと、私達【涼くんを見守り隊】は涼くんの味方だからね。いつでも相談に来なさい」


 以前涼とバーベキューをした時、こんな子を育てあげたお母さんにあってみたいという恵の話に同意した愛だが、いざ椿に会ってみると得体の知れない恐怖感を抱いた。


 椿は涼の母親とは思えないほど若々しく、女性皆が憧れる理想像を体現したかのような美しい容姿とプロポーション、そして細部から溢れ出る品性を有している。


 この辺りは様々なお金持ちの淑女が住んでおり、モデルや女優をやっていたという肩書きなんて珍しくもない。


 しかし、そんな地区に住んでいる愛には椿が遠い存在に思えた。まるでどこかの悲劇の女王然とした空気を感じる。涼の母親と聞いて妙に納得がいったが、愛は椿に圧倒されていた。


 これから涼が彼女に何を言われるのか想像もつかないし、何か助けになれることがあるとは限らない。


 それでも、愛は涼の支えでありたかった。


 きっと、同じ【涼くんを見守り隊】のメンバー達も同じ気持ちだろう。


「…………はい。ありがとう、ございます」


 人との繋がりがこんなにも温かいものだと感じたのは生まれて初めてかもしれない。


 友達や後輩との繋がりは人生に彩りを与えてくれた。寂しい時には彼らが一緒にいてくれるのが励みになった。しかし、尊敬している大人の支えというものは特別、涼を救ってくれた。


 涼の心に勇気の火が灯る。


 先程までの覚悟などから元気でしかなかったのだと実感する。


(母さんがどんな理由でここに来ようと、僕は僕だ!好きなことを追求し、好きなように生きていくだけだ! それに、僕には愛さんや集さん、それに頼りになる他のお母様方がいる。…………ん? 【涼くんを見守り隊】? なんだそれは?)


 何か聴き慣れない妙な団体名が出てきたが、今はリビングに戻るのが先だ。


 涼は未だに状況が飲み込めずボーッとしている姫の手をとって皆のもとに帰る。


「すみません、今親戚がやって来て、その対応をしておりました。子ども英会話の話ですが、何か質問はありますか?」


「大丈夫よ」


「ええ、聴きたいことは聞けたしね」


「わかりました。それでは本日はこれで終わりにしたいと思います。 はい! じゃあみんなそろそろ帰る支度をしようか。カバンに勉強道具をしまって、飲み終わったコップはゴミ箱に捨ててね」


 木下塾を始めてから涼はリビングにウォーターサーバーと大人用のコーヒーメーカーを設置している。


 涼の父親の司は、涼が個人事業を始めると聞くと、支援のためか涼への生活費が月十万増えた。


 ただの小さな塾の経営でしかないが、色々な道具が必要になるのだと思ったのだろう。涼は司から増えた分の生活費も好きに使っていいと言われている。


 溜まりに溜まった生活費に加えて司からの支援もあり、涼は大胆に子ども向けの小型タブレット十台とウォーターサーバーに、コーヒーメーカー、加えて今後必要になりそうなものもいくらか揃えていた。


「「「「えー。もっとあそびたい!」」」」


「ごめんね、今日は居残りで遊べないんだ。子ども英会話始める子は毎週火曜日にあるから、英会話始める子は火曜、他の子は水曜日にまた会おうね」


「……はーい」


「涼お兄ちゃん、ほかの日にもあそびにきちゃダメ?」


「んー、いいけど、僕も他に仕事をやっているから、しっかり来る日は前もって教えてね」


「「「やったぁぁあっ!!」」」


 涼は幼女達から大人気。もはや地域のアイドルほどの人気を有している。


 苦笑いを浮かべる涼とは裏腹に子ども達は大はしゃぎ。毎日子どもの相手をさせられるのではないかと思ったが、それも悪くないと思う自分がいた。


 子ども達は「あしたもまた涼お兄ちゃんとあそぼうよ」「おねえちゃんこのじゅくにかよえないみたいだから、つれてきてあげたい」「そうだ、わたしもいもうとつれてこよう」と涼が身震いするような会話を繰り広げながら母親に連れられて帰っていく。


 一瞬母親達が視線を巡らせてアイコンタクトを取っていたが、涼は全く気が付かない。それは、後に【涼くんを見守り隊】の緊急会議が始まる合図だった。


「はあ、ようやく終わったぁ。……でも、これから起きる事態の方が厄介なんだよな。とりあえず柚にはまだおうちセットの中にいるよう言っておくか」


 涼はキッチンに置いてあるコーヒーメーカーでコーヒーを淹れ、椿をもてなす準備を整えつつ、心の準備も整えた。


 スーッと深呼吸をして、さらに覚悟を固める。


 そして柚から「了」という短いringを確認し、椿をリビングに呼んだ。

予定ほど続きませんでしたね。エイプリールフールだから嘘つきました〜とかではないです笑笑ここまでで一区切りにすれば良かったのでしょうけど、忙しさのため間の悪いところで分割させていただきました。

話を引っ張るようで恐縮ですが、次の話は見守り隊の緊急会議にします。

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