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妖精の住処  作者: 速水零
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刺激的な再会

あらすじ

英会話やってみました

「どうでしたか?」


 英会話教室を希望していた保護者達はリビングで我が子の授業風景を見学していた。


 涼は子ども達にタブレットのアプリで好きに遊んでいていいよ、と告げて保護者達に子ども英会話の感想を聞く。


 この場には涼に英会話をやってもらいたい人以外にも単純に興味を抱いた人、涼の顔が見たかった人もいて、かなりの大所帯となっている。


 いかに涼の家のリビングが広いと言ってもかなり限界に近く、若干窮屈感がある。


「ええ、とても楽しそうに映画に取り組んでいて良かったわ」


「うんうん、やっぱりいつもの友達と一緒に受けられるのが良いわね」


「他の学校の友達を作るのもいいことだけど、私は学校で話す話題作りにもなるからこっちがいいわ」


「わかるわかる」


 保護者は涼のスペック補正もあり、かなり好評だった。すでに涼に教育を託している家庭も多いので、プラスの効果が出ていればよく受け取られるのは当然と言える。


 授業を受ける子ども達は皆6、7歳だが、語学を習うなら早いうちにしっかり受けないといけない。


 肯定的な意見も多い中、僅かに懐疑的な意見も混ざっていた。


「あくまで僕が英語を習得した過程や、英語が堪能な友達の意見、様々な評論家の本を読んだ上で授業をするつもりなので、確固たる英会話理論はありません。ただ、小学1年生の子どもなら英語に楽しく触れて 、自然に受け入れることができれば小学校高学年から始めるよりもずっと楽に会得できます。僕はこのことをモットーに授業構成を行っていきたいと考えております」


「それで今日は自己紹介に関する話をずっとやっていたのね」


「今後はどうするか決めているの?」


「うんうん。気になるわ」


「今後はまず一般的な授業で会得したアルファベットをしっかり書けるようにし、身の回りにあるものを覚えつつ、日常会話で使える構文で試すようにします。例えば食べ物や筆記用具、スポーツや遊び関連など何週かに渡ってひと単元を集中して学んでいこうと思います。今月は十月に入ったばかりなので、今習った自己紹介をもとに他の挨拶やアルファベットを中心に進めます。小学生なので文字と一緒に覚えた方が効率的ですからね。率先して話す、集中して話を聞く、そして少しは書けるようにする、自然と読めるようになる、と4技能バランスよく行います」


 涼は自分で用意したPDFをノートパソコンに映して子ども英会話の主旨を丁寧に説明した。


 他の塾でも見るかもしれない構成だが、だからこそ有効なのだと主張する。


 まるでやり手の商人に商品を勧められているようなマジックにかかる奥様方。涼という理想のモデルが導くというのだから託しやすい。


 涼は英検やTOEIC、TOEFL、IELTSなどの試験を受けたことがないが、高校の先生に受けさせられたセンター試験(試験後日授業で解かされた)ではすでに英語の筆記とリスニング、両者ともに9割を大きく超えた。


 涼の英語能力を具体的に知りたがっている保護者もいるので、その情報をしっかり伝えたところ、まだ高校一年生の頃でそこまでできるのかと驚かれた。


「――そして、料金に関してですけど、一回の授業1時間を予定していますので、一般授業を受けている方は月八千円、英語のみの方には一万円いただくことにします。もし他の知り合いで英語に悩んでいる子がいたら是非誘ってみてください」


 露骨な勧誘にドッと笑いが起きる。


 お金の話なので暗い雰囲気で終わると印象が悪くなる。涼はワザと明るく振る舞い、保護者達に笑顔を向けた。


 何人かの奥様方はその笑みに魅了され、思わずキャーっと叫びたくなった。


「何か質問はありますか?」


「「「「…………………」」」」


 涼は保護者の聞きたそうなことを全て先回りして話していたので、特に質問は出ない。


 あとは自宅に持ち帰ってもらい、入りたい家はringで受講希望を伝えるよう話を締めくくった。


「……ねえ涼くん」


「なんでしょう?」


「今の英会話に関係ないことなんだけどさ。モデルやるって話本当?」


 恵経由で話が漏れたのだろうか? たしかにライターには涼と知り合いだということを伝えないと約束したが、周りに広めないことは約束していない。


 ジッと恵に視線を向けると、ブンブン音がするほど首を左右に振っていた。


「勧誘は来ましたが断りました。どこでその話を聞いたのですか?」


「娘からよ。うちの中学生の長女が涼くんのことをSNSの投稿で見て「キャーカッコいい! この人一人暮らししているんだって!! うちの近くだよね、ココ! お母さん知ってる?!」って騒いでいたわ。なんかのネット記事で涼くんのことを知ったって言ってたから、もしかして涼くんモデルとか始めるのかなぁって思ってたの」


 予想以上に涼の情報が広まっているのだと戦慄したが、現実に起こる想定外はもっと酷く、唐突にやって来る。




 ピンポーン。




 インターホンがなり響き、皆の視線が一点に集中する。


 誰か英会話教室の説明を聞きに来ていない保護者が娘を迎えに来たのだろうか、そう思ってモニターを覗かずに玄関の鍵を開ける。


「お迎えご苦労様で――ッッ!!!!!!!」


 涼が今まで生きてきた中で一番大きな衝撃を受けた(柚が人間だと分かった瞬間は例外とする)。


 思考が絡まって声も出ない。


 まさに心臓を握り潰されたような感覚に陥り、まともに立つ事も難しい。


 思わず扉にもたれ掛かりそうなるが、不思議と足は縫い付けられたように動かず、身体中の細胞全てが震えた。


 過呼吸になりそうになるのを持ち前の強い意志で立て直し、大きく息を吸い込む。


 動悸が激しい。キツかった伊豆のキャンプ場までの峠をロードバイクで踏破した時ですらここまで心拍が乱れなかった。


「ひ、久しぶりね、涼。8年ぶりかしら。……大きくなったわね。…………中に入ってもいい?」


 涼が人目見ただけで酷く追い詰められた相手。





 それは涼の実の母親――黒瀬椿だった。



なかなか時間通りに書き終わりません……。とりあえず頑張ります。

ようやくこの章、涼メインストーリー本番!!


次回

大きな味方

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