表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精の住処  作者: 速水零
155/312

子ども英会話

あらすじ

柚はアルバイト代を獲得した。

 うだるような暑さもどこはやら、少し肌寒く感じる秋がやってきた。


 近年の異常気象のせいか、十月に入ったばかりだというのに十一月下旬並みの寒さを記録し、寒がりの柚は体をブルりと震わせる。


「あー、さむっ。この人形の家エアコンとか付いてないからなぁ。いちいち外出てあのでっかいリモコンいじらないといけないじゃん」


 いかに何十万とする貴族おうちセットでもエアコンまでは付いていない。人形の家に人形が住むためのミニエアコンなど、どう考えても必要ないのだ。


 柚は覚束ない足取りでおうちセットを出て、涼の自室のエアコンのリモコンを探す。


 部屋は綺麗に整頓されており、すぐに見つかった。


「にしても、こんなに寒いのによく走るわね。それであんな凄い体を保てているんでしょうけど……」


 逆ラッキースケベ的な展開があったことはないが、シャワーを浴び終えた後、上半身裸にタオルを首にかけて自室に戻ってくるため、だいぶ見慣れた。


 初めは赤面して目を背けていたが、半年近く一緒に過ごしたので今は平然としていられる。


 涼の身長はまだ伸びており、ついに180センチに到達した。体つきも以前よりもガッシリとしており、彫刻のような肉体美を有している。


 そこらの雑誌のモデルの裸体よりも艶かしいのではないだろうか。


「おはよ。もう起きたんだな」


「うわっ! び、ビックリしたぁ。いきなり入ってこないでよね!」


「いや、ここもともと僕の部屋だから」


「うっ……まあそうだけどさ。涼が部屋に戻ってきたってことは今7時半くらい?」


「その通り。もう少ししたら僕は出るから。今日は第5回目の授業で、また授業体験したいって子が来るし、英会話レッスンのデモもあるから最終チェックしっかり頼むよ」


 第四回までに十四人も入会してくれたが、まだまだ木下塾は始まったばかり。今回は新規入会者獲得の他に、英会話教室開講のデモも行う。


 英会話教室はネットの教育系動画や勉強に使える英語圏のアニメ、珍しくペーパーの教材を用いて行う予定だ。加えて適宜涼が資料を柚に頼んで作成してもらう。


 柚の勉強時間がさらに削られてしまうが、本人は将来のために今やりたいと言っているので頼むことにした。


 涼が柚にPTSDを治してやると宣戦布告した時、柚は先生になるかどうか悩んでいた。


 見た目は幼いが彼女たちは柚よりもずっとずっと大きい上に、そもそもこのまま体が小さいままなのではないかという不安もある。


 しかし、最近画面越しで柚の作った(集めた)教材を子どもたちが一生懸命に解いて笑顔を見せている姿を見ると、やはり子供に携わる仕事がしたいと思う。


 涼がたくさん取り入れている電子機器を用いた教材、授業ならば柚でもできるかもしれない。最近の柚は仕事に対するモチベーションが非常に高かった。


 涼は普段遅刻にならない程度に遅く登校するが、そろそろ二学期の中間テストがあるので早めに登校して、クラスの優等生たちと軽く勉強をするのが習慣となっている。


 お互い授業でわからないところが出てくれば質問し合い、時には授業でもやらないような高難度の問題を解いたりする。


 勉強はただ時間をかければ良いというモノではなく、効率良くしっかり思考を巡らせて解くのがベスト。


 日頃からキチンと勉強を積んでいる涼は今更基礎を勉強する必要はなく、柔軟に様々な問題に対応する力を身に付ける頃合いだ。どの問題に、どの法則が作用しているのか見極め、時には全く別分野と関連させていることを見破らなければならない。


 涼はこの朝の勉強と休み時間の勉強、自宅で少し勉強をするだけで十分成績が維持できる。


 涼以上の化け物が同じクラスにいるのが一番涼のモチベーションに繋がっている。勝てるとは思わないが、せめて並んで恥ずかしくない成績は取りたいと思う。


 木下塾の運営やカフェのアルバイトもあるが、涼は定期テストへの準備を怠らなかった。


 自由に遊ぶ時間がほとんどなく、忙しい日々だが、今まででトップクラスに充実している気がする。柚の精神病を治すために何事にも本気で取り組んだ時期があったが、あの時と同じくらい楽しい。




「さて、じゃあちょっと早いけど、いつもの授業はここまで! これから子ども英会話を始めるよ」


「アルファベットのやつ?」


「そうそうそう。でも、今日やるのはちょっと違う。何が違うかっていうと、みんなが英語をペラペラになるためのレッスンをします。ハロ〜」


「「「ハロぉぉ」」」


 子どもたちはノリが良い。


“My name is Ryo Kinoshita. Nice to meet you! How are you? I’m 17 years old.”


「すごーいっ!」


「あ、わたしそれしってる!」


「マイネイムイズヒメ!」


 英語を少し勉強している子どもは挨拶の定型文を知っていた。


 今回は子ども英会話の案内ということで自己紹介についてだけ話せるようにワーキャー学ぶことにしている。


 涼は一つ一つどんな意味でみんなならどう言えば良いかを教え、発音チェックをしながらみんなで自己紹介し合った。


 やはり初めから土台のある子の方が上手く話せているが、初めて英語を喋るという子ども達はとても意欲的に取り組んでいた。


 そのくらい余裕という子には特別な課題を出す。


 今日の授業はいつもよりもかなり長くなったが、月謝は変わらない。


 涼は家に帰ったらお母さん、お父さんに一回ずつ向き合って話すことを宿題とし、授業を締めくくった。

桜が満開(?)で雪が降っている姿がとても良かったですね。

でもこの世界まだ秋に突入したばかり……あんまりこの感動を書けない涙


次回

衝撃的再会

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ