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妖精の住処  作者: 速水零
154/312

月謝

あらすじ

お金もらいました

「今月いくらもらえたの?」


 第四回の授業と簡単な保護者面談を終えた後、涼たちはのんびりと夕食後のティータイムを楽しんでいた。


 月謝が全て振り込まれる、もしくは手渡しが済み、今月の収入が確定した。


 このお金の一部が柚のアルバイト代となる以上、柚が関心を抱くのも無理はない。


「えーっと、新規入会者が四人で、その方達から合計3万くらいもらえたわけだから、22万5千円だな」


「わー、やっぱりそんだけ稼げちゃうんだ。……で、で! 私のアルバイト代は行くっらになるわけなの!?」


「初回が一万、二回目も一万、三回目が一万千、四回目が一万四千だから四万五千円だな」


 柚のアルバイト代は一授業、入会者一人当たり千円となっている。だいたい一授業あたりに20時間以上かけて教材づくりをしているので、神奈川県の最低賃金を半分以上下回っているが、妖精に一般人の法は適応されないので全く問題ない。


「おぉおお、一気に大金持ちになっちゃったわ。実感ないけど、アルバイトってすごいのね。しかも私が好きなことをやっていただけなのにこんなにお金がもらえるなんて、いいのかしら?」


 柚はこれまでアルバイトをした経験がないので、大量にお金が貰えるのは高校の入学祝いとお年玉くらいである。


 一気に五万円近くも手に入るという事実に高揚感を隠しきれない。


「良くないなら別に給料払わなくたっていいんだからな?」


「よくないよくないよくないっ!? もらう! もらいます!!」


「はいはい。今給料手渡ししてもいいんだけど、現金もらっても使えないよな」


「まあね。外出歩けないし、そもそもお札って私の身長並みに大きいのよ。使いこなせないわ。涼にわかりやすく伝えるなら模造紙を縦に二枚繋げたくらい大きいわ」


 お札も大きければ硬貨も相当持ちにくいだろう。顔くらいの大きさのコインなんて持ち歩こうとも思わない。


「あー、なるほど、それは確かに面倒だ」


「私的には涼に預けて使いたい時にお願いするスタイルがいいわね。なんかアルバイト代をもらった実感が薄くなるけどね」


「そうだな、それがいい。それに、もし僕がいないときに買い物したいときは僕のアカウントから勝手に買ってもいいからな。月謝が入る口座のデビットカード登録しているから柚のアルバイト代の分はしっかり入っているし」


「なるほどなるほど。じゃあそれで。あー、何買おうかしら。この体ってむっちゃくちゃ不便だけど、モノの消費が少ないのが良いところよね。実質百万円分の価値を作れそう」


 食べる量は普通の人間の何十分の1で、柚の好きな化粧品関連も同じくらい少なくて済む。


 保存の効く消耗品ばかり買ったのならそれこそ百万円以上の価値を生むことができるだろう。


「漫画とかデバイス関連は無理だけどな。でもそう聞くとその体も悪くない。一粒何千円みたいな高級果実をお腹いっぱい食べられるんだもんな」


「それもいいわね。もったいないからやらないけど、スイーツ食べ放題は魅力的すぎ。この体ってホント太らないからいくらでも食べられるわ」


 紅茶をグッと飲み干し、涼の元へとトテトテ歩いてお茶菓子のシュークリームをパクッと食べる。


 最近品性を失い始めたのか、柚の手や口元がベタベタしている。小さい口に無理やり生地とクリームを突っ込むからそうなる。


「あーあ、汚く食べちゃってまあ、ほら、拭ってやるからジッとしてな」


 一歳差しかないのだが、柚の幼児化と体の小ささから、先ほどまでお世話していた小学生たちを連想させる。


 涼はティッシュを一枚取って柚の身体を拭いた。


「うぅー、なんかこの身体だと色んな作法を気にしなくていいから、つい本能的に食べちゃうのよね。……恥ずかしい」


「ならしなけりゃいいのに」


 涼がトントンと人差し指で柚の頭を叩くと柚はプイッと顔を背けた。愛玩動物のようで可愛らしい。


 思わず涼は柚の腰を摘んで持ち上げる。


「ほんと、柚って軽くて面白いよな」


「涼も頭良すぎてSNSでちょっとした話題になってて面白いわ」


「僕より柚の方がよっぽど面白いよ。見ていて飽きないし、何より一緒にいて楽しい」


「……わ、私も涼は見ていて面白いから凄く楽しいわ。こうしてアルバイト代ももらえるしね」


「そうか……柚が楽しく過ごせているのなら何よりだよ。……最近、自分が何をしたいか、どうなりたいかとか色々悩んでいたんだけど、柚を見ているとなんだが気が楽になる」


 最近、予定外の木下塾開講、SNSから生まれたモデル関連の勧誘と立て続けに厄介ごとが舞い降りてきていた。


 好きなことのみに全力を尽くして人生を謳歌する。それが涼の生き様だったのに、その定義が崩れかけていて、色々悩むことが多かった。


 まだ、木下塾をやることに対して完全な肯定はないが、小さい子たちがどんどん知識を吸収していく姿を見ると、自分も頑張らなければという気になる。それに人に教えるというのは楽しい。


 同じ趣味を持つ人と語り合いたい、人に教えるのが好き。


(僕は団体行動が嫌いで、一人でキャンプするのが凄く好きだけど、案外他人との接触を求めているのかもしれないな)


 地元や高校の友達と話したり遊ぶのは楽しい。今年は色々な友達と色々なところへ遊びに行ったが、どれも最高の思い出だ。


「…………そ、そうなんだ。……涼も悩むことあるのね。まあ、思い返せばそんなこともあったけどさ。……ちょっと意外」


「酷いなぁ。僕にだって人並みに悩むことくらいあるよ。最近なんて特に酷いだろ?」


「まあ、勧誘ウザかったもんねぇ。私も流石にあそこまでしつこかったり、ストーカーみたいな感じだったりするのわ嫌だわ。でも、解決はしてないけどさ、ある程度収縮したからいいんじゃない? また好きなことやろうよ」


「ああ。とりあえずこれからやることがあるとすれば、木下塾の英語の日の開設だな。柚にはもっと頑張って貰わないと」


「ええぇっ!! あれだけでも結構大変なのにぃ。もう、給料大幅アップしてくれないとやらないからね!」


「分かってる。頼んだよ、相棒」


 涼は再び人差し指で柚の頭をグリグリと撫でまわした。


 ジトーっと柚が視線で不満をぶつけてくるが、涼は無視して紅茶を口に入れた。

新型コロナウイルス関連で予定がめちゃくちゃになりました涙。

しっかり予防して検温もしてますが、かかるときはかかっちゃうモノですよね……


次回

英会話教室

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