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妖精の住処  作者: 速水零
153/312

知り合いバレ

予告詐欺注意

あらすじ

勧誘多し

第四回の授業も終わり、ようやく木下塾も開校してから1ヶ月が経とうとしていた。


 高校は定期テスト期間に入り始めようという頃だが、教材作成は柚に任せているので、しっかり勉強と仕事を両立できている。


 柚も教材作りに慣れてきたのか、今までよりも少ない時間で完成させられるようになり、それでいてクオリティも高くなっていた。


 大手の塾では自分たちで教材開発をするところも多いが、涼たちのように二人でやりくりしていると、そんな余裕はない。


 教材作成といっても無数にある教育関連のアプリや書籍から自分たちの指導の趣旨に合ったものを引っ張ってくるだけだ。


 だが、それが案外難しい。


 子どもは強制されることを嫌がり、集中力も長続きしない。誘惑に負けやすく、注意力も散漫だ。この塾を通してどんな大人になってもらいたいか、そういう目標を立てて授業の筋道を立てなければならない。芯を一本化するのはなかなか大変だ。


 涼みたいになんでも超高水準でできる子どもをこの塾で育てるというのは絶対に無理なので、この塾では何をするにも必要となる基礎、根底を磨くことにしている。


 授業の先取りを進めるというよりも、頭を柔らかくしたり、思考力、計算力、精読力を上げるような土台作りをメインに考えている。


 そして、そんな授業を始め、ついに月謝を頂くことになった。


 涼自身のデビットカードの口座に振り込み、もしくは手渡しでお金を払ってもらう。


 手渡しを希望した親達に頂く際、涼は塾の感想を聞いた。


「すごくよかったわ。娘はここに来るのを楽しみにしているし、あんまり勉強をしているって感じはないわね。でも宿題の二十五マス計算はしっかりやっているし、英語でやった単語をどんどん吸収しているわ」


「確かに茜ちゃんはこの短期間でだいぶ伸びてきていると思います。アルファベットはみんな大文字小文字できるようになって英単語を簡単なのは教え始めました。結構皆さん僕に英語のレッスンもさせようとしますよね」


「んー、みんな涼くんの塾が良いって思っているから習わせたいのよ。クラスの友達みんな来ているからモチベーション高いしね。それに、涼くん英語の発音むちゃくちゃ良いし、ペラペラなんでしょ?」


 涼は両親の教育のおかげか、英語で苦労したことはない。バイリンガルというほどではないが、涼は英語を苦なく喋れる。


 本当はもっともっと幼少期に英語を刷り込ませるべきなのだが、今からでもなんとかなるだろう。涼は自身の経験から最短の英語習得法を伝えられる自信がある。


 クラスの友達みんなが同じ塾に通っていればやる気が増したり競争意識を与えやすくなるので、奥様方は涼に英語の教育も任せたかった。


 無論、各家庭で英語教育を進めるという人も多くいる。

 

「まあ、そうですけど……英語を本格的にやるとなると時間が足りないんですよね。これ以上は一回あたりの時間増やせませんし、日にちを増やすしか無さそうです。そうなったとして、英語用の日にちを増やしても良いんですかね?」


 今軽い面談をしている恵とはバーベキューを一緒にやった仲なので、他の保護者よりもフランクに話すことにしている。


 相手の性格を見極めて口調を変えるのは涼お得意の世渡り術だ。本人は認めたくはないが、この才能は遼の父親譲りである。


「いいんじゃない? 英語に関しては他のお母さんによっては別にうちでできるから他をやってほしいっていうところもあるだろうし、月謝をプラスして別日にもやるのがいいと思う」


「なるほど……わかりました。グループで報告しておきますね」


「お願いね〜」


 話が区切れたところで恵は面談を終了させようとしたが、ふと気になっていたことを思い出す。


 少し浮いた腰を深く下ろして、まだ残っているコーヒーに手を伸ばす。


「そうそう涼くん」


「なんですか?」


「モデルやるってほんと?」


「……えっ…………ど、どこからそんな話が出てきたんですか?」


「んー、まぁ私の友達にファッション雑誌の編集者がいるんだけどさ、この前久しぶりに一緒にランチしていたら、涼くんの写ったネット記事見せてもらったんだよね。むちゃくちゃ逸材でうちの雑誌でも専属になってほしいって話を持ちかけたんだけど、全然歯牙にかけてもらえなかった〜とか。他の大手モデル事務所もたくさん勧誘してて、色々な業界関係者が今目をつけているんだけど、靡いてくれないって頭抱えているみたいよ。ダイヤの原石を放って置けないとも言ってた」


 恵は社交性豊かな若奥様で、様々な業界に知り合いがいる実は凄い女性だ。


 世界は人の想像より遥かに狭い。


 涼に関する記事は膨大なネットの海の中の一雫分しかないのだが、不幸なことに知り合いに見られてしまった。


「……そんなにあの記事って人気なんですか?」


「わかっているくせに惚けちゃって〜……人気なのは涼くんの方でしょ。SNSのフォロワー、最近1万人超えたでしょ。それに自分の投稿がいつもよりずっと拡散されてない? 今や知る人ぞ知るイケメン一般人に名を連ねたと言っても過言じゃないわ」


 勧誘騒動以外だけではない。自分の想像を遥かに上回る影響があのネット記事を通して起こっていたようだ。


「はぁ。そうでしたか。はっきり言っておきますけど、僕は別にモデルになるつもりはありませんよ。この塾の運営で忙しいですし、他のアルバイトや勉強もあるので……」


「まあそうよね。涼くんには茜を育ててもらわないと困るわ。あの子最近勉強に前向きになっているからチャンスなのよ」


「……恵さんが一番に茜ちゃんを育てるんですよ」


「もちろんわかっているわ。教育に関しては涼くんのところに一任します! 色んな人を見てきたけど、涼くんほど信用に足る人は中々いないわ。涼くんと知り合いだってことはその友達には言わないでおくね」


「そうしていただけると助かります。それでは、また来週もよろしくお願いします」


 涼は自分のことがどれほど広まり、浸透しているのか、まだわかっていない。


 これはまだ序の口でしかない。

路線を変えたので予告とは違う流れにしました。

情報通のお母さんってクラスに一人はいますよね笑。


次回

月謝

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