表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精の住処  作者: 速水零
151/312

ダイヤの原石

あらすじ

涼がネット記事に掲載された

『超絶イケメン一般高校生集第八弾!!』


 コンセプトはタイトルの通り一般高校生のイケメンを取り上げる企画で、第一弾は大きな反響をよんだ。


 第二弾、第三弾と人気が続いた企画だが、五弾を超えるとその勢いは大きく失速、十弾まで続けられるかも怪しい様子だった。


 記事を書いているのは有名な雑誌を出版している会社、というわけではなく、そこそこに人気のあるネット専門のWEBメディア。


 紙媒体の記事の収入が下火となった今、ネット記事限定の会社は多く存在する。


 数あるファッションメディアの中で特出する為には人気記事が必要だと考えたその会社は、膨大な情報の砂漠を漁り、砂金を探そうと躍起になった。


 SNSで既に人気を博している一般高校生をあげるのは主旨に反する。これから盛り上がりそうな逸材のみを祭り上げてこそ意味がある。


 しかし、そんなダイヤの原石がそうゴロゴロ落ちているものでもなく、時間が空けば読者は離れる。


 社名は第三弾までである程度広まったが、一定期間の間で記事を上げようとして、しばらく品質の低い記事が続いた。


 第十弾までは進まず、他の企画をメインにシフトしようと方針を変えた頃、あるSNSアカウントがが思わぬ方向から目に止まった。


 ベンチャー思考に溢れた編集長が、起業したと報告する涼を発掘する。


 編集長はすぐさま自身主導で涼のことを漁った。


 投稿された写真を見ればすぐにこれがダイヤの原石だとわかった。


 垢抜けた投稿以前の投稿を見るに、涼は聡明だが、あまりこちらの業界に興味がないことが窺える。


 なんの心境の変化か知らないが、人はそう簡単に変らない。


 編集長は砂塵の砂でピラミッドを作るが如く、慎重に事を進めた。


 思った通り涼からはダイレクトメールの返信の端々に興味のなさが現れていたが、結果的に記事にする了承を得た。


「これは来ますね! 編集長!」


「ああ、これは第一弾と同じ――いや、その倍以上の反響を呼ぶことだろう」


「次の弾の記事は取りやめて、すぐに涼くんを前面に出した記事を作成するぞ。また私が主導で取り掛かる。彼は高校生とは思えないほど達観しているからな。一筋縄じゃいかないだろう」


「はい、よろしくお願いします!」


 涼は実際に上がった記事を読んだだけで、業界に走った戦慄を知らない。


 テレビの街角インタビューに声をかけられたくらいの気分でいた。


 下火になり始めたWEBメディアとはいえ、一定数のマニアな読者がついており、新規読者も増えている。涼の記事は一気に広まっていった。


 各モデル事務所のスカウトたちは新たなスターの発掘のため、この記事には必ず目を通している。


 第一弾、第二弾の一般人は大手事務所にスカウトされてモデルとなった。第三弾で紹介された一般高校生も大手ではないが、新進気鋭のモデル事務所の所属となる。落ち目の企画といえ、ど他の事務所を出し抜いてスターを育成するためには目を離すわけにはいかない。


「鈴木さん、例の第八弾上がってますよ」


「ん? あーあれ超絶イケメン一般高校生集だったか、ありがと。こんなスパンでスター候補を無名から探し出し続けるなんて無謀だと思うんだけど……もしすごい子がいたら悔やんでも悔やみ切れないからね」


 鈴木と呼ばれた入社15年目のベテランに半分体を突っ込んだ中年の男が、記事を表示したタブレットを受け取る。


「そうっすよね。あそこの社長はかなりのやり手だと聞くのでこの次が最後なんじゃないですか?」


「そうだな。次に何をするかはわからないが、この企画で得た一定数いる読者を活かした何かを考えているかもな。あの人頭いいから、俺みたいな目と勘だけで生きてきたヤツには到底理解できないことをやってくれるだろう……ッッ!!!!」


 そして、第八弾が上げられた瞬間、スカウトたちに右ストレートを顔に入れられたほどの衝撃が襲ってきた。


 第一弾を見た時はよく連れてきたものだ、と口笛を吹いて高みから見下ろしている気分だったが、今回は言葉も出ない。


「鈴木さん、どうしたんすか?」


「…………」


 鈴木は後輩の声が聞こえないほど集中して記事を読んでいた。


 第七弾を渡した時はオフィスに備え付けられているコーヒーメーカーで淹れたブラックコーヒー片手に、のんびり画像を見ながら談笑していた。


「…………おい、これ………まだ、読んでないなら今すぐ読めッ!!」


「え、あ、はい!」


 鈴木がここまで強い口調で話すのは何年ぶりだろう。新人や大きなミスをした相手ならともかく、ただの一ネット記事相手にここまで心を乱している姿は初めてみる。


「……ッッ!! ………………これは、ヤバイっすね……」


「ああ……いや、ヤバイなんてもんじゃねー。まさに数年に一人の逸材だよ。顔が良いってのももちろんだが、漂わせている雰囲気が異常だ。今まで長いこといろんな奴を見てきたが、こんなタイプは初めてだ」


 涼の評価はどの事務所でも似たり寄ったりで、過去一番のコメント数を誇った。


『むっちゃイケメン過ぎて死ねる』


『これで高校生ってマ?』


『SNS速攻フォローしました! 最高過ぎ!!』


『こんな神を発見するなんて編集部マジ有能。これから一生読むわ』


 ほぼ打ち切り企画と成り果てていた一般人発掘記事は人気を取り戻し、さらに知名度を上げる。


 涼の画像は一気に拡散し、話題が話題を呼んだ。


 それは、涼が世界に発見された瞬間だった。

ちょっと時間過ぎちゃいました……

今回涼は全く出てきませんでしたね。前も言いましたが、こういう裏の話好きなんですよ。


次回

スカウト

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ