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妖精の住処  作者: 速水零
136/312

キル

あらすじ

まずは光をキル

「殺られたッ!!」


 光がヒットされたことを叫ぶ。


 チームの他のメンバーが光の撃たれた位置とその前に聞こえた微かな電動音から涼の位置を検討付けるが、その判断以上に素早く涼は動き出し、闇へと消えていった。


「やられたね」


「ああ、こっちも久しぶりで感が鈍っているせいで、光がやられたことに動揺して位置を特定されちまった。翼、いったん俺らは下がって涼がこちらに出向くのを待つことにしよう」


「そうだね、今深追いするのは危険だ。体制を整えよう。お互いがやられたときにすぐカバーできる距離感を保って身を潜めるんだ」


 希と翼は涼を追わず、自身のスポット付近のよく使っていた茂みに隠れた。


 よく使われたためにバレやすいところではあるが、逆によく使われるということはバレた上でも得があるということ。


 この茂みは小さな坂の上にあり、威力の弱い18歳未満でも扱える電動ガンでは思うように飛ばせられず、重力の影響も大きい。また、この茂みはとても深く盾の代わりにもなる。


 希は世界で一番使われていると言われる旧ソ連の名機AK47(アサルトライフル)をメインに、ハンドガンはコルト・ガバメントというこれまた名機中の名機、拳銃といえば誰もがまず想像するであろうフォルムをした電動ガンを使っている。


 希らしいオーディナリー装備で腕はそこそこ。たまに良い成績を出すこともあれば、すぐに殺られることもある。


 翼は体の大きさが女性並みだからか実戦的な銃身の短いサブマシンガン、光の愛用しているデザートイーグルと同じIMI社の名機UZIを装備している。


 翼もアサルトライフルを扱えなくはないが、翼のスタイルはその小兵っぷりを活かした機動力。そして隠密行動時の狙撃にもサブマシンガンを使用していながらかなりの定評がある。


 翼のハンドガンはこれまた小ささ目的で買ったグロッグ18C。サバゲー界(十八禁解禁の場)ではグロッグ18Cは鬼のような活躍を見せる。


 小学生の頃祭りのクジで当てたハンドガンと似たチャッチさがあるが、性能は折り紙付きだ。


「涼はどこから来ると思う? どーぞ」


「そうだね。涼ならもう僕らがこの辺りに隠れているって検討は付けているだろうから、大きく回って背後からなんてのもあり得るかも。どーぞ」


「ここ後ろからの奇襲に弱いからな。移動するか? どーぞ」


「いいや、今下手に動くのはまずい。背後から狙われたらすぐに茂みを飛び出して坂を滑り降りるしかない。深い茂みだから手間取るだろうけどなんとかなると思う。どーぞ」


「わかった。もう少し周りを見渡しながら待つとしよう。どーぞ」


 二人は無線を使って作戦会議していた。大声を出せば会話できる距離にいるがそんなバカな真似はしない。無線機を使うのは雰囲気づくりにも良いから積極的に使っていく。


 二人が自陣近く――両者全滅するのが勝利条件なので陣の意味はないが――で潜んでいるころ、光をキルした涼はフィールドの範囲ギリギリの境界内側をひっそりと歩いていた。


「この次はどうするの?」


「ああ、多分あの二人なら勝つために一人でも生き残れるようよく使う隠れ場所にいるはずだ。あそこに二人隠れられたら分かっていても二人を一度にキルすることは難しい」


「ほとんど詰んでない?」


「二対一はそういうものだ。今端から攻めているが、また一人殺したらまた逃げよう」


「わかったわ。でもそれならなんでこんな遠回りするの? 涼の足ならもっと楽に近寄れるんじゃない?」


 翼達のスポットはフィールドの中でも中央付近にあり、横や背後から攻めるにしてももっと近道がある。


 涼はもちろんそのルートを知っているが、わざわざ外周付近を行くわけがあった。


「翼達がいるかもしれない茂みを攻撃するにもまた定番スポットがある。そして、それを返り討ちにする場所もある。まだ居場所が確定していない以上、絶対に背後に回られないここが一番安全だ」


「へえ、結構走るポイントとか気にするんだ。案外先に見つければどうとでもなるものだと思ったけど」


「確かに先に見つけ、素早く撃ち抜いて即離脱、それができれば地の利なんて大きな問題じゃないように思えるけど、実力が拮抗していれば地の利で勝勢はひっくり返るものさ」


「ふーん。まあそんなアニメもあったからわからないでもないけどさ。……具体的にどう攻めるの?」


「まず叩きたいのは翼だ。体が小さいから狙いにくいし、小さな茂みにも潜めるから一対一でも厄介な敵だ。希をオトリに僕の背後から奇襲することだってできる。希はアサルトライフル持ちで射程はあの三人の中で一番広いが、サシでやれば僕が十中八九勝てる」


「でも、こっちから攻めたとき、その翼さんが近くにいるとは限らないわ」


 涼の想定している希と光の隠れ場所は互いに少し離れており、フィールドの端から攻めたときどちらか一方が近く、一方が遠い道となる。


「ああ、だからまず柚が先に覗いて見てくれ。もし、一人だけしか見つからなかった時はそれが予想通り翼が隠れていたとしても撃たない。希の位置によってはこっちが危ないからな」


「なるほどね。とにかく相手が予想していないところから偵察して、二人を殲滅できる筋道が立ったら攻めるわけね」


「そういうこと。でも一人だけ見つけた時、まわりにもう片方がいないとなれば攻めるぞ」


「はーい」


 涼はちょうど良いところまで外周部を進み終え、中央へと進撃して行く。


 獣道の脇3メートルの辺りを並走しながら物音を立てずに小さな丘を登る。


 ベストの中の予備マガジンからバイオ弾(生分解性プラスチックのBB弾で、普通の弾と違い一ヶ月ほどでバクテリアに分解される特殊な弾)がガチャガチャ擦れる音がする。始めたばかりの時はこれで敵に居場所がバレるのではとヒヤヒヤしたものだ。


 満月に近い月明かりが黒尽くめの格好をした涼を照らし、すぐさま曇天が涼を隠す。


 丘といっても山陵のように頂点からも道が続き、中央付近の翼達のあたりが特に高い位置にある。


 涼が斜面に伏せて身を潜めると、柚を取り出して近くの細い木に登らせた。


「なんか本当に偵察用の動物になった気分」


 柚は見た目以上に身体能力が高く、スマホ並みの軽さを存分に活かして軽々と木に登っていく。


 仮に翼達が柚の影も見つけても稀に見かけるリスだと勘違いするだろう。


「んー、動く影はなし! あ、あれ……って光さんか。涼の言ってた話だと確か深い茂みで、あの光さんの近くの――あ、いたいた。こっちの近くの茂みにいるのはんー、銃の特徴言われてもわかんないし暗くて判断しづらいわ。……あ、よく見れば奥に小さい人がいる。遠近方じゃなさそうだし、あれが翼さんね」


 涼の予想通りの位置にいる二人を発見した柚は涼の元に戻った。小さい体のおかげで物音もほとんどせず、翼達は柚に気がつかない。


「そうか、あの二人が前に組んだ時こっち側に翼がいたから今回もと思ったが、逆か。なら、今回のために用意した秘密兵器を試してみるか」


 涼はベストの中にある秘密兵器を撫でながら、方向転換し、敵陣に迫っていった。

こういう話書くの難しいですね。僕が昔十禁のころにやった時はもっと泥仕合が展開されてましたね。

十八禁のガスガンを登場させられないのがもどかしいです。アレならもっと安定して飛距離も音もブローバックもあって楽しいんですが……


次回

奇襲

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