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妖精の住処  作者: 速水零
132/312

妖精のおしごと

あらすじ

革命のエチュードを弾いた

「涼ってあの子関連で面倒なこと起こさないことないわよね。最近私の影が薄くなっている気がするわ」


 若奥様方が帰ったあと、涼と柚はのんびりベッドに寝転がっていた。


 それぞれスマホとタブレットでネットサーフィンをし、英気を養っている。


 柚が犬用ベッドから顔を覗かせると、涼は憔悴しきっており、そのまま寝落ちしそうだった。

んは

 柚はリビングでの様子をほとんど聞こえていないので、何があったか分からないが、涼の事なので面倒な目にあっているのだと思う。


「そうなんだよな。次から次へと面倒事といま仕事というかが増えている気がする。貴族おうちセット買ったり、バーベキューしたりって今年はずいぶん変な年になったなぁ」


「変って私のことも入ってないでしょうね」


「代表格が何言ってるんだ。変な体してぇ」


「むかっ。涼、言っていいことと悪いことがあるの知ってる?」


 柚は犬用ベッドを飛び降りて涼のベッドに飛び跳ねてくる。 


 小さな動物がやってきたような感じだが、この妖精の顔に愛らしさや無邪気さはかけらもない。般若のような面をしている。


「そう怒るなって。こういう面倒な出会いやイベントの裏にはとても良いことが眠っているもんだ。……ほんと、どんな出逢いにもな」


「良いこと?」


「ああ、今回は柚が今一番渇望しているものが手に入りそうだ」


「一番? ……スタイル?」


「そんなもの願っているのかよ、庭で運動でもしたらどうだ? 食事も甘いもの減らしてあげるから」


「やっぱそれなし! 私もうグラマーだから!」


 柚は精一杯のエロいポーズをとって見せるが、涼にはポーズをとったアニメフィギュアにしか見えない。欲情しそうもない。


 馬鹿にしたように見つめる涼だが、柚のプロポーションは出逢ったときよりも良くなっている。少し体つき全体が細くなり、出るところがより強調されてきた。


 頭がおかしいんじゃないかと思わせる巨乳ヒロインのフィギュアには届かないが、脳内で縮小したリアルな女子高生の平均と比べるとだいぶ優っているだろう。


「柚が今一番欲しいのは金だろ」


「えっ! お金もらえるの!? 欲しい欲しい、ほんとマジそれ一番欲しいヤツだわ! 最高!」


「女って金を見るとすぐ人が変わるよな。小学校でも中学校でもそんなヤツいたわ。……金が手に入るって言っても、正確には柚ができそうなバイトがあるってだけだぞ」


「へえ、よくバイトなんてあったわね。どんなの? 言っておくけど、私ちまちました作業苦手なんだけど」


 涼も柚の性格上細かい作業はできても、機械作業をし続けることはできないとわかっている。


 もとよりそんなアルバイトを探してはいない。


「いや、教材作りのアルバイトだ」


「教材作り? 何そのバイト? 聞いたことないんだけど」


「簡単に今まであったことから説明するぞ」


「ええ」


「今回いろんな子の母親達が来て、軽く話してたんだが、その話題の一つに僕が姫の勉強を見ていて、たまに茜や楓も教えているというのが出てきた」


「まあ、ありそうね。……ってまさか…」


 柚はもうこの段階で気がついたようだ。元から大きかった目をハッとより大きく見開く。


「そう、他の子も見ることになった」


「あー、なるほどね。それで時間のない涼に代わって私がその教材作りをするってことね。なに、それお金出るの?」


「そうなんだよ、タダで教わるのは申し訳ないからって塾を作ることになった」


「ぇ…………それマ?…………過去最大に大きな厄介ごとね。それって起業するってことでしょ?」


「そういうこと。僕はそういうこと詳しくないけど、あの母親達の中に税理士の旦那を持った人がいるからなんとかなるだろ」


「だからって起業だなんて……普通にお金もらうんじゃダメなの?」


 そう思う方が一般的だろう。


 しかし、涼の相手は全く一般人ではない。


「月謝代が多すぎて税金取られるレベルなんだよ」


「ええっいくらいくら!?」


「一人当たり一時間2500円、一日二時間の週一日だから長期休みはなかったとしても一年で150万は大きく超える」


「ヤバっ!!」


 柚の今日一大きい叫び声が部屋中に響き渡る。この小さい体でなぜそんなに大きな声が出せるのだろう。


「え、え、マジで150万超え!? あんな子達週一教えるだけで!?……やっぱ金持ちは違うわぁ。頭良いと稼げるって本当なのね」


「そういうことで、こんだけもらえるし、時間のかかる教材選びや教材作りは柚に任せる。大体一回の授業1万円でどうだ?」


「ええ、やるやる、やるに決まってんじゃん!!任せなさい!」


 美味しい話を聞いて、柚は力強く了承した。


 面倒ごとだとか厄介ごとだとか言っていた柚だが、この話の美味しさを聞けばむしろ得だと思う。羨ましい。


「良い返事だな。やる気十分じゃん」


「あったら前よ。辛い仕事じゃなくてたくさんお金がもらえる。マジ最高過ぎて絶句レベル」


 無茶苦茶喋るやんって言いたかったが、ここはなにも言わない方がいいのだと涼は学んでいた。


「……っと、いうことで、初授業は来週水曜日の四時からだ。どんな教材を作るかまだ手探りだけど一緒に考えて行こうぜ。……さて、じゃあこれから先バイト頑張って稼ぎまくろう!!」


「おーっ!!」


 二人は涼のベッドの上で大きく右手を天に伸ばす。


 その瞳は金を得る欲望に満ち溢れていた。

顰蹙ひんしゅくを買うでしょうが(?)今沖縄に遊びに来ていて無茶苦茶楽しんでます。

書く気分が落ちてきますが、新鮮な出会いもありますし、しっかり頑張ります。


次回

王子さまのご友人

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