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妖精の住処  作者: 速水零
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若奥様方来襲

あらすじ

涼を見守り隊が増員した

「えっと……「昨日遊びにきた姫の友達のお母さんたちが、涼くんにお礼の挨拶をしたいと言っているのだけど、いつなら都合がいいかしら?」……え、なんで行くのが確定しているんだ?」


 涼が家に帰り、自室のベッドでに腰掛けてSNSをチェックしていると、愛のアカウントからのダイレクトメッセージと、見知らぬアカウント十人からフォローされていた。


 最近フォロワー数が急激に増えてきたので、いきなり十人増えていてもそこまで不思議ではないが、かなり年齢層が高い。


(愛からもフォローがきているということは、このアカウント達は姫のクラスメイトの母親って可能性が高いな。で、なんで? 僕の素性というか、人間性を調べたかったのか? 面倒だなぁ。でも呼ばない方が後々面倒なことになりそうだし、呼ぶか……)


「あー、ほんとだ、涼のアカウントおばちゃんっぽい人たちからむっちゃフォローきてるじゃん。おもしろ。やっぱり昨日の少女達のお母さんかな?」


 柚は涼のスマホを盗み見るとそのままベッドに転がってけらけら笑い出した。おばちゃんっぽいという言い方は失礼だが、涼もパッと見た時そう思ってしまったので何も言えない。


 柚も涼と同意見ということはほとんど確定だろう。


「そうだろうな。どうして僕のアカウントなんかフォローするんだろう。柚は理由わかるか?」


「えー、どうせ涼のファンになったーみたいな理由でしょ。茜や楓?のお母さん達だって涼に熱をあげてるようだしさ」


「ファンって、そんなアイドル活動みたいなことしてないけどな。SNS投稿ならともかく」


「いやいや、お母さん達の世間話で涼の情報は広く伝わっているだろうから、結構ありえると思うわよ。スペックを聞いたら普通にどんな人か興味持つし」


「そんなもんなのか。とりあえず、うちに来たいって言っているし一度会ってみるかなぁ」


「こういう時って何かしら面倒な目に遭うのは気のせいかしら」


 柚が我関せずと言ったようにゴロゴロと転がった。実際柚は茜達に会ったことはない上、最近姫も柚と遊ぶ頻度が落ちてきた。


「それを言うな。なんかのフラグが立つだろ」


 だが、涼も柚と同じことを思ってしまった。


 そして、涼はまだ少しだけ夏休みがあるので、奥様方のことを考えて平日の昼間に呼ぶことにした。


 愛とはringで繋がっているが、暗に大量フォロワーが誰かを伝えてくれためにSNSのダイレクトメッセージで送られたので、返信もダイレクトメッセージで送る。


 何人も来ることになるので色々と予定を合わせるのは大変かと思ったが、すぐに返信がきた。


 涼の指定した日に新しいフォロワーの若奥様方が全員やってくるらしい。


 中には姫が連れてきた友達以外の母親もいるが、気にしないことにした。




 数日後、涼の家に多くの人妻が集まる。


 やってくる人数はあらかじめ伝えられているので、新たな椅子の用意もしているが、窓から集まっている姿を見ると緊張する。不手際を責められるとは思わないが、圧力が大きい。


 涼はインターホンの応答に答えず、直接玄関の扉を開いた。


「ごめんね、押し掛けるように来ちゃって」


「ええ、突然のことで驚きましたよ、愛さん」


「やっぱりこの子が涼くん?」


「そう、イケメンでしょ。写真で見るよりずっとカッコいいわよね」


「うんうん、これはあの子達もお兄ちゃんお兄ちゃんとはしゃぐわけだわ」


 涼の目の前には愛を含め十人の奥様方がズラリと並んでいる。


 この地域に住んでいる人が多いからか、涼が手入れしている庭や高級セダンを見て感心はしても、驚きはしなかった。


 若奥様方は涼の顔を見てアイドルに出会ったかのように盛り上がる。


 まだ残暑が生きているのに熱くならないで欲しいものだ。熱が伝播してきている気がする。


「立ち話もなんなので上がってください」


 ゾロゾロと涼の家に若奥様方が入っていった。




「どうぞ、コーヒーです。フレッシュはこちらをお好みでお使いください」


 紅茶を淹れようかとも考えたが、人数が多いのでコーヒーメーカーに働いてもらった。


 新しいコーヒー豆の袋が勢いよく減っていく。涼は豆は親の仕送りで買って良かったと思った。


 あたりを観察してみると、涼が昔よく接していたような上級市民のような人も見られた。所作の一つでよくわかる。


「美味しいわね。どこの豆を使っているのかしら」


「そうね、私もどこかで飲んだことあるような気がするけど名前までは思い出せないわ」


「男子高校生の一人暮らしなのに家の中が綺麗だし、こういうもてなしもしっかりしていてすごいわね」


 主婦達は色々と涼の感想を語り合う。本人は居心地が悪いのを微塵も見せずに、持ち前の演技力で笑顔を固定する。


「そうそう、この前はうちの娘がお邪魔して悪かったわね。帰ってきてからずっと涼くんの話をしていたわ」


「私の娘もそうだったわ」


「私の娘は今でも涼くんの話題を出すわ」


「うちの娘は勉強嫌いだけど、この前来たときはしっかり宿題もやって、それでいて楽しくできたらしいわ」


「茜もそんなところあるわね」


「姫も涼くんのおかげで勉強が捗っているわ」


「そうなんだ。うちの子もやってはいるけど、最近ゲームとかスマホにハマって前ほど勉強しなくなったのよね」


 話の内容がどんどん娘の勉強にシフトしていった。こうして長々と井戸端会議が展開されていくのだろう。


 涼に挨拶に伺ったはずなのにもう置いていきばりだ。涼は若奥様達を尻目に大量に減ったコーヒー豆を思い浮かべ、新たにどこの豆を買おうか検討する。


 若奥様方と言っているが、年齢層はバラバラで四十を大きく超えている人もいれば三十前後の愛のような人もいる。高所得世帯者は結婚する年齢が高いのだろうなと思う。


「ねえねえ、涼くんって模試で全国18位になったってホント?」


「……え、ええ。夏前の模試がそうでした」


「すごいわね」


「ほんとほんと、まさに天才」


 恵から話を聞いていたが、なんてことないように涼が肯定したのを聞いて主婦達は再び盛り上がる。


「その成績ならどこの大学でもいけそうね。将来何になりたいのかしら?」


「特に考えてはいませんが、理工学部に入ると思います」


「姫ちゃんにどのくらい勉強を教えているのかしら? 私の家も家庭教師を雇っているけど、あまり勉強に前向きにならないのよね。ちょっと羨ましい」


「うちも家庭教師は付いているけど、芳しくないわ」


「楓も涼くんに教えてもらった時が一番学べていた気がする」



 そして、話の話題は変化する。



「涼くん、うちの娘の勉強見てくれないかしら?」


「いいわね! 私も前からお願いしたかったのよ! 茜も涼くんに教えてもらえるなら楽しく勉強しそうだし」


「もちろん、塾のようにお金は払うわ」


「個人経営の塾のような形でできないかしら?」


「涼くん高校生だけどすごく頭が良くて真面目だから私も安心して娘を任せられるわ」


「……涼くん、どう?」

〜だわって口調使いやすいし、キャラが合いますね。前話は友達のように振る舞っているので抑えましたが、涼の前ではちょっと変わるようです。

貴族のようにメリットがあるでしょ、やらない?みたいな押し付けが強いですね。それでいて悪気がないのが立ち悪い。コワッ。


次回

木下塾…?

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