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妖精の住処  作者: 速水零
128/312

見守り隊増員

あらすじ

幼女達が帰った

「ねーねーママー、きょうねー、カンペキチョージンにあったの!」


「おかあさん、おかあさん、きようね、ひめちゃんのいえにあそびにいったら〜」


「おかあさんしってる〜? きょうあそんだひめちゃんにはね〜」


「きょうは涼お兄ちゃんとあそんだんだー!」


「涼お兄ちゃん、涼お兄ちゃん……」


 姫の家から帰った新たな友達たちは、それぞれ母親に涼のことを大きく誇張して話す。


 テレビに映った俳優を指差して、絵本を取り出して王子さまを指差して、大きな身振り手振りをし、まるで異界の王子さまと会合したかのように語った。


 当然、母親たちは涼のことを知らず、ただ夏休み明けにできた新しい友達の家に遊びに行ったとばかり思っていた。


 だが、娘たちの第一声は姫についてではなかった。


(((((涼お兄ちゃんって何者?)))))


 母親たちはそれぞれ違う説明を娘から受けていたが、涼への印象は皆同じだった。


「あ、恵さん。おはようございます」


「おはようございます。珍しいですね、こうして近所のスーパーで出会うなんて」


 新たな友達の母親の一人が買い物に出かけていると、同じく買い出しをしていた茜の母親、恵と出くわした。


「そうですね。案外近くに住んでいてもなかなか出会いませんもんね」


「はい」


「そういえば、昨日は茜ちゃんも姫ちゃんのおうちに遊びに行ったんですよね?」


「ええ、夕飯までご馳走になって、娘も大変楽しかったようです」


「私の娘も相当楽しかったのか、寝るまでずっとその話で持ちきりでしたよ。それで、気になることを娘が言っていたのですが、涼お兄ちゃんって知ってます?」


 茜が姫と夏休み前から仲が良かったのは知っている。ならば娘の言っていた涼お兄ちゃんについても存じ上げていると思い、恐る恐る聞いてみた。


「知っているもなにも、一度バーベキューに招待していただいたことがあります」


「ああ、たしかそんなことも言ってましたね。涼お兄ちゃんとはどんな方なのでしょう。どうも娘の話だと要領が得なくて」


「まだ小学校一年生ですもの。話がわかりにくいのはどこも同じです。でも、涼くんのことを語るのは結構複雑ですね」


「複雑……ですか」


 茜は少し渋ったような表情を浮かべるが、よく見ればその瞳はアンバランスなほど輝いている。たしかに表情は複雑だ。


「個人情報にもなるので詳しく言うことはできないので、当たり障りないことになりますけど、ご容赦ください」


 快活でおよそ娘と似た性格の恵にしては随分と丁寧な話し方だ。半分よそ向きであるが。


「それはもちろんです」


「はい。……涼くんは姫ちゃんの隣の家に住む高校生で、なんと一人暮らししているんですよ!」


「ええっ! 高校生で一人暮らし!? たしか姫ちゃんの隣の家はアパートでも学生寮でもなく、大きな一軒家ですよね」


「ええ、その大きな家に一人で暮らしています。親が海外に転勤されているとか」


「なるほど」


「それで、ですね。涼くんはあの翔央高校に通っていて、その中でも成績は学年トップクラス! この前私が見せてもらった模試の成績なんて全科目の偏差値が――」


 はじめに言った個人情報保護は何処へやら、恵は涼の情報を余すことなく伝えた。


 買い出しに行っている途中なのはずが、いつのまにか近所のカフェへと場所変更が行われ、加えて途中参加者が度々増えていった。


 そして重要参考人の愛も駆り出され、たまたま近くにいた花と共に涼の魅力を語り出す。


 その姿は韓流ドラマの主演俳優談義のような様相を呈していた。


 涼の写真は「周りには絶対広めないでくださいよね」というこの世で最も信用できない約束の下拡散していった。


「ねえ、涼くんってもしかしてSNSもやっているんじゃない?」


「もしかしなくても高校生なんだから私たちよりも詳しいでしょ」


「じゃあアカウントだって簡単に見つかるかしら」


「別にSNSを覗き見るのは犯罪でもなんでもないもんね」


「私こういうの得意だから調べてみるわね」


 奥さん方の口調はだいぶフランクになり、生情報だけでなく、ネットからも情報収集するようになった。


 ここでここ数ヶ月間のSNSの勉強が悪い方向?に出てきて、すぐに特定される。


 涼のもとには見知らぬアカウント十人分(涼の家に遊びにいっていない母親も増えた)からフォローがきた。


 そして、愛のアカウントからダイレクトメッセージで「昨日遊びにきた姫の友達のお母さんたちが、涼くんにお礼の挨拶をしたいと言っているのだけど、いつなら都合がいいかしら?」と送られてきた。


 挨拶してよいかではなく、いきなり予定を押さえるあたりやはり愛は抜け目ない。


 涼は基本的に学校内でSNSの閲覧はしないタイプなので、いきなりの大量フォロワーと愛からのダイレクトメッセージを、帰宅してから知ることになる。


 言うまでもなく、涼は困惑し、平静を取り戻すのに安眠剤の代わりによく飲むカモミールを3杯必要とした。

こういう水面下で動く話大好きです。

なんでお母さん達って結束が固く、それでいて情報漏洩が激しいのでしょうね?(個人的意見です)


次回

若奥様達の来襲

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