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妖精の住処  作者: 速水零
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【if】フィギュアは異界の王子さま

あらすじ

フィギュアをお持ち帰りした

 ねえ、こいつなんなの!?


 私はたまたま拾った喋るフィギュア――実際はなんらかの力で小さくなった人間、木下涼に対してそんな評価?をしていた。


 話す言葉はありがたいことに日本語、住んでいた地域も私も聞いたことのある街、歳はたった一個上で、いわゆる普通の男子高校生のはずだが、明らかにおかしい。


 何がおかしいかというと、そのスペックだ。


 まず容姿がおかしい。


 なんらかのアニメのフィギュアを模したような美しい体型に整いすぎている顔立ち。


 鏡を見ても違和感を覚えないということは、元からその姿をしていたのだろう。


 次におかしいのはその頭脳。


 一つ上なのだから私よりも勉強ができて当然だけど、こいつの知識はあと一年で私が取得できる範囲を大きく超えている。辞典が歩いているみたいだ。頭にネット回線が通ってるんじゃないの?


 聞いた話だと、涼はむちゃくちゃ頭の良い学校に通っていて、その中でもトップクラスに成績が良いらしい。ホントは漫画の世界から飛び出してきたのでは?


 他にも運動神経がおかしかったり、性格がおかしかったりする。


 これなら異界の人間だと言われた方がまだ納得がいく。


「朝から何やってるの?」


「ランニング」


「それは見ればわかるわよ。……はぁ、本当にやってるのね」


 涼は私が起きると部屋の一室でランニングをしていた。ランニングといっても私の部屋をぐるぐる回るのではなく、ランニングマシンのようなものを使って、だ。


 人間用では涼一人では使いにくいし、そもそもそんなマシンはない。涼の乗っているランニングマシンもどきは私が作らされたものだ。


 設計は涼が全てやったのだから、本当にナニモノ!?と思う。材料が百円ショップで揃ったからいいけどさ。


「毎朝の日課だったってのは本当なのね」


「まあ、普段は自転車だったけど、インテリアの小さい自転車はサイズが合わないし走りにくいからな。ランニングなんて久しぶりだ」


「よくやるわね。それがそのスタイルの秘訣?」


 男女で身体の違いはあるが、涼の肉体美は正直羨ましい。雑誌のモデルみたいに程よく筋肉がつけられていて、無駄な脂肪が一切ない。私も運動しなきゃなのかな。


 あまり音がしないとはいえ、目覚めた直後にガタガタ走っている相手を見るのはなんか鬱陶しい。


 やめさせるのはかわいそうだから何も言わないけど。決して涼がランニング終わった後、上裸で汗を拭く姿を見続けたいわけじゃないわ。


「今何時?」


「ちょうど六時半」


「げっ……まだ起きなくていい時間じゃない。てか、いつから走ってたのよ」


「だいたい一時間前だな」


 運動部でもなかなか涼ほど早練習している人はいないでしょうね。よくやるわ。


「へえ。ま、起きちゃったものは仕方ないわね。朝ごはん食べてくるわ。ご飯アルミホイルに入れて持ってくるわね」


「ありがと」


 私は涼にお疲れと労い、リビングへと向かった。お母さんは早起きだからもう朝ご飯の支度をしてくれているに違いない。


 途中ならせっかくだし、何か手伝ってあげようかな。




「ただいま」


 私は放課後の合唱練習を終え、七時前に帰宅した。


 ようやく仮入部も終わり、パート分けもされた。好きな先輩がたくさんいて、合唱以外でも楽しい。


「おかえり」


 涼は私の方を見ずに何かの参考書を解いていた。


「何やってるの?」


「なんか、朝と同じセリフだな。……今はフランス語の勉強。なかなか英語とは違う発音なのが難しい」


「へえ。本当にフランス語なんて勉強するのね。……あ、これも朝言った」


 涼は私が買い与えたフランス語の参考書を解いていたらしい。


 そんなに高いものでもないけど、ちょっと財布に響く。


「暇だからな。いつか世界中を旅してみたいと思っていたし、時間はたくさんあるからやってみようと思って」


「だからって私なら勉強する気にはなれないわ。ずっとスマホいじりそう」


「スマホやタブレットを使いたくても、柚は一台しか持ってないからしょうがないだろ」


「あ……ごめん」


 涼の言い方にはトゲがあったけど、私ならそもそもスマホないと耐えられないから、素直に謝る。


 どうぞいくらでも勉強してください。


「でも、この生活も悪くない。生きていていろんな驚きや発見があるから飽きないし、何より自由な気がする」


「自由? かなり束縛されてる独房みたいな生活に見えるけど」


「確かにそうとも言えるけど、今僕のことを知っている人は柚しかいなくて、学校ってしがらみや僕の常識がほとんど通用しない。すごく、おもしろい」


 やっぱり変なやつだ。


 なんだか、涼を知っているのは私だけっていうのはちょっと嬉しい。こんなおかしくてカッコいいヤツには私しかいないのは萌える。まるで異界から島流にあった王子さまを匿ってるみたい。


 ……私、お姉ちゃんみたいな思考してる?


「それより、結構お腹減ったんだけど、何か食べるもんない?」


「…………あ、そ、そうだったわね。昼から何も用意してなかったかも……私が夕飯食べ終わった後持ってくるわね」


「おねがい」


 私は変な思考を首を振って消し飛ばし、階段を駆け下りてリビングへと向かった。


 お母さんが用意してくれたのはカレー。部屋にもっていくの大変そう。


 ほんと匿ってるみたいね。


 アルミホイルにご飯とカレーを詰めて私は涼に届けることにした。涼は体が小さいから厳重に包めばポケットに入れて運べそう。


 私が夕飯から戻ってくると、涼はマグネット式の小さな将棋盤の上で唸っていた。


 ほんと、こいつなんなの!?


イフストーリーはざっくりと進んでいきます。

思うがままに書いているので楽しんでスラスラ書けますね。本編にはさほど意味はありません。

もっと書きたいですが、所詮はイフなので、次の章が終わるまで我慢します。


次回イフストーリー

未定

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