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妖精の住処  作者: 速水零
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幼女たちをおもてなし

あらすじ

リハビリでスーパーへ

 子どもにバーベキュー経験をさせたいというのはとても良い建前だなと涼は思う。


 昨日予定を思い出し、かなり慌てて準備することになったが、米を先に炊いたりなどの事前準備はしなくても、子どもたちに経験させてやりたい、の一言で全てが解決する。


 バーベキューをやるともっと前に覚えていたのなら肉の下処理や、子どもが遊べる工夫を凝らしたりできたが、昨日思い出した時はバイト中であり、とても時間がなかったのでしょうがない。


「涼、あの子たちいつくるの?」


「さあ、大体十一時くらいだった気がするけど、よくわからん」


「よく開催されるようになったわよね。普通隣の家でバーベキューしようって言われて行こうとは思わないわ。しかも全く知らない男子高校生の一人暮らし……どうして?」


「それもわからん。よく考えると不思議な話だよな。男子高校生の家に小学一年生の幼女たちがバーベキューに遊びに来る……字面恐い。まあ、十一時くらいには来るだろう」


 昼ごはんを一緒に食べようと約束したのだから、それくらいには来ると思われる。


 涼たちは先ほど買い物に行ったばかりだが、早起きなのでまだ余裕がある。


 コーヒーを入れつつ待っていると、十一時前にインターホンが鳴った。


「もう来たのね。私はおうちセットにこもっているから、私に注意を向けないようにしてよね。姫はともかく、他の子に弄ばれるの恐いし」


「ああ、わかった。じゃあゆっくり休んでな。バーベキューの肉とかデザートは残しておくよ」


「よろしくー」


 涼がゆっくり玄関に出向いている間に、柚は素早く階段を上って涼の自室に入った。一段一段が自分の身長くらい高いが、柚はぴょんぴょんと飛び上がって駆け抜けていく。


「はーい」


 玄関を開けると小さな少女三人とその後ろには年齢がバラバラの女性たちが立っていた。


 茜と楓の母親だろう。涼が会うのは初めてだ。こうして同い年の少女達の母親といえど、かなり年齢差があるようだ。愛がとても若いのがよくわかる。


 涼の顔を見た茜と楓の母親達は涼の姿を一瞥した瞬間僅かに歓喜の悲鳴を上げた。男性アイドルを生で見たときの中年女性のような反応だ。


「「「おはようございます!!」」」


「おはよう。みんな今日はバーベキューを楽しもうね。ちゃんとお腹減ってる?」


「もうペコペコ!」


「はやくたべたい!」


「涼お兄ちゃんのごはんおいしいからたのしみにしてたんだ!」


 少女達の満面の笑みを見ていると開催を許してよかったと思える。


 少女三人は靴を脱ぐ準備をして中に駆け込もうとするが、今回は庭でバーベキューだ。涼は手で静止させる。


「今日は悪いわね」


「いいえ、大丈夫ですよ。それに、姫たちと遊ぶのは嫌いじゃないので」


「初めまして、茜の母の恵です。本日はお招きいただきありがとうございます」


「私は楓の母の花です。正直初めは男子高校生一人暮らしの家に遊びに行くことに疑問を持っていましたが、涼さんに懐いている娘を見ているとアリかなって気がします」


 あけすけに言う花だが、涼も疑問を抱いていたので全く気にならない。


 涼の見た目だけで判断されても困るが、それもしょうがない。涼を見た人はまず顔の良さと鍛え上げられたスタイルに目が止まる。佇まい一つ一つに知性を感じさせ、時間が経過するほど好感度が上がっていく。


「わーっ! おにわひろーい!!」


「ここならドッチボールできそう!」

 

「やろうやろう!」


 確かにできそうだがやるつもりはない。バーベキューコンロがひっくり返ったら大惨事だ。


「こっちおいで、バーベキュー場所に行こう」


「「「はーい」」」


 バーベキューセットは玄関の裏手側にある。リビングと繋がっており、キッチンで調理したものを持ち運びやすくてとても便利だ。


「ねえねえ、なにやくの?」


「はやくはやく!」


「ごはんまだー?」


 涼のズボンをグイグイ引っ張る少女三人。


「今日はバーベキューだからお肉をたくさん焼くよ。ご飯もみんなで研いで炊こうね」


 母親三人組は手伝わず見守りに徹するようだ。子ども向けのバーベキュー講座を開いている気分になる。


 みんなで一合ずつ入った米袋を飯盒に入れていき、庭の水道から水を入れる。


「つめたーい!」


「どんどんしろくなってくよ?」


「涼お兄ちゃん、これどうするの?」


「その水は捨てて、もう一度同じ作業をする。何度かやったらお水を入れようね」


 小学一年生なので米を研ぐのは初めてらしい。とても楽しそうにキャッキャしている。


 水が白く汚れたのを見て頭にハテナを浮かべる。可愛らしい。


「そろそろお水を入れようか。中蓋スレスレまで入れて移すんだ。五合炊くから五杯ね」


「「「はーい」」」

 

(米は問題なく炊けそうだ。ほんと先に準備せずともこうして体験させる名目で楽できるのはいいな。まだ序盤も序盤なのに三人とも楽しそうだ。事前準備時間は短いもののかなり楽しんでもらえる企画を立てたのに、これじゃあいらなかったかもな)


 米はこの前キャンプに持ち運んだバーナーで炊く。


 はじめて見る道具に少女たちは目を輝かせる。これでご飯が炊けるのかと思うとテンション上がる。


「よし、じゃあ火を起こそう!」


「わーい!」


「たのしみ!」


「はやくやろやろ!」


 子どもは火起こしが大好き。


 策を弄せずともおもてなしは十分なようだ。親三人組は口を挟まず涼に一任している。


 久しぶりのバーベキューだ。涼自身もとても楽しい。やっぱり柚ともやりたいと思いつつ、子どもたちが火傷しないよう細心の注意を払う。


「ねえ、そういえば、柚はこなくていいの?」


 順調に進んだと思ったら姫が余計なことを思い出した。

おもてなしと言いつつ、そこまでのことはしていませんね。相手が相手ですし、昨日思い出したのでほとんど考えていないのでしょう。

ここから数話かけてバーベキューしていきます。


次回 

火起こし体験

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