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妖精の住処  作者: 速水零
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自宅バーベキュー!

あらすじ

リハビリは順調に進んでいた

 夏休みも一ヶ月が過ぎた。


 涼の学校は夏休みが長めに取られているのでまだ学校が始まると焦る時期ではない。涼は宿題を早々と終えているし、学校が嫌いではないので焦ることはないが。


 リハビリは予想よりも遥かに順調に進んでいき、今では行ったことのあるところならどこでも行けるようになった。


 人通りの多い少ないで危険度はだいぶ違うと思って段階わけしたものの、柚には対して変わりはなかったというのも大きい。


 ただし、外の世界へ踏み入るときは、だいぶ柚の心が荒れたものだ。


 眺めるくらいなら三日でストレスフリーになったが、実際に足を踏み入れるのはかなり抵抗がある。


 涼の家が見えなくなると恐怖を覚えるのも涼の予想通りで、柚には相当な精神的ダメージを与えてしまったことだろう。


 それでも、柚は高いモチベーションを維持し続け、何度も何度も挑戦した。


 心が挫けそうになる日々だったが、柚は諦めなかった。


 無論、荒れて閉じこもりたくなる時もあったが、その度に涼は柚を励まし、応援し続けたことで乗り越えていった。


 外に出れば出るほど、柚は外の世界を安全なものとして見れるようになり、今ではヒットソングを口ずさみながら街を回れる。


「今日は何をするの? ついに私の行ったことのない世界に足を踏み入れるのね!」


「なんでそんな前向きなんだよ。一ヶ月前の柚とは大違いだな」


「いや、もう涼にくっついていて恐い目に合わされないってことは証明されたようなもんだし、人通りの少ないところって、行ったことないとこばっか目に映るから、新しい段階って感じがしないのよね。それに、もう知った道しか歩かないの退屈」


「歩いているのは僕だけどな。じゃあ今度はロードバイクで軽くサイクリングでもしつつ慣らしてみるか」


 今までのリハビリは全て徒歩で行われていた。それはゆっくりと周りの景色を眺めてもらいたい、と意図してのものだが、ここまで柚が前向きになっているのなら、ほぼ完治したといってもいいだろう。


「それ最高! 外暑くってもうウンザリし始めてたのよねー。私もそろそろ風を切って進む経験をしなきゃいけないわ!」


「話が脱線して変な期待させて悪いが、今日やるわけじゃないからな」


「えー、そうなのー。じゃあ今日は何をするっていうのよ?」


 リハビリが日課になったので、徒歩で街を歩き回ることに文句を言うことがなかった柚だが、不満は溜まっていたらしい。


 普通の暑さだけでなく、柚は胸ポケットに包まれているのだから柚を襲う熱気は相当なもの。サイクリングはとても魅力的なのだろう。


「そこまで大丈夫なら街をふらふら歩く必要はないだろ。今日は買い出しに出歩く」


「へえ、何かやるの?」


「だいぶ前に言っただろ。今日は姫とその友達が遊びに来て、一緒にバーベキューをするんだって」


「……あー、そういえばそんなこと言ってたわね。あんまし歓迎してないからすっかり忘れてた」


「まあ、姫単体ならともかく、少女三人に囲まれていじくり回されるのはキツいもんな。でも、この前言ってた河原に柚を持ち込んでバーベキューっていうよりはマシだろ?」


「そうね。河原でやるとなると涼が私のこと守れない時が出てくるし、流石にまだその状況は恐いわ」


 自分から冒険したいと言う柚だが、外の世界に危険を感じなくなったわけではない。まだ涼がそばにいないと、柚は外の世界で過ごすことは(精神的に)できないのだ。


 涼主体でバーベキューを開催するとなると、柚を姫に渡して離れる場面が必ず出てくる。


 河原に持っていかなければいい話だが、姫が駄々を捏ねて折れることになる未来が簡単に想像できる。


 説得しようにも、愛や集は柚を人形だと思っているので、姫の援護に走るだろう。


「なんで昨日のうちに買わなかったのよ。そういうの前もって準備するタイプでしょ?」


「実は僕も昨日バイトしているときに思い出したんだよ。帰りに買っても良かったんだけど、どうせならスーパーに入るってのもリハビリの一環としてアリかなって思ってさ。時間には余裕あるし」


「涼も忘れてたのね、姫可哀想」


「悪いと思ってるさ。姫には絶対に言えないな」


「まあいいわ、行きましょ。そういえば家以外の建物に入るなんて久しぶりだし、ちょっと楽しみ」


「失念してたけど、これも立派なリハビリの段階だよな。かなり安全だけど」


 建物内、特にスーパーなんかは大通り以上の人口密度だろう。


 スーパーで柚を害する生物など盲導犬くらいだ。この次はデパートに行って段階を踏もう。


 涼は自室に戻ってサマージャケットを羽織り、柚を胸ポケットに入れる。


 スーパーは学校帰りに寄る、前に空と海とばったり出くわしたところに向かう。


 今回は無事(?)、知り合いと出くわすことなくスーパーに辿り着いた。


「バーベキューか……柚なら何が食べたい?」


「んー、カルビにタン塩、豚トロにサンチュ、ビビンバと……」


「焼肉屋をイメージしてるだろ、それ。あとは串物や野菜類だな。子どももいるからしっかり食べさせないと。何かデザートができたら面白いな」


(柚と二人で買い物なんて、キャンプに行った時以来だな。二ヶ月ぶりくらいか……すごく懐かしいな。こうして前みたいに過ごしていると、柚がいてくれてよかったって思えてくる)


「なんか懐かしいわね」


 涼だけでなく、柚も同じ感想を抱いていた。


「そうだな。街を歩いている時もそうだったけど、こうして買い物を一緒にするってのも久しぶりで、ほんと懐かしい」


「涼覚えてる? このスーパーで買い物した後に空たちに会ったのよね」


「そりゃもちろん覚えているさ。他にもここで柚がスイーツ食べたいって駄々こねたこともあったよな」


 二人はひとしきりキャンプに行く前の頃の思い出を語り始める。


 順調に買い物は進み、会計を終える。


 そうそう、この後に空たちにあったのよね、なんて話しつつ、二人は談笑しながら自宅に帰っていった。

この章も終わりが見えてきましたね。

まだ書き始めて四ヶ月も経っていないのに僕自身とても懐かしく思いました。

自宅バーベキューってタイトルながら準備までしか進んでないですね笑。


次回

幼女たちをおもてなし

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