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妖精の住処  作者: 速水零
109/312

領域

長いので途中で切りました。


あらすじ

庭で柚を取り返せた

「これで庭一周だな。いたって普通の庭だろ?」


「いや、これ全然普通の庭じゃないわよ! なんで芝刈り機なんてあるの!? なんであんな凄いバーベキューセットみたいなのがあるの!? それにやっぱり無茶苦茶広いし!!」


 涼の家は一般家庭の一軒家が三軒入りそうなほど広く、その分庭も広い。


「芝刈り機がないと手入れが面倒だろ。バーベキュー用の道具やテーブルとかだって僕の父さんが会社の人を招く時のためだけに買ったものだし」


 涼の家の庭には花壇がなく、玄関へ繋がる石畳やガレージを除いてほぼ全て芝生に覆われている。手作業で整えるのは相当手間だ。


 正直言って芝生を手入れしたり庭を綺麗に見せる努力など面倒でしかないと思っている涼だが、いろんな国の人を招き入れることがある木下家は体裁を気にしなければならない。


 もう父親は海外に転勤しているから、仕事関係の来客が来ることはなくなったが。


 バーベキュー用の道具達も庭に招く時の接待道具の一種だ。仲間や親しい取引相手と交流するのにはうってつけで、涼が子どもの頃からよく庭でバーベキューをしたものだ。


 涼がキャンプに興味を抱いたのもこのバーベキューの影響が大きい。


 もっとも、設置してバーベキューをするタイプのセットなのでキャンプに持ち出した事は一度もない。


(今度柚とここでバーベキューをするってのもいいかもしれないな)


「まあ、予想以上だったけど、家の内装とか見ればさもありなんって感じね。体が小さくなって物の大小が

判別しにくくなったから、あんまし感じる事はなくなってたけど、やっぱ涼の家広すぎ。一億くらいかかるのかしら……」


「さあ、その辺はよくわからないし、興味もないな。ずっとこの家に住んできたから。さて、それじゃあメインイベントやるか!」


「なに、まだ何かあるの?」


「いや、バイクのお披露目がまだだろ」


「あー、そうだったわね。そこにある高そうな車の隣にあるカバーのかかったやつ?」


 涼の家の駐車場も土地の広さ同様に広く、ガレージが設置されており、車二台とバイクや自転車が置ける。


 車用のスペースはシャッターがなく開かれているが、バイクや自転車を置けるスペースには漆黒のシャッターがついている。


 車は柚でも知っている白色の高級セダンで、これも涼の父親がステータス誇示のために買ったものだ。


「そうそう!」


「やけにテンション高いわね。まあ気になってはいたけど」


「じゃあメインイベントを始めよう! これが、僕の愛車YZF-R25だ!!」


 本来シャッターの中で保管するべきなのだろうが、もともと倉庫の代わりに使われていたので、車用のスペースにバイクを停めている。夏休み中に整理したいものだ。


 涼は屋根の柱にくくりつけてある極太のチェーンロックを取り、カバーをバッと外して柚に愛車を披露した。


 高級セダンのトランクに乗っている柚の前に、巨大なバイクが露わになる。


 入念にワックスでコーティングされたカウルはもはや光り輝いており、展示車のよう。


 いかにも駆け抜けるぜ!といったそのフォルムはどこまでも美しく、柚の目にもカッコよく映った。


 イタリア、カプリ島の青の洞窟を彷彿とさせる澄んだ蒼と漆黒のコントラストに倒立フォークの金色のワンポイント。


 もはや美術品の域まで完成されたデザインを持ちながら、その性能は誰もが魅了されるほど。


 柚はジッと黙って涼の愛車に酔いしれる。


「言葉も失うほどカッコいいだろ」


「そ、そうね。写真で見た時よりもずっとイイじゃん!」


「だろ! こいつで全国を旅した時のために、ミラーレス一眼レフカメラを買うかどうか今悩んでいるところだ」


「そこまでするのね。でも、涼なら本当にやりそう」


「乗ってみるか?」


「遠慮しとくわ。汚したら悪いし」


 本当はこれ以上涼のメインイベントに付き合うと、いつまで経っても終わらないので、早く区切らせたかった。


 涼は今度体験させればいいかと柚をバイクに乗せるのを諦め、トランクに乗った柚を拾う。


「じゃあ庭案内は終了だな。どうする? このまま少し出かけてみないか?」


「んー、今日はやめておくわ。それに、今は庭の中だからいいけど、まだここから出られそうにないし」


「そうか。でも見るくらいはできるようになってよかった。少しずつ慣らしていこう」


「そうね。私も心を入れ替えるわ。ちゃんとリハビリする! これからよろしくね」


「ああ、いくらでも付き合うよ」


 そうして、涼と柚は家の中に戻った。




「さて、アクシデントがあったせいとはいえ、昨日は庭に出ることができた。今日はどこまで行けそうだ?」


 庭から帰った後もう一度外に出る事はなく次の日を迎えた。


「ううん……そうね……まず、玄関まで連れてってくれる? サマージャケットに私を入れてさ」


 サマージャケットとはその名の通り夏にも着れる薄手のジャケットで袖が短く、生地も綿麻やポリエステルなどで通気性も抜群。紫外線対策にもなり、コーデもしやすい優れもの。


 ジャケットには胸ポケットや内ポケットが付いているので、柚を持ち出すのには最適だ。


 夏にジャケットを羽織るのはとても面倒で、シャツの胸ポケット以外に選択肢がなくなるのかと思っていた涼だが、葵とデートに行った時に夏服コーナーでこのジャケットを発見した。

 

 SNSの投稿、ストーリーに洋服をあげるのは鉄板なので、涼はそういう意味でもちょうど良かったと、後日光と他の友達を連れて服選びに出掛けていたのだ。


 清潔感のでる服装が好みな涼はとても気に入っており、サマージャケットを3着買っていた。


 クローゼットを開けてお気に入りの紺色のサマージャケットを羽織り、柚を胸ポケットに突っ込む。


「あー、なんかこの感じ懐かしいわね。前はたまにこうして涼の学校について行ったわ」


「そうだな。僕も柚を胸ポケットに入れるのが懐かしくて仕方なかったよ。まだ二ヶ月くらい前のことなのにさ」


「こんなことであれだけど、感慨深いわね」


「ああ。じゃあ、玄関に向かうぞ。顔は出していくのか?」


「もちろん、そうじゃないと意味がないわ。それに、昨日は姫が走って飛び出したからあんまり玄関出る過程を見れてないし」


 姫は柚を手に持っていたので、全体を見渡しながら玄関に立ち向かっていない。


 無論、家に入る時にはちゃんと眺めているので、柚はこの段階で大きな不安を抱いていない。


「了解。……ほら、着いたけど、どうだ?」


「ええ、全然平気。……ううん、ウソ。ちょっと恐いなって感じるけど、辛くないわ。続けましょう」


「わかった。じゃあ細かくステップを踏んでいこうか。まずは玄関の扉を開けるからそこから外の様子を見てくれ」


「そうね、まずはそこからよね」


 ガチャリ。


 扉を開ける音をここまで間近で聞いたのは、昨日を除いて本当に久しぶりだ。


 柚の心臓が同タイミングで跳ね上がった。


 昨日案内してもらった庭に、豪勢な門が見える。


 門の柵の隙間からは完全な外の世界が見え、柚の心臓はさらに激しく鼓動を打つ。


 昨日は突発的な出来事に体が麻痺していたんだと柚は悟る。


 ガレージ内車のトランクに乗ってバイクを眺める以上、外の景色は大量に目に映り込んできていた。しかし、何度も目にしたことのある道なので、昨日は何も感想を抱かなかった。


「確かに、玄関とは比にならないくらい恐いわね。でも、まだまだイケる!」


「じゃあ、さらに先までいこうとするか」

やっぱR25はカッコいいですよね!(共感が得られにくい事は承知しています)

涼の住んでいる家自体は具体的なモデルがあるわけではなく、僕の理想を押し付けています。

僕のイメージでは、今登場した白いセダンはレクサスLSです。むっちゃ欲しい!!


次回

限界点

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