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妖精の住処  作者: 速水零
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恋愛マニュアル

あらすじ

柚の心情は…

 おかしい。


 涼は最近の柚の態度を見て思う。


 引きこもりによるものではない。


 違和感を覚えた点はいくつかある。


「あ、ようやく返信が来た。なんでこんな時間かけるんだ?」


 涼はバイト帰りの買い出しをしに来ており、今夜何を食べたいか聞いただけなのだが、返信まで三十分以上かかってやってきた。


 普通の相手なら何も疑問に思わないが、柚は引きこもりでスマホ中毒者だ。スマホの使用時間は十五時間を超える。


 動画を見ていようが電子書籍アプリで雑誌を読んでいようが通知はわかるはず。


 そして、柚の数少ない楽しみの一つ、夕食のメニューに関してなのだから一時中断してでも返信するだろう。


 いつもは柚にringを送ったら十分以内には返事が来る。他の人と違って毎度早く返事が来るのはとてもありがたいのだが、最近の柚は時々返信がやけに遅いことがある。


 それもどこか規則的に遅くなっていると思われる。


(これ以上返信が遅くなることが増えるとかなり面倒だから、後で事情を聞くか)


 涼は柚のリクエスト通りのメニューと、少しの野菜に数日分の食事を買って帰宅する。


「なあ、なんで最近ringの返信遅いんだ?」

 

 柚のリクエスト通りのメニューを出してやり、ご機嫌を取った上で聞き出してみる。


 単純な正確な柚なら大抵このくらいのことをすれば口を滑らせるのだ。


「えっ!? べ、別に、そんなことないけどっ!? 私だって忙しいんだから遅くなる時くらいあるって!」


 とても怪しい。


 だが、最近おかしいのはこれだけじゃない。


 例えばこの夕食。いつもよりも柚が近くに座っている気がする。それに、なんだがたまに挙動不審になる。


 加えて、発言がオーバーだ。


「すごーい! 初めて知った!」


「やっぱり涼ってすごいわね! なんでも知ってて尊敬するな〜」


 このようにいつも以上に褒め称えることが多くなった。


 細かいところでも他にいくつも気になる点がある。


 もちろん、これは柚の作戦だ。


 柚は涼に好きになってもらいたくてこんなことをしている。


 ネットから色々と情報を集めて共感した部分をそのまま適応しているが、涼には逆に不審がられた。


 柚が参考にしている資料に書かれていたのはこうだ。


「高校生男子はちょっとしたコツを掴んで応用するだけで簡単に付き合うことができます。

 

 そもそも男子も彼女が欲しくてほしくてたまらないですし、実は男子のほとんどが女の子の扱いに慣れていません。疑心暗鬼になりながら接していることでしょう。ですのでこちらからちょっとした隙を見せて誘うだけで相手はコロッと落とすことができます。


 具体的にどう落とすかですが、方法は様々あります。まず、共通して言えることは相手の心を持ち上げてこちらへの壁を取っ払うこと。


 ということで、最初に教えるテクニックは返信のタイミング!


 焦らしプレイという大人の言葉があるように、お預けをされると人は興味関心を相手に向けるものです。なんで返信してくれないんだろう? 早く続きを聞きたいなぁ、なんて思わせることが大切です。しかし、毎回返信を遅らせると逆に自分には興味ないと思われる可能性があります。三回か四回に一回間を開けると良いでしょう。


 ボディタッチを増やすという方法もあります。ボディタッチは本当に有効な一手です。嫌われる要因になると思われがちですが、女の子に触れられて喜ばない男子はいません。そして、気軽に触れられると男子は心を開いてしまうもの。要するに勘違いを起こしてしまうのです。


 そして、相手を褒めることも大切です。男子は自己顕示欲が強く「すごいね」「初めて」「特別」なんて言葉を使うと良いでしょう。実はそれ私も知ってたんだよね、なんて言わず花を持たせてあげるのも良い女の秘訣ですよ」


 このようなことがネットの記事に永遠と書かれていた。


 涼はそのことを知らない。


 だが、涼にとってある意味逆効果だ。


 ビジネスパーソンみたいな思考の持ち主の涼は返信は早く正確に送ってくれる相手の方が好印象で、気がついたら素早く返信するのが常識だと思っている。


 柚がボディタッチをしようとしても体格差から自然に行うのは難しい。柚は涼のもとにわざわざテクテクと歩いて近づいて手を伸ばす必要がある。


 それに涼のことをすごいと褒めるのはいつものことで、意識して大袈裟にいうとかなり嘘っぽくなってしまう。


「別に遅いことに文句はないけどさ、気がついたらなるべく早く送ってくれない? 夕食の献立立てたいのに待たされたし、気がついているはずなのにわざと後回しにするのって少しイラつくんだよね」


 涼に咎められて柚はハッと気がつく。


 相手は普通の敵ではなく、何人かとの交際経験を持ち感性が人とズレている完璧超人の涼。


 ネットサーフィンして見つけたサイト記事には有効打もあるだろうが、それに頼りすぎてはいけなかった。


(私も涼を落とすための作戦をしっかり練らないとダメかしら。時間もないし。それに、多分……この小さな体の私は魅力が薄いだろうから罠に嵌めないとどうしようもない)


 柚は自己評価が高めのタイプでまさしくその通りの美少女だが、人種の差をかなり意識している。


 だからこそ、一緒に住んでいるというアドバンテージを存分に活かして攻める必要がある。手を抜いたら涼は仕留められない。


(涼みたいに宣戦布告をするわけにはいかないけど、絶対に狩ってみせるわ! せいぜい首を洗って待っていなさい!!)


 柚はジッと涼のことを見つめて決意する。涼は柚の考えていることに全く気がつかない。


 こうして、別の側面からの戦闘が激化し始めていった。

珍しくテレビをつけたら金曜ロードショーがやっており、書き終えるのが遅れました。

記憶喪失は僕も書きたいと思うネタではありますが、この作品で登場させるつもりはありません。

ややこしくなりますから。


次回

自由研究

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