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妖精の住処  作者: 速水零
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患者の気持ち

柚視点です


あらすじ

作戦失敗

 涼は私のことを病気のように言う。


 いや、たしかに私は外に出るのがすごく怖くて震えるからこれは病気、ということに異論は挟めない。


 だけどしょうがないじゃない!


 実際に怪獣に睨まれたことがないからあんな風に言えるのよ!


 私だって本当は外に出たいと思ってる。


 心は出たがっているのに体が拒否反応を示す。


 でも、涼が無神経なことを言ってくるとは思ってない。


 涼はいつだって私のことを私以上に考えてくれて、時々何がしたいのか分からないようなときもあるけど私の支えになっている。


 私がこの家から出られない、この家に引きこもろうと思うのは、逆を言えばこの家が絶対に安全だと信じている証拠。


 引きこもり。


 私が中学の時凄くマイナスイメージを持ってた。


 なんで私は学校で毎日勉強しているのに家にこもる人がいるのが許されるのか。


 どうして一度も顔を見たことがない人が卒業できているのか。


 彼らはニートと呼ばれている社会のゴミでしょ?


 人間が文明レベルを上げすぎたから淘汰されない全世界の中の劣等種。


 ……それは言い過ぎね。


 だからってダメ人間には変わりないし、私が馴れ合いたいと思わない人種ナンバーワンなのは揺るがない。


 そう思っていたはずなのに、今は彼らの気持ちが少しだけわかる。ちょっと同情する。


 自分が引きこもりになってからようやくわかった。


 一度外に出られなくなると毒を盛られたように体が痺れてしまうのだ。外に出ようと心が思っても体を鎖が縛り上げてくる。


 彼ら引きこもりのニートが何を思って家にこもっているなんて考えたくもないけど、その状態が続いてしまう気持ち一点はしょうがないと思う。


 まあ、私は家にいても涼のせいで勉強させられているからニートじゃないし、ニートはやっぱり迫害すべきね。周りの迷惑。


 涼は私を治すんだと宣言してきた。


 何かライバルを見つめるような視線を向けられてきて強気に応答したけどちょっと意味がわからない。


 どこに燃える要素があった? 


 私の治療の話だよね?


 私は無理やり意志を変えさせられるのは大嫌いだ。


 例えば宿題をしなさいと雑誌を読んでいる時に怒られたり、嫌いな野菜を残そうと思った時に食べさせられたりなど数え上げればキリがない。少しレベルが低いことには目を瞑ってもらおう。


 だから涼が最初に私にPTSDだって言った時のような強引なやり方はお断りだった。


 でも、涼は私を煽ってきても無理強いはしなかった。煽って葛藤している私を見て楽しんでいるような節が見られる。人間として最低じゃない?


 最近私を脅すような誘いがあったときは本当に恐かったけど、あれは脅しじゃないし、実際起こり得ること。私は自分のせいで涼の将来が潰されるのは我慢ならないから、涼が長期間この家を離れる機会が訪れたら私は止められない。


 嫌なことだけど、逆にそれが起こり得るまではずっと手もとに置いてくれるってことだし、涼と一緒に外国に行くとか最高すぎる。


 でも、あんまりうかうかしてられない。


 なんだか私が涼とくっついて出かけなくなってから、涼が他の女に言い寄られたり、偶然出くわしたりしている気がする。


 涼ってあんまり交友関係広くないし、男子校だから全く女絡みで何か起こるなんて想像つかないんだけど、数少ない侵入口から敵が次々やって来る。


 特に今までは頭がおかしいヤツってレッテルの門番がいたらしいけど、最近はSNSの勉強(勧めておいてあれだがなんでまだやってるんだろう? もう飽きると思ってたんだけど)の効果もあってから新たに客引きがついてしまった。


 まあホイホイやってくるやってくる。何年も疎遠状態で、たまたまバイトが一緒になっても会話する程度だった元カノと、なんで最近になってよく連絡を取るようになり、出かけるようになったのか。わけわかんない。


 この前温泉の素を買いに行ったときも何故かいつもよりも時間がかかっていたし。買いに行くもの考えていただろうし、何か面白い道があるって遠回りするような要素もなかったはずだし、信号運がないって済むほど大きな交差点は少ない。誰かと出会していたのでは、と密かに私は睨んでいる。


 それと、恋愛対象外(そうだと私は信じている)とはいえ、姫の友達もやってくるようになったわね。そのうち愛さんの歳の離れた妹とか現れたりしそう……笑えない。


 だから私に意識を向けさせないとまずい。


 涼が簡単に靡くとは思わないけど、突拍子もないってのは涼の専売特許。元カノやら同級生やらバイト仲間やら隣の女子校でたまたま知り合った子なんかがやってきても不思議じゃない。


 だから私にとっても外に出て監視するのは必要なこと。だいぶ薄まってきたとは思うけど、まだ体が拒否反応を起こすのよね。


 どの辺までできるようになったかな?


 まず玄関を思い浮かべてみる。


 玄関近くの階段を降りてリビングに行く時は目を逸らして見ないようにしていたので、もう二ヶ月近く見ておらず記憶が朧げだ。でも前のような恐怖はない。これは知っているが、再確認再確認。


 次のステップは少し踏み込もう。


 実際に玄関を見に行く。


 これは私にとってすごく難問だ。この前の期末テストの意地悪問題くらいには難しい。


 涼はバイトで私は犬用ベッドでくつろいでいる。この部屋を出て(ドアは柚のために少し空いているため自由に家の中を回れる)階段を降りるだけで玄関は姿を見せる。


 まずこの居心地の良いベッドから抜けよう。


 …………温い。心地良すぎ。


 こんな夏の暑さの中エアコンガンガンの部屋でのんびり寛ぐ。至福の時とはまさにこのこと。


 廊下や階段は私のせいでエアコンの空気が流れているけど、絶対に暑い!


 無理! こんな暑い中外に出られるなんて人間は化け物すぎ。私みたいなか弱い妖精は常春しか受け付けないの。


 私は外が怖くて出られないんじゃない。


 春が終わったから出られなくなったんだ!


 そ、それに、外に出られなくたって涼を手玉に取れば関係ない話だし!


 ま、まだ夏休みは始まったばかりなんだから、あっ、焦る必要ないわよ!


 じゃあ、私はスマホで涼の落とし方でも調べようかな!


 ……でも、あの涼を落とすってどうやるの?

ちょっとこの辺から話は転換していきます。

こうして柚の心を揺さぶっていく組み立てでこの章ここまでやりましたが、長すぎ。

一人称視点って書いてて気持ちいいのでもっとやりたい!


次回

恋愛アニュアル

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