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バットエンド

 

「いや! 目出度く無い! 私らは⁉︎」


 めでたし、めでたし、じゃ無い! まだ終わってない!


 黒が戻り闇の世界が閉じようとしていた。このままでは私達は帰れない。どうにかして脱出しなければ!


「師匠!」


 頼みの師匠達は水溜りの前に座り、寛ぎ始めた。帰る気無しだ。何してるの?


『やった! これで我々の勝利だ!』

『あぁ、やったなぁ』


 水溜りには勝利を喜ぶ人々が映っていた。その中には肩を組み合う純菜とアキラの姿も……。この2人いつの間に仲良くなったの?

 握った拳を空に向かって降り上げて喜ぶ兄様やボロボロだけど元気そうな次期当主様、手と手を取り合い喜び合う【白】を持つ面々などが映る。感動的な感じだ


 そんな中、コルネリア様が有る事に気付いた。


『リンドヴァル達が居ない!』


 画面 (?)の向こうでコルネリア様が私達が居ない事に気付き騒ぎ出した。そして、その声を聞いた周りの者達も騒ぎ出す


『お兄様も!』

『何処に⁉︎』


 ハイドの妹【グロキシニア】と弟【アスター】が兄の帰還が無い事に気が付いた。


『ギースもだ……』

『いえ、久遠もカティルもラティルも居ない』


 続いて花弦が六花不在に気付く


『そういえば佳月居なくね?』

『あ、本当だ。まぁ、アイツは問題無いだろう』

『帰って来なくても問題無い』

「酷い⁉︎」


 兄様、アキラ、次期当主様は私の事は気付くも、放置を決意していた。私の扱い酷くない?


『まぁ、アイツ自由だから、どっか行ったんだろう。それより、他の六花だ』


 アスター (メガ萌)も私の心配は無し。同様に他の皆んなも……。私って一体?


『誰も居ない……兄様、ご存知ですか?』


 コルネリアは自身の兄に問う。先程まで私と共に居たディーデリヒ王は、そんな妹の問いに何も言わなかった。ただ、微笑を浮かべるだけ……


「佳月、すまない」


 その様子をジッと眺めていた私に師匠は言った。私には何故師匠が謝っているのか検討もつかない。なので私は首を傾げて師匠を見る。


「なんだリンドヴァル。お前の可愛い弟子に話してなかったのか?」


 そんな私の様子を見ていたハイドが師匠に問う。その問いには師匠は答えなかった


「酷い師匠だな」

「全くだ」


 久遠とカティルが師匠に向かって言った。


「そんな事、解っている」


 師匠は久遠、カティルに向かって言った後、師匠は立ち上がり私の元までやって来た。そして彼は私を見下ろしながらこう言った。


「俺達は戻れない。いや、戻らない」


 師匠は申し訳なさそうな、辛そうな、なんとも言えない顔をしている。

 そんな師匠は続けて言葉を発する


「黒が有る限り平和は無い。だから俺達は此処の世界に留まる」


 黒の(フロース)が世界から消えれば、黒の脅威は無くなり安泰だ。白だけなら何ら脅威は無い。

 だから黒をあの世界に戻さ無い為、私達は此処に留まるのだと言う。

 確かに名案だが……


「ここで長い時を過ごす事になる」


 ここは時間の流れの無い世界。死の無い世界。

 なので此処に留まると言う事は、終わりの無い果て無き時を過ごすと言う事だ。私達は死ぬ事も老いる事も許されず、ただ只管、ここから世界の行く末を見届けるしかない。そう、人が滅び、世界が滅びても、この世界が存在し続ける限り私達は生き続けるのだ。


「本気ですか?」


 それは、旅の結末としては酷いものだろう。ラスボスを倒せばハッピーエンドが待っているものだと思っていたが……まさか、バットエンドに行くとは……。


「いつから考えてました?」

「旅を始めた当初からだ」


 旅を始めた当初から師匠は世界の為、自身を犠牲にするつもりだったらしい。もし闇の世界が開けば自分は、こちらに来て留まろうと考えていたのだとか。

 それをギースやハイドに話すと2人は師匠の提案に賛同した。そして2人も留まる事を決意する。


「始めからお前も巻き込むつもりだった」


 師匠は初めて私と会ったら時から、私をこの引き篭もり大作戦に巻き込むつもりだったらしい。なので師匠は私を手を掛けて育てて来たのだ。六花との戦闘や花弦達との戦闘で死なぬ様に、この結末を迎えられる様に……


「酷い人ですね」

「あぁ……」


 始めから私を犠牲にするつもりだったのだ。始めから私の願いを叶える気は無かったと言う事だろう。何と言うか……


「黒を置いて行く事は出来ないのですか?」

「出来ない」


 私は気になった事を聞いてみた。しかし答えはノー! 黒だけ置いて私達だけ帰るのはダメらしい。なんでも管理する者がいないと、黒が暴走して世界に影響が出る可能性が有るとか何とか……

 兎に角、私達はここに残り世界の行く末を見届けるしかないのだ


「すまない、佳月」


 師匠の謝罪に私は目を閉じる。



 《小を殺し大を生かす》


 仕方がない。この世は理不尽なのだ。

 どれだけ力を持っていようとも、時には小になる事も有る。

 どれだけ力を持っていようとも、覆らない事も有る。

 どれだけ力を持っていようとも、捨てなければならないモノも有る。


 画面の向こうで幼き少女の声が聞こえてくる。絶望した様な、そんな声。


 震える声で必死に誰かの名前を呼んでいる。


 その震える声が私の名を呼んだ。




 しかし、私にはその声に返事をする事は叶わなかった……

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