めでたし
王様の言った通り、黒い方は急激に力を無くし、白に押され始めた。このまま行けば、白側が勝つだろう。そうすれば、世界は救われる。まぁ、人が人である限り争いは起こり続ける為、真に救われる日は無いと思うが、一時の平和を楽しむのも良いだろう
「僕が描いた通りに進んだなぁ」
王様は嬉しそうに言う。もしかして王様は、こうなる事を分かっていて仕掛けたのだろうか?
王様の言葉を聞き、私は堪らず問うた。
「貴方は世の人々を選定しようとしていたのではないのですか?」
この質問は最もだと思う。先程まで私は、王は黒い邪神が降り立った世界で生き残れる者だけを連れて、新たな世界を作り上げるつもりで居たのだと思っていた。
それは黒いオーラを受けても正気を保ち続けられる者、その者達以外は皆居ない世界だ。
しかし王はこの結末を描いていたと言った。王は人々を殺すつもりはなかったのか?
うーん……。偉い人が考える事は良く分からん
「人が人である限り、争いは止まない。お互いがお互いを信頼出来ず争い合うなど悲しいだけさ。だから、僕は賭けた」
王は世界の皆んなで一致団結して自身を止めてくれる事を願ったのだ。世界全てに共通の敵が出来れば人々の心は纏まる。ならば敵を作らねばと彼は思ったと言う
「でも負けるつもりは無かった。僕の掲げる野望でも世界は救われるからね」
王の理想は、自身の負の感情やエネルギーを自身でコントロール出来る者達だけの世界を作り上げる事だ。少人数である事に加え、負の感情を抑制出来る者達だけなので争い難い。確かに争いの少ない世界にはなるかもしれない。
しかし、今の様に発展した世界を作る事は難しいだろう。人間とは、様々な意見や理想を掲げて先に進む生き物である。時には衝突しなければ次に進めない事もある。
感情を抑制し、人間が人間らしく生きれない世界など発展する訳がない。
しかし、王はそれでも良かったと言う。何故、そう言えるのか私には理解出来ないが、王様は王様なりに世界を救いたかったのだろう。
湿っぽい話になってしまった……。こういうのは苦手だ。もっと、楽しい話がしたい。背中がムズムズして来た。そろそろ巫山戯たいのだが……。今、巫山戯たら空気読めない感じか?
「……王様」
1人でペラペラと話す王様の言葉に適当に相槌を打ちつつ、私は地上戦に意識を向ける。
地上では白が押している様だが、黒は倒れず持ち堪えている。流石、負の感情で出来ている黒だ。あの世界に居る限り倒す事は難しいのだろう。ならば、封印的な事をした方がいいのだろうか? こう……こちらの世界に戻して扉を閉める感じに。
そういえば、黒【ウィケット】は闇其の物だと王様が言って居た。なので私でも操る事は可能な筈。
「王様! 私の殊技で黒を……アレー⁉︎」
別に勝手にしても良いと思うのだが、王様に一応許可を得ようと思い王様の方に向直れば、そこに王様は居なかった。あれ?
「どこ行った?」
私は慌てて周辺を探し始める。普通に話していたが一応重傷の身であるので、そう遠くまで行けない筈だ。そう思い、私は周辺を探してみたが見つからない。
仕方がないので一度、地上の様子が確認出来る水溜りが有る場所に戻って来る。
「あれ?」
水溜りに王様が写っていた。その横にはコルネリア様の姿も確認出来る。これ、もしかしなくても元の世界に戻った? 一体どうやって?
「……佳月」
「あ、師匠!」
そうこうしている内に師匠が私に合流した。師匠だけではない、ハイドやギース、他の六花も居た。これで全員集合だ。
敵3人は縛られて拘束されて居り、私の所に来る前に一悶着有ったのだろう。何が有ったかは聞かなくても分かるので聞かないでおこう
「王は?」
師匠は私に王の所在を聞いて来たので、此処で何が有ったか説明。「マグレで勝った」っと師匠に言うのには抵抗が有った為、「私の作戦勝ちでした」っという事にした。
話終えると、師匠は水溜りを見る。そして、王の姿を確認すると……
「黒の保有者ではなくなったので、この世界から強制退去させられたのだろう。ここは黒保有者しか入れない世界だからな」
この事を知っていると言う事は師匠は【ウィケット】に呑み込まれれば、ここに来ると分かって居たのかもしれない。いや、他の面々もあの時、動く気配が無かったので私以外全員が知って居たのだろう。
師匠め……教えてくれてても良かっただろうに! ホント、このパーティー報連相が出来てないよな!
「さて……俺達が勝った。ここからは俺達主体で動く。手伝ってもらうぞ」
ハイドが縛っている3人に言う。3人は難色を示したが、仕方ないと諦めたのかハイドの言葉に頷いていた。
ハイドが何をする気なのか……。コイツの事だ、きっとエグい事する気かもしれない。
実はハイド、師匠より拷問が凄い人物である。なので要注意人物だ。まぁ、拷問好きのトチ狂った妹が居るのでお察しするが……
ブルリと身を震わせる私を安心させる様に頭を撫でてくる師匠。
「あ、ヴェール忘れてた」
師匠が頭を撫でて来た事により、頭に乗っかっていたヴェールの存在を思い出した。妙に視界が悪く見づらいと思っていたら、ヴェールを被ったままだったらしい。
いそいそとヴェールを外す私の姿を呆れた様にハイドは見ていた。師匠と他は無表情だった。
こんなの (ヴェール)被った状態で良く戦えたな……。
今、気付いたのだが服装もジャージではなくドレスになっていた。通りで動き辛かった訳だ
「で、どうするんですか?」
気を取りなして師匠にこれからの事を聞く。
「黒を鎮める。俺達の黒を使い黒をこちら側に戻して眠らせるんだ」
という事で黒を鎮める儀式が始まった。まぁ、私は何もする事が無く真ん中で突っ立っていれば良いので、周りで動いている師匠達を見ているだけである。
ハイドやギース、師匠が呪文的なお願いを口にして黒に鎮まる様にお願いし始める。
「なんか、ギースの様子可笑しくね?」
そんなおり、ギースの様子が可笑しい事に気が付いた。ギースは良く笑い感情を良く表に出す人物だったのだが……今のギースは無表情で感情が出ていない。正直、怖い
「ギースは黒を持っているんだ。感情を抑制しないといけない」
「あー……」
私の問いに久遠が答えてくれた。優しいなオイ!
だが納得した。ギースは黒を持って居なかった時は普通に好々爺な感じのお爺ちゃんだが、黒を持てば感情を抑制しないといけないので無になるのだろう。なので黒を誰かに譲れば元のギースに戻ってくれる訳だろう。
そう考えて、ふっと思ったのたが……。師匠達も黒を手放すと表情豊かになったりするのだろうか? それはそれで見てみた気もするし、恐ろしくて見たくない気もする。しかし、いつかは師匠達も手放すだろうし見れる日が来るかもしれない。もしかしたら爆笑している姿なんてレアなモノまで見れるかも!
私がうんうん唸って考え事をしている内に師匠達の儀式は終わっていた。黒は戻り世界は平和になったらしい。
めでたし、めでたし




