師匠とデート
次に目が覚めたのは2日後であった。目が覚めて直ぐ、師匠から無言の圧力を貰い、他の面々には無茶が過ぎると呆れられた。
しかし、ああでもしないと勝てない相手だったのだ。確かに無茶したなっと思ってはいるが、後悔はしていない
「その事ではない」
そう言うと師匠に怒られた。若干黒いモノが出ているので、それを仕舞ってほしい。そして再度、師匠から無言の圧力が来たので、土下座して許しを請うた
そんな出来事から数日が立つ。
アレから私は戦力から外され、見張りにも付かせてもらえなくなった。情けない気持ちでいっぱいだ。今更だが、見張りをさせてもらえなかった純菜の気持ちが分かる。
今、見張りは【師匠&ハイド】ペア、【ギース&兄様】ペアに別れている。兄様が見張りなど出来るのか?っと思っていたが、見張り番がてらギースのスパルタ教育がなされているらしい。よく悲鳴が聞こえてくる。可哀想な兄様……。プススッ
最近では兄様もそこそこ強くなって来ているらしく、今までペラい躰つきだったのが、筋肉が付きがっしりとした体型になって来た。そして剣さばきも良くなって来ている。ギースのスパルタ教育の賜物だな。
しかし、まだ戦力には換算されていない様である。
2日昏睡して師匠に無言の圧力を食らった後、兄様が私の元にやって来て土下座して来た。何でも今までの無礼を詫びたいだとかで……。悪い物でも食べたのか? っと問うたが違うと言われた。
聞くに、私が邪龍と戦っていた所を見て絶句、力の差を感じて素直に自身の弱さを痛感したらしい。今まで散々弱いと思いこみ、見下して来た妹が、あんな強大な龍と対峙し勝つなんて信じられない気持ちでいっぱいだと言われた。
今の今まで私の実力を理解しようとしなかった兄が、初めて現実を受け入れた瞬間であった。
なので私も誤った。今まで鬱憤晴らす為に色々して来てゴメンっと……。何年か前に兄にゴム弾丸を遠距離から当てていた事を暴露し謝ったらキレられた。
「あれ、お前だったのか!」
って。結局、兄弟喧嘩に発展し、私が兄様をボコボコにした所に師匠がやって来て首根っこを掴まれて部屋に戻されたのだった。
「わーい、久しぶりのお出かけだ!」
補給の為、街に寄ったキャンピン。その際、久しぶりに外に出る事を許された私は師匠という護衛付きでの外出を行った。
護衛なんて要らない! 私は戦える! と主張したが私の主張は通らなかった
「師匠と歩くなんて久しぶりの感じがします」
「そうだな」
アスターやハイド達が合流するまで私と師匠、コルネリア様の3人で行動していた私達。今ではとても懐かしい。
今回のお出掛けにコルネリア様は居ないが、何だが懐かしい感じがする
買いたい物も思い付かずブラブラと散歩しながら、道すがら店を観て回る私。その後ろを何も言わず付いてくる師匠。昔はあまり話さない師匠に気まずさを感じて居たが、今は慣れた。
「師匠! 銃見に行きましょう」
私は銃弾の補充の為、銃を売るお店に向かう。
「コレください」
「はい」
手際良く会計をしてくれる店員さん。笑顔で対応してくれる店員さんだったが、身分証を提示する様に言われたので身分証を提示すると態度を一変。見下す様な態度を取られた。
そうだった。私の階級は【ウィークトゥス】。下界中の下界の住民だった。六花とか普通に相手して来たから自分の階級の事をスッカリ忘れて居た
そして、この態度、久しぶりだ。最近無かった反応に場違いだが感動を覚えた。
「使えないでしょう? ご購入はお辞めになられた方が良いのでは?」
敬語を崩さなかった事は賞賛に値するが、蔑んだ目はダメだ。そんな目でお客様を見るのは辞めなよ
「使えますよ」
「嘘言わないで下さい。ウィークトゥス風情が使える訳ないでしょう」
宜しい! ならば戦争だ!
ウィークトゥス風情とか言いやがった! 敬語だけどコレはダメだ。久しぶりに説得 (物理)をした方が宜しいのでは?
私の頬がピクピクして居るのを師匠が目敏く見つけた様で、私の額をペシッと叩いて来た。怒るなっという事らしい。確かにイライラするのは得策では無い。ココはコチラが大人な対応をするに限る
「じゃ、使える所見せますから……」
「時間の無駄。早く帰れ」
とうとう敬語が外れた店員。その店員は逆にイライラし始めたのか、貧乏揺すりを始めた。短気かよ
「責任者を呼べ」
とうとう師匠が出てきた。師匠が出ればイチコロだな。
師匠は自身の身分証を見せて責任者を呼ぶ様に言った
「何で……。あ……。すみません! 今すぐ呼んで来ます」
師匠の階級を確認した店員は顔色を変えて奥に引っ込んだ。流石ドクトゥスだ
店長が居なくなったので私は殊技を発動させ、手持ちの銃弾の在庫を数える事にする。これから先、補充しなくて良い様に出来るだけ銃弾を蓄える為だ。ずっと師匠にお願いする訳にもいかないからね
「も、申し訳ございません! うちの店員が!」
師匠に平謝りする店長を尻目にどれがいるかピックアップする。その様子を店員が目を見開いて見ている。まぁ、殊技使ってるし、そういう反応になるわな。
結局、師匠のお陰で銃弾を変えた私。これで暫くは大丈夫だろう。師匠には改めてお礼を言わねば
「そういえば、旅を始めた当初も銃ショップで同じ様なやり取りしましたね」
「……そういえばしたな」
今や懐かしいあの頃、こんな出来事も有ったものだ。
前王に宝玉を託され、コルネリア様達と出会い、砦に潜入してみたり、裏切られてみたり、城から脱出してみたり……。師匠と出会う前は想像もしなかった経験をしている。
「随分、遠くまで来ちゃいましたねー」
距離の事では無い。気持ちの事だ。気持ち的に随分、遠くに来てしまった気がする。
あの頃は、ただ親戚から逃げたくて旅に参加したが、今の私は何を思い旅を続けているのか。
「何も変わらない。お前はな」
「それ、成長してないって言ってます?」
私がそう言うと師匠は珍しく笑ってくれた。そして
「そうだな」
「酷い⁉︎」
酷い一言。師匠なりのジョークだと思いたいが、この人ジョーク言わないしな……。
「冗談だ」
師匠が冗談言った! これこそ成長ではないだろうか? 師匠が冗談言うなんて!
この後、私達は特にする事もなくブラブラと歩き、束の間の休息を楽しんだ。
そんな、ある日の出来事。何でもない様な日。
最後の2人だけの逢瀬




