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邪龍

 

 トラック内で揺られる事、1時間くらい。目的の場所に到着したのかトラックは止まった。そしてコンテナが開けられる。


「出ろ」


 兵に促されてコンテナから降りる私達。連れて来られた場所は大森林のど真ん中らしく、端末の電波も入らない。


「ちょっと兵さん。私、部外者なのですが、そこんとこどうなの?」


 近くで女性達の数を数えて並べて居た兵の人に、私の扱いについて聞いてみる


「部外者? そんな嘘はいいから! たくっ、助かりたくて必死だな」


 一蹴にされた。別に助かりたくて言っている訳ではないのだが……。本当に部外者なんだけれども……


「この者の言っている事は本当です。彼女、旅人だそうです。偶々、この街に来ていた」

「もう、ちゃんと確認してから連れて来て下さいよ!」


 私の側に寄って来た王女様が事情を説明すると、みるみる青褪める兵隊さん。そりゃ、部外者を巻き込んだら、そうなるわな。


「生け贄の儀を中断させるつもりは無いから、安心してよ。見てるだけにしておく」


 私は別に生け贄の儀に対して口を出すつもりはないし、手を出す気も無い。力無き者が生きる為に強者に媚びるのは当たり前であり、小を殺して大を生かす考え方を私は深く尊重するからである。

 恐ろしい龍の機嫌を少しの犠牲で取れるのならば安いものだろう。


「それは困る! 生け贄は100人居るんだ! 君には生け贄に!」

「生け贄になる気は無い。私にはしなければならない事が有る。ここで立ち止まれない」


 無情だと思うが、この国の為に死んでやる気は更々無い。間違えた奴が悪いのだ


「困る! 100人居ないと……」


 私は羽を作り空に羽ばたく。それを兵が口を開けて見ていた


『グゥルルルルル……』


 とても近くで獣の鳴き声が聞こえて来た。それが聞こえた途端、兵達はトラックに乗り込み逃げ出した。私達を置いて……。実に薄情である

 残された女達は怯えて震え上がって居た。ここに来るまで、ずっと女性達を励ましていた王女様も怯えて座り込んでしまう。

 私は鳴き声がした方向をジッと眺めて、逃げる機会を伺う。


「わぁーお……。コレは無理だな。流石、ドクトゥスが束になっても敵わなかった龍だ」


 一目見て分かった。コレは無理だ。


 恐ろしいその姿。首は3つ有り、大きく恐ろしい牙、そして巨大な図体。口から滴る唾液は、物に触れると「ジュウ」っと音を立てて溶ける。唾液は酸か……。王女の話では流れる血は毒なのだとか。龍と言うよりドラゴンだ。あれ? 龍とドラゴンは一緒か

 体からは私達の持っている黒の宝玉や宝具の様に負のエネルギーが巻き付き、禍々しいオーラを発していた。


 その龍は私をジッと見つめて居た。まるで逃げれば殺すと言わんばかりの眼力でだ。


「へい! 龍よ! 私は生け贄じゃないから帰っても宜しい?」


 私が片手を上げてダメ元で声を掛けると


『グォオオオオオ!!!!』


 途方も無い咆哮が轟いた。それと同時に飛んで来た唾液。汚ねー


「うわぁ、自慢のジャージが一部溶けた」


 余程強力な酸なのだろう。少し掛かっただけで私の肌の色が見えるくらいに溶けた。これ、おにゅーなのに……。

 下に居る生け贄の女性達は龍の姿を見るや、走って逃げ出した。


「待って! ダメよ! ここに居て!」


 王女様が慌てて追いかけるが、女性達は聞く耳持たず逃げて行く。そんな女性達には見向きもせず、ジッと私を見つめる龍。コレは、アレだ。最初に手の掛かる奴から仕留めようぜっと言う事だろう。


「勝ち目無いよな〜」


 夜になればワンチャン有る気がするが……。この龍も夜になれば活性化するらしく、どう転ぶか分からない。

 私は龍から目を逸らさず、高く飛躍する。その後を羽を広げた龍が飛び上がり追って来た。やはり私が狙いか……。


『グォオオオ!!!!』


 咆哮と共に龍は突っ込んで来た。巨体の割に動きが速い。慌てて回避したが、第2波が私を襲う。


「うぉ⁉︎」


 ギリギリ回避した。危うく齧られる所だったぜ。


 動きを観察するに私が飛んで逃げるスピードより遥かに速いスピードで飛行して居る為、逃げ帰る事は不可能に近い。

 正直舐めて居た。ドクトゥスが束にと聞いて居たが、逃げるくらいは簡単に出来るだろうと踏んで居た。しかし、逃げきるのは難しいそうだ。

 それに生け贄の女性達の様子も気になる。私は誰に似たのか割と薄情だ。まぁ、師匠の所為な気もするが……。だから、生け贄の女性がどうなろうと知った事ではない。

 しかしだ。王女様はマズイ。この国で白い宝具を持って居るのは王女様の筈。それは第1だか第2だかだった気がするが、第3のこの人を見捨てて帰るのは同盟を結ぶに辺り非常に好ましく無いだろう。

 ならば王女も連れてと思うのだが、そうすれば龍の怒りを買い国は滅ぶかもしれない。

 どちらも回避する手は、この龍を倒す事なのだが……。倒せる気が一切しない。


「どうしようかなぁ……」

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