宝玉の半身
「お兄様は完璧に制御してみせた。しかし、父は半分でもダメだった」
元々、黒き宝具を持ち、正気で居られる者はごく僅かである。闇に支配されず、逆に御しきれる者が六花となり、王を支える。
黒き宝玉の所為で城内はギクシャクしていた。兄弟達は対立し、誰もが王を信用しなかった。しかし、そんな中、六花や闇に呑まれない者達は王に仕え、必死に働いた。師匠がその1人だ
「そんな折、王は行方をくらませた」
暗殺を企てられていた為、暗殺者から逃げたのだ。その逃げた先で偶然、闇の力を受けても問題ない私に会った。そして全ての元凶である宝玉の半身を私に預けて(押し付けて)王は城に戻ったが……
「城には父の居場所は無く、父は死刑に……」
王様が抜けた後、第3王子が即位した。そして、負のエネルギーが完璧に封じられた国は、国民が疑心暗鬼に陥る事がなくなった為、新しい王の政治のおかげで国が良くなったと褒め称えた。
「なので、お兄様は出来た王と言われているんだ。全てお前のおかげだな」
なんて物を私に渡してくれたんだ王様!! 宝玉の半身って……これ、アカンやつ
「この宝玉は他の六花でも制御は難しく、お兄様の殊技【物を従わせる】能力で宝玉の負のエネルギーをコントロールしているらしい」
……私は闇を操るというか、暗い物を操る能力だ。つまり、黒い玉は私の能力の対象である為、制御出来ていたっと……私、凄くね?
「しかし、お兄様はとんでもない計画を企てたんだ」
「計画?」
「そう、6つの宝具と1つの宝玉が揃えば【邪神】が呼べるんだ。お兄様はそれを呼び、地上の人々を間引こうとしているのだ」
邪神が出てくれば、この地上には負のエネルギーが充満する。そうすれば人々は疑心暗鬼に陥り、やがて互いに殺し合う。
この世に残るのは闇の力を御しきれる者だけ……
「凄い計画ですね」
凄い事を考える人だ。頭の良い人の考えは、よく分からん
「なので、私達は6つの宝具と1つの宝玉を揃えない様にするのと同時に、もしもの為の対抗手段。白き宝玉と6つの白き宝具を探しているのだ」
この計画を知った王族兄弟達は兄に反発したが、反発したものは皆、殺されたらしい
「実の兄弟でさえも、簡単に殺すとは……」
なので、只今コルネリア様は王に即位したお兄様に追われていると……面倒な事に首を突っ込んでしまった……若干、後悔する
「生き残った兄弟達は信頼できる家臣を連れて、逃げたんだ。私もその1人だ」
つまり、これから私も追われるっという事だろう。
「お前の中に宝玉が有る限り追われ続ける。諦めて戦え」
本当に面倒な物を押し付けてくれた。これ、どうやって取り出すの?
「止めろ! 取り出すな。せっかく治ったエネルギーをまた辺りに撒き散らす気か⁉︎」
怒られた……
「兎に角、お前には強くなってもらう! 宝玉を奪われない様にだ!」
という訳で今から師匠によるスパルタ訓練が実施される事となった。外に出て宿屋の隣に有る空きスペースで組手する
「あり得ないくらい強いです、師匠」
私は食らいつくのがやっとだ。しかし、師匠は容赦なく攻撃を仕掛けてくる。コンチキショー!
「なかなか動けるのだな。関心したぞ。なぁ? リンドヴァル」
それから数時間後、辺りが暗くなり始めた頃、漸く組手は終わった。私はもうボロボロである
「いえ、まだまだです」
地面に伏せて息を荒くする私と平然と立っている師匠。差ェ……
「師匠……腕が死にました」
「そうか」
それだけかよ……立ち上がり、部屋に戻ろうとすると、店主がコチラを驚愕の表情で見ていた。何事?
「お前達の組手を見て、驚いていたんだ」
コルネリア様が教えてくれた。
「ホントに……ウィークトゥス?」
店主は私を指差して問う来る。私とコルネリア様、師匠は1つ頷く。すると店主は目を見開いて動かなくなった
「行くぞ」
「はーい」
店主は放っておいて部屋に戻った。部屋に戻り、コルネリア様がシャワーを浴びる事に。
「佳月……すまないが、手伝ってもらえないだろうか?」
「……」
もじもじしながら問うてくるコルネリア様に不覚にもドキっとした。何のお誘い?
「僕は城では常に侍女達に手伝ってもらってたんだ。流石にリンドヴァルには手伝ってもらえないので、最近は1人でなんとか頑張っていたんだが……」
なるほど……私は師匠をチラッと見ると、目を逸らされた。
「私でいいんですか? まだ信用ならないんじゃ?」
「問題ない。シャワー室の外で俺が待機しておく」
問題なくないじゃないか。シャワー室の外で待機って……私だったら耐えられないな……
「分かりましたよ」
という事で手伝う事に……手伝うと言っても背中流したり、着替えを手伝ったり髪を乾かしたりするだけだったが……
前途多難だ……