六花戦 2回目
何度も激しく打ち合う両者。互角に見えたが、私の方が若干息が上がって来たので優勢なのはハイドの方だろう。やはり六花、強過ぎる
「どうした? 殊技は使わないのか?」
私はさっきから魔法か刀かしか使っていない。それをハイドに指摘された。
私は師匠の教えで、殊技は相手に使われるまで使うなと教えられている。それは殊技に頼り過ぎだった私には結構辛いものがあったが、師匠との組手等により大分慣れた。
当の師匠は開幕早々に殊技を使う事が有るのだが、師匠は仕方ない。だったて魔法音痴だから、魔法使われたら厄介だもんな
「15分経過か……そろそろ、決めるぞ」
いつの間にやら15分が経過していたようだ。まだ15分……
粘る私だが、相手が遂に殊技を使って来た。終わらせるつもりらしい。
「……⁉︎」
急に私の体の動きが停まった。そして出していた魔法も搔き消える。直ぐに体は動く様になったが、戦場では一瞬が命取りになる。その一瞬の隙にハイドは懐に入り込んでいた。容赦なく斬りかかって来るハイドの剣先を寸前で避け、後ろに回転しながら後退する。
後退し終わり、態勢を立て直した私の体が、また一瞬止まる。そして、また距離を詰められ斬られそうになる。私はそれを、ほぼ反射で避けて、体の柔軟性を生かし多少無理な態勢から相手に攻撃したが、また停められて私の攻撃はハイドに届かなかった。体が動く様になると同時に相手の剣先が私の首を狙って来たので、慌てて変な態勢のまま自身の影にダイブ! 相手の影から飛び出して攻撃を仕掛けようとしたが、イモり後ろに退散。
ちょっと待ってくれ! 3分間だけで良い!
「ふぅ……」
上がる息を整えながら、相手の殊技について考える。体が一瞬停まるなんて酷い殊技だ。しかも魔法も消えてなかったか? これ師匠の殊技と同じタイプだろうか?
『ハイドの殊技は【目で見た相手の次の動作を無効化】だ。殊技封じ、魔法封じ、相手の動きを一瞬止める等、多種多用な能力だ。気を付けろ』
「……師匠、それもっと早く教えて欲しかったです」
スピーカーから師匠の声が聞こえて来た。
「師匠か……リンドヴァル、いつの間に弟子を作ったんだ?」
ハイドは私から目を離す事なく師匠に問う。それに師匠は
『最近だ』
っと答えていた。
目で見た相手の次の動作を無効化って……かなりマズくないか? 師匠の話によれば殊技も無効化される様だし……万事休すだな。久遠より厄介だ。下手したら師匠よりも
師匠は殊技殺しにより、ハイドの殊技を封じられるので肉弾戦に持ち込める。だから師匠がNo.2でハイドがNo.3なのだろう。だったらNo.1はどれだけ強いのだろうか?
「見た所、お前の殊技は影か……此処は影が少ないから、やり辛かろう。難儀な能力だな」
「本当にな! あんたらの殊技が羨ましいよ!」
私は懐に隠し持っていた銃を取り出して、相手に向ける。そこでハッと思い付いた。何故、今のタイミングで思い付いたのか分からないが、兎に角、良い事を思い付いたのだ!
「影が無いなら作れば良いんじゃない!」 (マ○ーアン○ワネット風に)
私は何の為に取り出したのか銃を捨てて、影から大きな黒い布を取り出す。そして、闘牛士の如く黒い布を振り回した。
「何の真似だ?」
相手が怪訝そうな顔を向けて来たが私は気にしない。闘牛士の様に布を振り回し、相手を煽る。そういえば、闘牛は赤い色に反応している訳ではないらしい。牛の目には色を殆ど識別できないので色は関係ない。動くモノに危険を感じて襲っているのだとか……
話が逸れた。私はその布で自身を隠しながら相手の視線を遮り、私の体が停まらない様に細工。そして影からチマチマと狼を出してハイドにダイレクトアタック!!
私の読み通り視界に私が入らなければ、相手の殊技ほ不発に終わる様だ。ハイドの顔は徐々に険しい顔になって来た。しかし流石イケメン。険しい顔もイケている。悔しいな!
私は自分から攻める事をしなくなった。これぞ、まさに芋プレイ! 後で師匠に怒られそうな気もするが、勝てば良いんだよ、勝てば!
布を振り回して戦う私はまるで踊り子の様! すみません、調子乗りました! だから師匠、そんな顔しないでほしい
「チッ!」
段々と相手の舌打ちが多くなって来た。ハイドは相当イラついてるもよう。ちょっと怖くなって来たが、頑張って逃げないとコイツ容赦なく攻撃して来るから怖くて……首とか狙って来るし、完璧に殺す気だ
『両者共、時間だ。剣を納めろ』
おぉ! 終わった! 終わりました! 試合終了!
「随分、セコイ手を使うな」
「いや〜。アンタの殊技の方が十分セコイよ。それに、もっと影が有れば普通に戦っても勝ててたし! 夜なら楽勝だったし! ずっと俺のターンだったし!」
言い訳と負け惜しみのオンパレード。大変見苦しい




