初めての〇〇
花弦といえど所詮は【アナズィトン】。【ドクトゥス】である師匠の比ではない。師匠と本気の組手をして来た私には相手の動きがまるで止まっている様に見える!
「ぐっ⁉︎」
相手の遅い攻撃を避け、華麗な回し蹴りを相手の脇腹に入れる。相手は面白いくらいに吹っ飛んだ。それを兄は呆然と眺めていた。口が開き面白い顔をしている
「終わりです?」
「……まだだ」
挑発してみると、見事に乗ってくれた。立ち上がり斬りかかって来る前に、相手の背後に回りこむ。そして、膝を脇腹に叩き込んだ。
「ぐっは……」
花弦の人は倒れて起き上がらなくなった。まだ、私は結構余力があるのだが……私は、もしかして強いのか?
「【ドクトゥス】取れるんじゃね?」
自画自賛だが、アナズィトンである人をこれだけ簡単に熨す事が出来るのだから、ドクトゥスも夢ではないのでは?
しかし、私の呟きは誰にも拾われる事はなかった……誰か肯定なり否定なりしてくれよー
「我々が何も対策せずにお前に挑んだと思うか!!」
少し離れた所でボロボロになった花弦No.28が師匠に向けて叫んだ。その直後、私と師匠に何らかの衝撃が来て息が詰まり動きが止まる。苦しい!
しかし、衝撃が来たのは私と師匠だけではなかった。花弦の人達もだ。他は問題なさそうな所を見ると殊技が使える者にだけ来る衝撃なのかもしれない。そんなの有りかよ……
「悪いなお姫様!!」
一瞬、私と師匠が動けなくなった隙に、動けた者がコルネリア様目掛けて走った。慌てて止めようと動いたが、剣が振り下ろされる方が速い。そう判断して……
「……」
私は懐に隠しておいた銃で相手の頭部を撃ち抜いて殺した……
咄嗟だった。咄嗟過ぎて思わず急所を狙ってしまい殺めてしまった。人を殺めた事などない私は当然、狼狽する。しかし、それは一瞬で次の瞬間には頭を切り替えねばならなくなった
「きゃぁぁああああっ!!」
先程の攻撃に驚いたコルネリア様はバランスを崩して後ろに倒れる。その後ろは崖だった。何でそんな所に崖が⁉︎
コルネリア様は後ろの崖から真っ逆様に落ちてしまう。まさかの展開に焦る私。慌てて手を伸ばしたが遅く、コルネリア様は下に落ちて行く。
「チッ!」
「うわぁぁああああっ!!!!」
私は舌打ちをしてから近くに居た兄を引っ掴み、共に崖から飛び降りる。兄の悲鳴が五月蝿いが気にしない。
兄と飛び降りたのは訳がある。先に落ちてしまったコルネリア様に追いつくのには自由落下のスピードを上げる必要があるので、私単体の体重ではスピードが上がらず追いつけないと判断して兄を道連れに飛び降りたのだ
「捕まえた」
「佳月!!」
目論見通り追いつく事に成功した。なので不要な兄はポイして着地に備える。しかし、遥か上空から落ちた時はどう着地したら助かるのだろう? こう、重力の魔法使う? 風系魔法を使う? 頭が真っ白になり、どうすれは良いのか分からない。しかも、下は川だ。所々にモンスターも見える
「……来る」
仕方ないので風系魔法の魔法を使い、衝撃を緩和する。そして、コルネリア様を抱え、背中から川にダイブ!! 物凄い衝撃が背中を襲い、息が詰まる。背中が痛い……
「ぷはっ!」
しかし、ジッとは出来ない。落ちた先にはモンスターが居た筈だ。早く岸に上がらねば!
私は白目を剥き意識の無い兄と震えるコルネリア様を連れて急いで岸まで上がる
「大丈夫ですか?」
「あぁ……すまない」
岸に上がり安全な場所に行くと、未だに震えるコルネリア様に毛布をかけてあげる。そして背中を摩り落ち着くのを待つ。その間、兄は放置だ。
「ありがとう。おかげで助かった」
コルネリア様からお礼を言われたが、今回の件は咄嗟に動けなかった私が悪い。
「いえ、私も動けず、すみませんでした」
素直に謝るがコルネリア様は手を振り、問題無いと言う。
「それより、お前の兄はどうする? というか生きてるのか?」
コルネリア様は道連れにした兄を指差して言う
「……ショック死してたりして」
兄の元に赴き、脈を測ったが正常だった。死んでは無いらしい。しかし白目を剥いて、面白い顔をして気絶している。
爆笑ものだ。写メっておこう。そして、拡散してやろう
さて、兄が倒れています。どうしますか?
① 放置する
② 恥ずかしい縛り方をして吊るしあげる
③ さっきのモンスターの餌にする
どうする私!




