迷いの森へ
それから1カ月が経過する。その間に街に出て宿を取ったり買い物したり、森で野宿したり、モンスターと遭遇してみたり、師匠と組手してみたり、見下されたので説得(物理)してみたりした。
この1カ月で大分信頼関係が築けてきたのか、師匠は野宿等でも見張りを私に任せて眠る様になった。しかし、眠りは凄く浅い
「ビクトリィィイイイ!!」
「うるさい」
最近では師匠からの夜襲も、受ける前に起きられる様になってきた。まぁ、流石に身の危険を感じて起きられる様になった様だ。だって、最近、剣の柄で叩くのではなく、鞘で殴ってくる様になったんだもの……痛いでは済まされない。悶絶必須だ
1カ月も一緒に居れば、この2人がどんな性格か分かってくる。まずコルネリア様は世間知らずのお姫様で尚且つ、1人では大抵出来ないが、王族らしく教養があり、また頭の回転も早く、勤勉。そして何より、優しい心の持ち主で、少女とは思えない気遣いや気配りが出来る良い子である。
対して、師匠は闇の宝具の影響なのか元からなのか、割と残酷である。平気で拷問もするし、命乞いをされても無表情で斬り捨てる。敵とみなしたものは容赦なく斬り捨てる。血も涙もない男である。但しイケメンなので何でも許される
しかし、そんな常に無表情の師匠も笑う時がある。それは……
「師匠……楽しいですか?」
「いや」
敵を殺す瞬間である
ほぼ無表情の師匠が唯一笑う瞬間である。冷笑だが……
ただ今、マルパズスという大型の地龍と交戦していた。マルパズスは大きな巨大に鋭い牙、強靭な顎がある羽の無いドラゴンである。見た目はティーレックスの色違いだ。
鱗が硬く頑丈な為、結構苦労したが何とか仕留めた。それを仕留めたのが師匠だったのだが、仕留める瞬間に冷笑を浮かべていた。敵を殺す時に喜びを感じるって、なかなかハードな性格だと思う。慣れたけど
「牙が売れる。抜くぞ」
「はーい、師匠。でも、売る時は師匠が売って下さいね。私が売ると盗品扱いされるんで。あ、後、写メって良いですか? 兄に送りつけるんで」
こんな感じで旅を続けております。当面の目標はコルネリア様のお姉様【ソフィア】様と合流する事である
「多いですね」
「やはり、此処を超えると国境付近なので警戒が強いか……」
私達は今、国境付近の茂みで兵達の動きを監視して隙あらば、国外逃亡出来る瞬間を狙っている。しかし、あっちもこっちも兵が多く、とてもじゃないが突破できそうにない。
「こうなれば、やはり迷いの森か……」
私達は後ろを振り返り迷いの森とやらを見る。迷いの森は、その名の通り迷う森である。危険モンスターも多く生息しており、とっても危険なのだ。普通の人はまず通らない究極の森。
しかし、迷いの森を上手く抜ける事が出来れば、国外に出られる。賭けである
「リンドヴァルも佳月も居る。何も怖がる事はないだろう」
コルネリア様は自分に言い聞かせる様に言う。そんなに無理しなくても別の道を……っと言いたい所だが、それしか道がないのだ。こんな小さな少女に怖い思いをさせるのは忍びないが耐えてもらうしかあるまい。
そもそも、実の兄に追われて居る時点で怖い思いをしているか……っと思い直す
「では、行くぞ」
私達は迷いの森へと足を踏み入れた。森の中は薄暗く、変な鳴き声が色々な場所から聞こえてくる。正直、とっても怖い。何か得体の知れないモノが出て来そうで……
「おおっと⁉︎」
言った側から前方の木の影に、気持ち悪い生き物が居た。木からコチラを伺い様子を見ている様だ。異様にデカイ頭、細い胴体、足は短く、手は地面に引きずるぐらい長い二足歩行の生き物だった。控えめに言って気持ち悪い
「ひぃ⁉︎」
コルネリア様は悲鳴を上げて師匠の後ろに隠れてしまった。私も隠れたい……
「あれ、どうします? 襲って来ないし置いておきますか?」
師匠に問うと
「殺せ。後で襲われてもかなわん」
大体、予想はしていたが……相変わらず、容赦ない性格だな……
「了解しました。んじゃ、片してきまーす」
師匠はコルネリア様の側を離れられないだろうから私が倒しに行く。近づけば近づくほど気持ち悪いな……
『◎△$♪×¥●&%#?!』
何かを叫びながら、突っ込んで来た気持ち悪い生き物。走り方も気持ち悪い……
私は思わず真っ二つに叩き斬ってしまった。
「行きましょう師匠」
私が振り返りると、急に背後から気配がした。私はほぼ反射で飛び退いたが、少し遅く左手に何かが掠り、血が出た
「……っ。マジか。斬った箇所から分裂して復活って……無性生殖かよ……」
2匹になって復活した気持ち悪い生き物。これ、どうやって倒すの?




