7話 外出準備
僕は今、冥界の女王の居るボス部屋に来ていた。
ダンジョンを強化してから、冒険者どころか野生のモンスターも侵入してこなかった。だから暇な時は冥界の女王の所に行って雑談をしていたのだ。毎日入り浸っていたから、彼女は基本的に無表情なのだが、微妙な表情の変化で感情が分かるようになったぐらいだ。
しかし、何日もたてば話題も無くなってくる訳で、再び暇になってきたのだ。
「と、言う訳でダンジョンの外に出てみようと思うんだけど。」
「私も行くわ、マスターだけじゃ心配だもの。それに...」
それに?まあ、本人が言わないんだ。無理に聞くことも無いだろう。
ちなみに、行先はある程度決まっている。
ちょっと前に冒険者が来ただろ?人がくるってことは、少なくともそう遠くない場所に町、最低でも村ぐらいはあるはずなんだよね。だって、もし僕のダンジョンが在る場所が前人未踏の辺境だったら、あの冒険者達が来たこと自体おかしくなるからね。
だからその人間が居る場所に行こうとおもう。そこで適度にダンジョンの宣伝をしてこようと言う訳だ。
「人里に行くにあたって、名前を付けようと思う。」
「分かったわ、でも私でいいの?」
そうだった、モンスターにとっての名前は、人間に比べて特別な意味がある。特にダンジョンのモンスターには。
モンスターは、名前を持つことでワンランク上の力を持つことが出来る。しかし、ダンジョンマスターは眷属のモンスターの内1体にしか名前を付けることが出来ない。だから、ダンジョンマスターがモンスターに名前を付けるという事は、そのモンスターを自分のパートナーにするという事になる。
だからこそ、僕は冥界の女王に名前を付けようと思う。
単純な戦闘能力だけでなく、この数日間の付き合いで分かった彼女の人格を含めて、彼女となら今後も楽しくやっていけると思ったからだ。
「おまえじゃなきゃ駄目なんだ。逆に聞こう冥界の女王、おまえに僕のパートナーとして共に戦っていく覚悟はあるか?」
「あるに決まっテいるわ。私はこのダンジョン、そしてマスターをどんナ脅威からも絶対に守り抜くと誓う。」
「覚悟は分かった。それじゃあ、今日からおまえの名前はアイリスだ。」
「アイリス...いい響き。マスターからもらった名前、大切にする。」
名前をもらったアイリスは嬉しそうにしていて、微かに頬が赤くなっていた気がした。まあ、気のせいかもしれないが。
それじゃあ、名付けも終わり名実ともにアイリスは僕のパートナーになったわけだ。
「これからもよろしくな、アイリス。」
「はい、マスター」
アイリスは、普段見せない様な笑顔で答えてくれた。