22話 街、再び
何故か上機嫌なアイリスと共に街まで来たわけだが、襲撃のせいか警戒態勢に入っていた。
以前と違って防壁の上には一定間隔で兵士が配置され、門に配備されている兵士も増えている。これじゃあ前回みたいに防壁を飛び越えて入ったら一瞬でバレるよな...
大人しく順番を待って門から正式に入るべきかな?とりあえずアイリスにも意見を聞いてみるか。
「どうやって入ったらいいと思う?」
「ここにいる人間を殺せばいいのでは?私なら可能です。」
「いや、それはやめておこうか。めんどくさい事になりそうだ。」
「そうですか...」
ダメだ...アイリスの考え方は強者故の〝全部殺せばいいじゃん〝系の考え方で、は頭を使うことに関しては当てになりそうにない。
はぁ...大人しく並ぶか...
並び始めてしばらくすると、チャラチャラした男が下賤な笑みを浮かべながら話しかけてくる。もっとも、僕にじゃなくアイリスにだが。
「キミ、ちょっと俺らと遊ばない?そんな冴えない奴といるよりいい思いさせてやるぜ?」
それを聞いてアイリスが露骨に不機嫌になる。そりゃあこんな下心丸出しの奴に話しかけられたら不機嫌にもなるだろう。
こいつも馬鹿だね...アイリスの見た目に騙されてナンパしに来たんだろうか、アイリスはこう見えてもアンデッドだ。
アンデッドとは生者とは絶対に相いれない生者の敵とも言うべき存在だ、ナンパなんて成功するはずがない。
(マスター、こいつ等殺していいですか?)
うん、やっぱりこうなるよね。
(いいけど、僕等が殺ったとバレないようにやってくれよ?)
(分かりました。)
しかし流石に何も知らない馬鹿を見殺しにするのも可哀そうだし、警告だけはしておくか。
「警告しておくぞ、死にたくなかったら今すぐ帰れ。」
「あ?お前とは話してねーんだよ、黙ってろ。」
それを聞いてアイリスが男を睨みつける。あーあ、僕知ーらね。まあ、一応警告はしたしね、聞かなかった方が悪いよね。
「そんな怖い顔してどうしたんだいお嬢ちゃん?可愛い顔が...」
「お前に言われても、嬉しくない」
アイリスが男の言葉にかぶせるように呟くと、次の瞬間、男が大量の血を吐いて、糸が切れた人形の様に崩れ落ちる。
大人しく警告を聞いておけばいいものを...本当に馬鹿な奴だ。
それを見て周りに動揺が走り、兵士が駆けつけてくる。実際僕もビックリした。
兵士は男が息をしていないのを確認すると、僕達を訝し気に見てくる。そりゃまあ、この状況なら僕達が一番怪しいよね。
ここは僕の話術で見事に回避して見せようじゃないか。