第五話
容姿端麗、身長170cmぐらいあり、スタイルも抜群の姉弟子にじっと見つめられると小さい頃から、見慣れれている俺ですら、心臓がドキドキしてしまう。
でも、この人、全然、将棋のことしか考えていない人だから。
「そうですね。居飛車ではなく、そろそろ、振り飛車も指していくべきか。どうも、居飛車一辺倒だと相手に研究されやすくなるような気がして。」
俺は、今日の将棋を頭の中で、振り返りながら姉弟子にこたえる。
将棋の戦法には、大きくわけて、2つある。
飛車を固定して戦う居飛車と飛車を振って戦う振り飛車である。
つい最近まで、多くの棋士が、居飛車を採用していたが、研究が進み、振り飛車でも、十分戦えると判断され、振り飛車を採用する棋士が多くなっている。
簡単に言えば、居飛車を使うのが、ノーマル的な戦法、振り飛車を使うのが、マニアックな戦法というべきか。
ちなみに、俺は、バリバリの居飛車党であり、しっかりと玉を固めて戦う戦法を使うのが、得意である。
師匠も、居飛車が多いし、将棋を早く上達するには、まず、居飛車、振り飛車どちらかの戦法を得意にした方がいい。
だが、相手は、プロ棋士である。
相手の研究をしっかりとされているのが、前提だ。
そんな相手に、いつまでも同じ、戦法が通用するわけがない。
「居飛車だけでなく、振り飛車も研究することにより、どんな局面でも、対応できるようになる気がするです。姉弟子は、どう思いますか。」
俺の勝率五割の理由は、これだとばかり、姉弟子にこたえる。
「零点。」
「えっ・・・・。」
「何も、分かっていないわ、竜一。もう一度、奨励会をやり直した方がいいわ。」
このアマ。
もう一度、あの地獄を味わえというのか。
「今日の将棋は、あんたの才能があったのと、師匠が既に、将棋のピークを過ぎていたから勝てただけ。恐らく、今の状態で、奨励会の有段者と戦ったら、あんたは、必ず負ける。」
「!っ」
「本当に強くなりたいなら、別の答えを探すといいわ。」
「・・・・・、ちょっと、姉弟子、俺に何が欠けているのかわかっているなら、教えてくださいよ。姉弟子なら、分かっているんでしょ。」
「言ってわかるなら、もう教えているわ。」
そう、姉弟子は、言うと、さびしそうに笑い、俺の前から立ち去った。
何だよ。
俺に欠けている物って。