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第十三話

「いや、まさか、中学生プロ棋士、馬頭竜一君と会うとな。」


男は、そういうと、どかっと黒塗りのふわふわのソファに腰を下ろし、ニヤニヤしながら俺を見つめてくる。


(歩きすぎて、げっそりとしている俺を、興味深々にのようだ。)


男の名前は、斉藤というらしい。


あれからいきなり男は、自分を斉藤と名乗り、ヤクザ風の彼は、俺を連行するかのように近く風俗店に誘い入れた。


まだ、俺は、高校生なんですけど。


それに、金は持ってないし。


と必死に、風俗店に入るのを抵抗する俺を無視しながら。


本当に、やばい。


俺は、これからどうなるのでしょう?


なんとかして、この場所から早く逃げ出さなければ。


でも、どうやって。


神様、教えてくれ。


斉藤は、そんな俺の気持ちがほとんどわからないのか、もう風俗の相手をするらしい女性をオーダー表で選び始めた。


「この女は、前に会ったから、パスと。こっちの女を今日は潰すかな。」


なにを言っているんだこの人は。


「馬頭さん、あんた、最近、将棋の方は、調子が悪いんだって。」


「順位戦では、勝ち越しているが、後の棋戦では、軒並み1回戦か、2回戦負け。将棋の内容でも、伸びがないし、キレもない。いつも、自分が得意とする戦法を使用している。一人の将棋ファンとして、ちょっとガッカリだぜ。」


といきなり将棋の話をし始めた。


「プロの将棋界とは、周りの奴らは、一部の才能のある奴が楽しみ、勝つことができるゲームと思っているが、俺は、そうは、思わない。将棋とは、人生と同じ。努力して、努力して苦労した奴こそが、生き残れる世界。そうは、思わないかい?」


「・・・・・。」


「今のあんたは、もがき苦しんでいるのは、よくわかる。そして、勝負に勝つ時の何かのキッカケが欲しいのもな。」


「だから、人生の先輩として、今から面白いゲームを教えてやるよ。」


「ゲームですか?」


「そうだよ。恋愛シュミレーションゲーム。それも、ただのパソコンや、インターネットのやり取りだけでない実物の女性を相手にした本物の恋愛ゲーム。」


なんのことか、さっぱりわからない。


恋愛シュミレーションゲームとは、俺の知識では、仮想空間で、好みの女性と会い、物を貢いだり、女性と食事したりして、好感度を上げることにより、親しくなるというゲームだ。


斉藤によると、それを実物の女性、風俗嬢と行い、彼女とセックスまで、持っていければ成功だという。


それと、将棋に勝つことと何の関係が?


「まあ、このゲームをやるかやらないかは、あんたの自由さ。実際、風俗嬢と仲良くなり、セックスまで、持っていくのは、かなり難しい。風俗嬢は、金で、男と寝るだけで、心まで許すことは、ほとんどないからな。正直いうと、そこら辺の女性を捕まえて、仲良くなる方がよっぽど簡単だよ。」


「だが、風俗といえど、この業界のプロ。プロ相手の心のうちを研究し、そして、攻略する。将棋とよく似ていると思わないか。」


「!」


「最近は、AI(人工知能)が発達して、将棋の世界も、将棋ソフトと研究している方が、将棋に勝てると思っている奴が多くなっている。だが、将棋を指すのは、ロボットなんかじゃない。人間同士が指す。心の駆け引きが、必ず生まれるのさ。」


斉藤は、そういうと、オーダー表から、一枚の写真を取り出し、机の上に置いた。


「あんたには、この女を落としてもらいたい。」


名前は、「しおり」と書いてあり、切れ目のなかなかの美人さんである。


「この女を落とす期限は、特になし。あんたが、ギブアップした時点で、このゲームは、終了する。どうだい?、やってみる価値はあると思うけどな。」


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