第十話
9月。
まだ、残暑がかなり残り、道路を歩く人は、日笠を持ったり、帽子をかぶったりと暑さ対策を行っている。
大阪の日中の温度は、36度。
ほとんど、真夏と同じぐらいである。
そんな猛暑が続く大阪駅から、3駅ほどはなれた駅の近くにある高校に、俺、馬頭竜一は、通っている。
高校の名は、中央高校。
世間的には、偏差値が悪いわけでもなく、良いわけでもないいわゆる中堅クラスの高校である。
そして、一流の進学校ではないためかどうかわからないが、俺が、プロ棋士であることを知っている奴は、ほとんどいない。
普通の高校生が、将棋なんか興味があるわけもないわな。
しかし、それでも、ヤフーのサイトには、一応、戦後6人目の将棋の中学プロと顔写真と名前が載っただから、もう少し話題になってもいいだろがと心の中では、思っている。
プロになった時期が悪かったのか。
冬期オリンピックと重なっていたからな。
とは、思いつつも、一番の原因といえば、将棋の中学生プロである俺が、その後、活躍していないことが原因なのかもしれない。
今のところ、順位戦のみ、5勝2敗と好調であり(C級2組だが)、他の棋戦は、軒並み、予選1回戦か、2回戦で負けている。
唯一俺が、タイトル戦で、勝ち進んでいるのが、叡王戦であり、後、2回勝てば、予選トーナメントと抜け出し、決勝トーナメントに進める。
まあ、恐らく、今回もタイトルを獲得するのは、史上最強と言われている名人か、他のタイトルホルダーあたりで、俺には、関係がないとおもうが。
「では、今日は、ユスリカの染色体の観察を行いたいと思います。」
白衣を着た学校の先生が、教壇で、生物の実験を行っている。
ユスリカの幼虫の首のあたりをピンセットで、ちぎり、赤い染色液を付けて観察するのが今日の授業らしい。




